海外生・帰国生へのヒント
クラーク記念国際高等学校卒 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造学科1年 伊藤明日奈さん「ブラジルで見つけた芸術への夢」

徐々に慣れた海外生活

私がブラジルに行ったのは、中学2年生の4月でした。日本から引っ越して間もなく目にした、サッカーが盛んなブラジルらしいW杯のイベントや、車道に広がる青空市「フェイラ」など、全てが新鮮な光景だったことを今でも良く覚えています。

渡航して最初の1ヵ月間は現地の日本人学校に通い、放課後は英語学校で英語を学んでいました。本格的に英語で学ぶ環境にチャレンジしたかったのでその後アメリカンスクールに転校し、いよいよ英語環境になりました。アメリカンスクールでは日本人が学年に2人しかいない状況で、はじめは友だち作りさえも難しく感じました。英語の学習についていくために、英語教室を運営している近所のアメリカ人にサポートしてもらい、放課後はひたすら英語での課題をこなすことに明け暮れました。

アメリカンスクールでは「哲学」や「歴史」の授業がとても印象的でした。哲学の授業では、“This I Believe”というテーマで、愛がどのように伝染していくかを映像で表現したり、イギリスの哲学者トマス・ホッブスに扮して、同級生とロールプレイを考えて発表したりしました。歴史の授業では毎回、命題 “essential question”が課され、それに回答できるように歴史の流れを学び最終的にエッセイにまとめていきました。自分の学んだことや考えを表現して他者に伝えること、その過程で仲間と思考を深めていく学習スタイルは、非常に達成感を得られたと思います。英語で苦労しなかったと言えば嘘ですが、英語の補習授業を受けながら学校の課題の映像作りに徹夜で没頭したことは、今の私を築く学びの原点になりました。

クラーク記念国際高等学校卒 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造学科1年 伊藤明日奈さん「ブラジルで見つけた芸術への夢」
サンパウロのアメリカンスクールでの舞台発表

 

ブラジルでの美術の出会い

 私が芸術分野に目覚めたのは、ブラジル滞在中に観た美術映画に衝撃を受けたことや、アメリカンスクールの授業で映像制作の経験があったことがきっかけでした。日本への本帰国が決まってからは、自分が関心のある芸術分野をどのようにつなげていけば良いか模索していました。当初はなかなか自分に合う学校を見つけることができずにいたところ、美術・デザインコースで実技試験のあるクラーク記念国際高等学校を知りました。クラークの説明会で美術と映像の可能性を改めて確信することができ、「私が進みたいのはこの学校だ」と進路を決めることができました。ブラジルの絵描きの友人らにアドバイスをもらいながら試験に挑み、合格できた時はとても嬉しかったです。

帰国後の学校生活

日本帰国後の一番の心配ごとは「友だちができるか」でしたが、クラークには海外生だけでなく国内の学校から多彩で面白いクラスメートが集まっていたので良かったです。例えば美術の選択授業では、同じ興味を持つ友人が集まっているということもあり、自然と打ち解けることができました。

クラーク記念国際高等学校卒 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造学科1年 伊藤明日奈さん「ブラジルで見つけた芸術への夢」

学習面では、選択授業が充実していて関心のあるトピックを深掘りできました。英語力の向上は学校でも重視していたので、英検準一級やTOEFLを受けるなどして、海外で身につけた英語を忘れないことを心がけていました。また、年度の初めには中学校のカリキュラム内容を復習する期間があったので、中学時代を海外で過ごした私にとって、着実に学習の基礎を固める良い機会になりました。先生は全員心理カウンセラーの資格を持っているそうで、心の面でも親身に支えてくださいました。東京芸術大学への受験についても、熱心に相談にのっていただき、一緒に情報収集もしていくださいました。一人ひとりの将来の夢を真剣に応援してくれる先生方の存在は大きく、感謝の気持ちでいっぱいです。

クラーク記念国際高等学校卒 東京藝術大学音楽学部音楽環境創造学科1年 伊藤明日奈さん「ブラジルで見つけた芸術への夢」
 クラーク記念国際高等学校の同級生と

 

海外で生活している皆さんへ

私は中学生になって初めて海外生活を経験しました。これは帰国子女としては比較的、遅い方かもしれません。毎日の英語での学習についていくために、最初は辞書が手放せませんでしたが、「わからないことを一つずつ調べながら課題をこなす」という姿勢が助けになりました。身の回りの環境が急に変わることで、戸惑ったり不安があるかもしれませんが、きっと皆さんのそばでは家族や友人が応援してくれていると思います。私の場合は、海外留学の経験者である姉の存在が、大きな心の支えとなりました。皆さんも決して一人ではないことを励みに頑張ってほしいと思います。

クラーク記念国際高等学校の詳細はこちら
https://spring-js.com/japan/6554/

『海外生の今』バックナンバー
https://spring-js.com/global/global02/kaigaisei/

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