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「日本人にとってアートとは」金子泰子さん / Ota Fine Arts ディレクター

~アートとの出会い~

草間彌生氏や新進気鋭のアーティストを紹介する、現代美術ギャラリー主宰の金子さんが語るアートとは

日本人にとってアートは遠い存在か

仕事柄、欧米の美術館に赴く機会がありますが、その際に「日本の美術館と違う」と感じることがあります。それは、欧米の美術館では、先生に引率されて絵を鑑賞している子どもたちのグループが多いということです。私が小学生のころ社会科見学といえば工場見学などだったので、この点は興味深く感じます。子どものころから名画に触れることは、審美眼を養うという点ではもちろんのこと、大人になってからもアートを身近に感じる出発点だと思います。シンガポールは行動しやすい範囲に数多くの美術館がありますので、親子でぜひ足を運んでいただきたいです。

?親子でのギャラリーの使い方

親御さんの中には、ギャラリーは「大人の空間だから」とか「絵を購入するわけではないので入りづらい」と二の足を踏む方もいらっしゃるでしょう。でも、その心配は無用です。なぜなら、アーティストは多くの方に自分の作品を見ていただけることを何よりの喜びとしているからです。親子でアートを鑑賞する際は、大人が既成概念を植えつけず、親子それぞれが「自分はこう感じる」「自分ならこの作品のこういうところが好き」という観点で自由に鑑賞してみてください。子どもは大人よりも直感力があるので、作家の心を感じとることもでき、大人では考えつかない発想で事象をとらえるので、その自由さを楽しんでください。

想像の余白

見る人に自由に想像したり何かを感じさせる振れ幅のある作品は魅力のある作品だと思います。味わう人それぞれの主観を受け入れてくれる「想像の余白」がある作品は鑑賞していて面白いものです。 例えば、今注目の若手アーティストである竹川宣彰さんは、既成の世界地図を別の視点から作り変え、見たことのない形の地球儀や地図を使った作品を発表しています。「世界は一つではない」というメッセージにもとらえられますし、常識に挑戦する意味もあると思います。また、竹川さんは福島原発事故後にだれも管理できず放たれた牛たちを見たことをきっかけに、全国各地から牛乳パックを集め、そこに描かれた牛のイラストを使って作品を生み出しました。一見コミカルな作品ではありますが、原発に対する批判精神を作家のユニークな視点で表している点は、まじめに論ずるよりもよほど説得力があります。  アートに触れ合うとき、あるいは創作するとき、親子でぜひ想像する楽しみを感じてみてください。

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