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グローバル教育

この人からエール

新春特別対談「これからの日本の教育」

2017.01.10

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21世紀に求められる「教育立国」の実現を

坪谷:子どもは未来ですし、子どもを大切にしない国は滅びるという一説もあります。日本と同じように少子高齢化を迎えている先進国の中には「教育こそ最も効果的な投資」と位置づけ多額の予算を投じている国がある一方で、日本はむしろ教育費が削減されようとしています。その点について、どのように思われますか。

下村:今年5月に出版した『教育投資が日本を変える(PHP研究所)』でも述べていますが、歴史を振り返ると、国家が担う役割は大きく変化しています。19世紀は近代国家の中で「夜警国家」、つまり、国内では安心・安全・治安を、国外では外交防衛政策を行う役割です。20世紀になると「福祉国家」、つまり「ゆりかごから墓場まで」に象徴されるように、国民が健康で文化的な生活を維持するための役割を担っていました。そして21世紀になり、「教育立国」という役割がプラスされたと考えられます。

現在日本は、国家予算に占める教育財源の割合はOECD加盟国34ヵ国の中で最低水準です。それだけでなく、家庭の経済状況が子どもの学力に影響を与えているという指摘もあります。経済状況により適切な教育を受けられないということは、一人ひとりの能力や可能性が十分発揮されないだけでなく、格差の固定化や貧困、そして先に述べたように、「将来に希望が持てない」という負の連鎖も引き起こします。この連鎖は何としても断ち切らなければなりません。全ての子どもに平等に教育の機会を保障することは、持続可能な活力ある社会の基盤を築くことであり、その核になるのは教育なのです。

私は現在、あしなが育英会の副会長を務めています。私自身、9歳の時に交通事故で父を亡くし新聞配達をしながら、あしなが育英会の前身である「交通遺児育英会」の高校奨学生第一期生となりました。そして高校、大学へと進学したのです。貧しい生活の中でも奨学金があったからこそ学ぶことができた、その仕組みを作っているのが政治だと、政治への関心を深め、日本の教育を整備し、改革したいという想いで政治家になりました。

私は一人ひとりの「豊かさ」は教育によって作られ、教育の充実により、その人が持つ可能性を最大限引き出すことができると信じています。意欲や能力のある全ての人がいつでも質の高い教育を受けられるような教育立国を実現するには、教育投資を充実させるしかありません。「日本に生まれたからこそ、自分のチャンスや可能性を広げ大輪の華を咲かせることができる」、そんな国になれるよう、国家戦略として教育投資を「未来への先行投資」と位置づけ、教育費の家計への負担軽減や教育機会の格差是正など、充実を図ることが必要不可欠だと考えています。

坪谷:本当におっしゃる通りだと思います。経済でも外交でも、その方針を決めて決定していくのは「人」であり、その「人」をつくるのは「教育」です。教育には人を変え、日本も含めた世界をも変える力があると私は思っています。万人が質の高い教育を受けられる教育立国の実現に向けて、これからも取り組んでいきたいと思います。

最後に、海外にお住まいの日本人の皆さんに、メッセージをお願いします。

海外にいることが何よりの「プラス」

新春特別対談「これからの日本の教育」

下村:海外で生活することは、お子さんにとっては未来の可能性を広げる大きなチャンスだと思います。このチャンスを最大限活かしてください。以前、シンガポール日本語補習授業校に行った時「小学校の高学年や中学生になるまでには日本に帰国したい」と考えている親御さんがいらっしゃることに驚きました。海外にいること自体、お子さんには何にも代え難いチャンスを提供しているということなのです。異国の地という「宝の山」にはチャンスがあふれているにもかかわらず、それに気づかないというのは、非常にもったいないことです。そのことを常にお子さんに語りかけ、ぜひ親子でその有り難みを感じていただきたいと思います。

「早く日本に戻って受験勉強しないと遅れちゃうよね」というような、お子さんの可能性をつぶすようなマイナスのマインドコントロールを親御さんご自身がしないように注意することも大切でしょう。日々受験勉強に追われる時を過ごしても、実は受験勉強だけでは世の中で通用しないということは、親御さんご自身が一番ご存知ではないでしょうか。人生には、もっと大切なことがあるのですから。

勉強でも何でも、子どもの能力を伸ばす最大のノウハウは、「やる気にさせる」ことです。そのためには、今、目の前にあることに興味関心を持ち、もっと頑張ろうと子ども自身が思うことでしょう。海外では、自分が外国人として生活し、多様な文化・生活様式に触れることで、客観的に物ごとを捉える機会も多いことでしょう。そのため「自分がどんな人間か」、「自分が本当にやりたいことは何か」についても、より深く考える機会が身近にあります。すると目の前にある数学や英語など、与えられた勉強ばかりではなく他の興味や関心も深まるものです。こうして良いスパイラルができ、何十倍もの成果が出るのです。人生にとってこれ以上のプラスはありません。

子どもは「宝もの」

坪谷:海外に住むという貴重な経験と、そこで育まれた「人材」はこれからの日本、ひいては世界を支える「人材」であると強く思います。保護者の皆さまにはぜひ、未来の社会からそういう「宝もの」を預かっているという気持ちでお子さんを導いていただきたいと思います。

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