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コラム

音楽との出会い特別インタビュー「チェロとの歩み」チェロ奏者 藤原真理さん

2013.04.25

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〜音楽との出会い〜

日本を代表するチェリスト藤原真理さんが 2 月に来星し、日本人会 でコンサートを行いました。「バッハ無伴奏チェロ組曲」や「八重の桜」 などの見事な演奏に、多くのファンがあらためてその音色の素晴ら しさに魅了されました。 コンサート終了後、藤原さんに幼少期から今日に至るまでの「チェ ロとの歩み」をお聞きしました。

チェロとの出会い

私のチェロとの出会いは、「教育パパ」とも言うべき父親の影響を 強く受けています。自らは楽器を演奏しなかった父は、度を超すほ どのクラシック好きでした。その中でも弦楽器、ことにチェロに魅 せられたようです。父の勧めにより、幼稚園の入園前には既にチェ ロを習い始めていました。音楽に馴染ませるため、家では常にレコー ドやラジオからクラシックが流れ、はじめはピアノによる音感教育を 受けていました。子ども用の小さなチェロが手元に届いたのは私が 4歳 のころです。 それからというもの、地元の先生のもとへレッスンに通う日々 が始まりました。

父がどれほどチェロに熱い想 いを抱いていた かを改めて知ることになったのは、私が小学5 年のときでした。 私に更に専門的なチェロの指導を受けさせるため、故郷大阪を離れ一家で東京へ移ることになったのです。サラリーマンだった父に転勤の辞令がでた わけでもありませんし、音楽の道での保証があったわけでもありませ ん。孟母三遷ならぬ「孟父三遷」という感じでした。

父は「絶対にチェロを続けなさい」とは言いませんでした。しかし、 父が意図した環境を、私は自然に受け入れていました。奏でる音が はずれていれば物が飛んでくるなど、父は私に厳しいときもありました。一方で母は、「ちょっと自転車にのってきたら」などとさりげ なく気分転換の助け舟をだしてくれる存在でした。今思えば、厳格 な父とその空気を和ませてくれる母とで、両親としてのバランスを とっていたのでしょう。 こうして本格的なチェロとの人生に向けて、更なる一歩を踏み出 したのです。

反復練習

チェロはすぐに納得できる演奏ができる楽器ではなく、ひとつ到 達すれば、更に次の目標がでてくる奥の深い楽器だと感じます。次の目標を追い求めて歩んだ結果、気がつけば 50 年以上のつきあいになりました。 一途にチェロと向き合えた理由に、「反復練習」があります。物心 ついた頃には既に毎日の日課になっていました。チェロに限らずど んな楽器でも、納得いく演奏をするためには、「反復練習」をするこ とが一番大切だと思います。

「音楽」をものにすることは、時に気の遠くなるような地道な作業 の連続です。例えば演奏曲に取り組んでいるときは毎朝、起きたら すぐに一度弾いてみます。気になっているパートを取り出して練習 すると、昨日までできていたことが、どこまでできなくなっているか を改めて確認します。朝一番の演奏は、まるで一日を始める準備体 操のようなものでしょうか。また、夜の就寝前にも、「このまま休み たいな」という気持ちを抑えて、もう一度弾いてみます。ベストコン ディションでないときに自分の演奏がどのように変化するかを、身 をもって理解するためです。 本番の演奏では「ちょっと失礼、もう一回」とは決して言えません。 本番で自分のベストの演奏をするためには、難しい練習に耐えるの は当然で、うまくできなければとことん克服する「粘り強さ」を持ち 続ける必要があるのです。

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