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家庭での子どもの事故予防

日本メディカルケアー 吉國 晋 医師
「家庭での子どもの事故予防について教えてください」

子どもの病気の予防は難しい一方、子どもの事故は予防可能です。今回は子どもの事故の現状と家庭での予防法についてご説明します。

〈大人と比べた乳幼児の体の特徴 〉

① 体の表面積や臓器が小さいので、出血ややけどによる全身への影響が大きい。
② 胴体に比べて頭が大きく、バランス感覚が悪いので転びやすい。
③ 嚥下力や体温調節などの身体機能が未熟。
④ 理解力や行動が大人とは異なり、危険なものを触ったり口にしたりする。

 日本での年齢別の死因統計によると、1 ~ 9歳では「不慮の事故」が1位であり、「不慮の事故死」のうち、0歳では「窒息」が約3/4と最も多い一方、1~4歳では、交通事故、転倒・転落、溺水が全体の約70%を占めます。乳児は寝返りなどで身体を動かすことができないため、布団やクッションなどの柔らかいもので口がふさがれたり、ひもが首に絡んで締め付けられると呼吸ができずに窒息しやすくなります。逆に1歳以降では立ったり歩いたりするため、交通事故、転落・転倒、溺水など窒息以外の原因による事故が増えます。転落防止のためには、
30cm以上の高さのソファーやイスなどに乳幼児を1人で乗せないか、もし乗せる場合は絶対に目を離さないようにしましょう。
 乳幼児は何でも口に入れてしまう傾向があります。ピンポン玉の大きさ(直径<3.9cm)のものは口に入るため、窒息を引き起こす恐れがあります。また、タバコやコイン、ピーナッツ、ボタン電池などは誤飲・誤嚥事故につながるため特に注意し、普段から子供の手の届くところ(床から1m以下の高さ)には置かないようにしましょう。

 幼児がタバコを1本全部食べるとニコチン中毒による死亡の恐れがあります。食べたタバコの長さが2cm以内なら吐かせた後で最低2時間は様子を見て胸焼け、嘔吐、めまい、頭痛などの中毒症状が出なければ大丈夫です。ただし吸殻の入った水を飲んでしまった時は水に溶出したニコチンによる中毒の危険があるため、受診したほうが良いです。誤飲予防のためにも子供のいる家の中ではタバコを吸わないようにしましょう。タバコの煙は乳幼児突然死症候群や喘息の原因にもなります。

〈 家庭内の確認すべき危険箇所 〉

子どもを不慮の事故やケガから守るために、子どもにとって危険な所が家の中にないか普段からチェックしておきましょう。

ベッド
○ 転落防止のためベビーベッドの柵は常に上げておく。首や足が柵の間にはまらないようにする。
○ ベッド内には窒息の原因となる柔らかい寝具、ぬいぐるみ、ひもやビニール袋を置かない。熱さまシートは乳児の口や鼻をふさぐ恐れがあるため使わない。
○ 乳幼児突然死症候群の予防のため、寝返りができるまではうつぶせ寝は避ける。

台所
○ ポットや炊飯器、洗剤などは子どもの手が届かないよう1m以上の高さの台に置く。
○ 包丁などは引出しにしまい、引出しをロックする。
○ やけどの危険があるため、子どもを抱いたまま調理をしない。
○ テーブルクロスは、引っ張るとテーブル上の食器が倒れて落ちる危険があるため使わない。

浴室
○ 床からの高さが50㎝以下の浴槽は、転落の危険があり要注意。
○ 浴槽に残し湯をしない。(深さ10㎝の水でも溺水の恐れがある)
○ やけど防止のため、シャワーや蛇口に触れないようにカランガードをつける。
○ 浴室のドアは子どもが入らないよう、閉めておく。

ベランダ
○ ベランダの柵は高さ110cm以上、すきまは11cm以下にする。防護網や板を柵に貼り付けて、物の落下事故を防ぐ。
○ ひとりで出られないよう、子どもの手の届かない窓の部分にサッシストッパーや鍵をつける。
○ エアコンの室外機など、踏み台になるようなものをベランダの柵や窓付近に置かない。

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