日本人会クリニック 臨床心理士
シンガポール日本人学校小学部チャンギ校スクールカウンセラー
坂牧 円春 先生

　日本で子育てをしていても、時には戸惑ったりしんどくなったりするものですが、特に海外で幼い子どもを育てていると、日本とは違う生活環境ならではのストレスもあります。そんなお母さんへのアドバイスをお聞きしました。

海外の子育ては、ストレスも多くなりがち

SNSなどで垣間見える他のお母さんのキラキラとした楽しい写真やコメントを見て、「他の人はみんな楽しんで子育てをしているのに、どうして私はこんなにモヤモヤするんだろう、イライラしちゃうんだろう」と自己嫌悪に陥るお母さんもいらっしゃると思います。ただでさえ大変な子育てに、海外での駐在生活ならではのストレス要因も加わります。

●気軽に育児を手伝ってもら える親が近くにいない
●夫が出張で不在がち

●育児に関する情報が インターネット上に溢れていて、何を信じれば良いかわからない
●狭い日本人コミュニティで本音で話せる友人がいない
●発達の遅れや育てにくさなどがあっても、周囲に相談できず一人で背負いこんでしまう
●地域に気軽に行ける児童館や遊び場がなく、常に家にこもっている

●自分の仕事を辞めたり、キャリアを中断してしまっている
●自分の収入がなく、経済的な自由や気ままさがない

そんな中で、ついこのような言動が出てしまうことはありませんか。

●子どもにきついことを言ってしまう
●思わず怒鳴ってしまう
●子どもが話しかけてきても、無視してしまう
●手をあげてしまう
●子どもの前でも、夫と喧嘩してしまう

いろいろなストレス要因が重なると、どんなに健康的な人でも、イライラしたりしんどさを感じたり、孤独感や閉塞感を感じたりするものです。そのような苦しい感覚を一人で抱え続けていると、身近にいる子どもに対して感情的に怒ったり、思わず手をあげたりすることもあるかもしれません。

最近は「良い」教育、「良い」育児、「良い」子ども、「良い」親でなければならないという風潮も強く、特にシンガポールではそのようなプレッシャーを感じている方も多いかもしれません。一般に子育ての理想やイメージを掲げがちですが、その理想のイメージから外れてはいけないと焦ったり、罪悪感を強く感じて自分を追い詰めてしまうと、ただ苦しくなって子どもと穏やかに付き合うことも難しくなります。

そんな時には、思い出してほしいと思います。

●子育てって、常に“楽しい”わけじゃない
●悩んじゃいけないわけじゃない
●常に笑顔でいられるわけじゃない
●子どもが言うことを聞かず、イライラすることだってある
●子どもの行動に途方に暮れたり、感情的に怒ってしまうこともある

子どもの成長や自分の子どもへの関わり方について振り返ったり考えたり悩むことで、親自身も成長していきます。ただし一人で考えることで、ネガティブ思考のサイクルにはまりそうなら、安心して相談できる相手や専門家と一緒に考える方が良いでしょう。また、母子だけで過ごす時間に行き詰まったら、一時預かりサービスなどを利用して、一人で出かけたり、子どもと一緒に子育てイベントや親子の会、子育てサークルなどに行ってみるのも良いでしょう。

以下のようなサポートサービスを利用してみませんか？

●やさしい子育てクラス （phone+65-6469-6488）
日本人会クリニック主催　（月に1回、非会員でも参加可能）
子どもの心の発達や関わり方について学ぶクラス　
※次回の思春期編2019年5月24日（金）、幼児編6月21日（金）
　詳しくはクリニックウェブサイトへ
●KiZroo & MaMaroo （phone+65-6736-1636）
お預かりサービス、親子のふれあい、学び、子育てクラスなど
●ぽこ・あ・ぽこの会 （mailpocoapoco88sin@yahoo.co.jp）
障がいを持ったお子さん、発達に不安のあるお子さんのお母さまのためのサポートサークル
●子育て相談・発達相談
日本人会クリニックやラッフルズジャパニーズクリニックなど日系クリニック
●子育てサポートの活用
子ども一時保育サービス・ベビーシッターを利用
2歳児クラスから幼稚園に入園する選択肢など
●キャリアカウンセリングなどに相談

過去の『笑顔になれるコラム』もぜひご覧ください。
各先生の貴重なアドバイスを詳細にご紹介しています。
https://spring-js.com/expert/expert02/smile/