「バイリンガル教育」と聞くと「英語教育」とほぼ同義に思われがちですが、海外在住のお子さんにとっては、むしろ「日本語の学習」が大きな課題となる場合が少なくありません。
Springでは、シンガポールで国語を指導されている専門家の方々に貴重なアドバイスをいただきました。今回は幼児期の取り組みについてまとめました。
日本語を母語として身につけるために、幼児期から家庭で取り組めることは?
No.1 毎日、絵本の読み聞かせを
●なるべく手の届くところに、いつも絵本がある環境を作りましょう。
●海外育ちのお子さんは「言葉を知らなくて当たり前」です。クイズをしたり、内容を振り返る習慣をつけて理解を助けましょう。
●好きな本なら、同じ本を何度せがまれても繰り返し読んであげましょう。
●映像を見る時間はなるべく減らしましょう。
●お話を聞いてイメージできるようになると、絵本から本への移行がスムーズになります。
◆絵本おすすめアドバイス Happy Train 川守田先生
理想的には1日5冊の絵本を、2冊はお子さんが自分で選び、残り3冊は保護者の方が、できるだけ毎日異なるジャンルの本を選び、読んであげてください。
おすすめのジャンル |
①自然界について学べる絵本(植物、動物、宇宙など) ②生活について学べる絵本(乗り物、道具、職業など) ③日本の行事、文化、伝統に接する絵本 ④日本の昔話、世界の昔話 ⑤ファンタジーの世界の絵本 |
1日5冊でも月に150冊、年間1,825冊、6年間に1万冊以上になります。小学校入学までにたくさんの本を読んでもらった子どもは国語力に優れ、知識も豊富な子どもに育ちます。字が読めるようになっても、できれば10歳までは読み聞かせを続けてあげてください。
No.2 「家では日本語」ルールを
●小さい頃から「家では日本語で話す」というルールを根気強く徹底しましょう。小4以上になると修正するのが難しくなります。
●「なぜ日本語を学んでいるか」「なぜ家では日本語で話さないといけないのか」を親子で話して、お子さん自身も目的を理解した上で家族で取り組みましょう。
●まずはご両親がきちんとした日本語を話すことと、親が先回りして言葉を補わないこと。必ず「主語・修飾語・述語」のフルセンテンスで話すように促しましょう。
●子どもが一生懸命に日本語で話したら、努力を褒めてあげましょう。
●英語が出てきたら、「日本語では何て言うのかな?」「日本語で教えてくれる?」と聞いて、2言語をつなげてあげましょう。
No.3 たくさん聞いて話せる環境づくり
◆数年後に帰国なら日系幼稚園へ ひまわり幼稚園 吉弘先生
家庭の会話だけでは年齢に応じた日本語の語彙の習得はできません。就学時期までに自然に習得する語彙は、将来の学びにとって大変重要です。日系幼稚園がある国で生活をされる場合、特に数年後に帰国する予定であればなおのこと、言葉の土台が作られるこの時期は日系幼稚園へ通うことをおすすめします。
◆日本語でおしゃべりするお友だちを Arts Haus International幼稚園 石栗先生
子どもは耳で聞いて、真似て、話してみることで言葉が身についていきます。毎日のコミュニケーションの中で、たくさん聞いて話せる環境がとても大切だと考えます。英語環境にいるのならば家庭では日本語で会話し、家族以外でも一緒に日本語でおしゃべりする日本人の友だちができる環境を作ってあげましょう。
◆普段の環境が 重要な学びの場 Arts Kidz International幼稚園 みき先生
幼児期は日本語をたくさん耳にする環境や、周囲との会話など、普段の環境が重要な学びにつながります。家庭では歌あそびやしりとりなどを日常的に取り入れ、文字に興味が出たら絵日記や交換日記なども楽しく取り組みましょう。絵本は年齢によって、2歳までは耳で聞いて絵で見て楽しい絵本、3~4歳までは主人公の気持ちになって感受性を育む絵本、5~6歳児は物語や少し道徳的な内容の絵本をおすすめします。
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必見!
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