海外生・帰国生へのヒント
桐蔭学園小学部 2 年 日下部 晃生 くん 母 恵美 さん 談「幼少期に触れた異文化での生活」

ローカル園で育まれた多様性

 海外赴任後間もなくシンガポールで生まれた息子は、2歳前からローカルのナーサリーに通いはじめました。せっかくシンガポールという国にご縁があって暮らすので、現地の子どもたちとも仲良くなって欲しい、そして日本にはない文化も学び、心の広い多様性のある人間になって欲しいと考え、このナーサリーを選びました。

ナーサリーでの「Racial Harmony Day」

 初めての環境で英語や中国語を理解できるか心配でしたが、息子にとってはまだ自我が芽生える前の年齢であったためか、先生やお友だちの話す言葉を素直に受け止め自然に理解できるようになっていきました。むしろ親の方が先生やお友だちのご両親とのコミュニケーションに苦労しました。しかしこれは「子どもといっしょに新しい体験ができるチャンス」と発想を切り替え、先生と頻繁に連絡を取ったり、自分からお友だちを遊びに誘うように心がけました。そのかいあってか、親子ともども多国籍の良いお友だちに恵まれました。

 一番の思い出はナーサリーで行われた「Racial Harmony Day」です。この日は自分の国の民族衣装を着て一日を過ごしました。多民族国家であるシンガポールならではの行事で、誰もがさまざまな民族や宗教を理解し尊重し合い、アイデンティティーを確立させるという目的でした。日本の幼稚園ではなかなか味わうこのできない、とても貴重な経験ができたと満足しています。

のびのびと過ごした幼児期

 ナーサリーには3歳半まで通っていました。息子は親の心配とは無 縁に英語を肌感覚で理解していったようです。この年齢では語学を頑 張って勉強しなくても、子どもは置かれた環境にすぐに適応し、言葉 を理解するのだと感心しました。

? ナーサリーでは、通常保育の他にオプションの音楽クラスを選択していました。この時期子どもにとって一番大切なのは、お友だちとの遊びの中で得意分野を見つけ個性を伸ばしたり、お絵描きや音楽など情操分野を開拓して将来につなげることだと思います。

 日本語学習も忘れませんでした。 家庭では、息子が率先して日本語を常に楽しく学習できるように導きました。リビングや寝室の壁にひらがな・カタカナのポスターを貼ったり、親子で童謡を歌ったり、ことばのカードゲームを作ったりしたのは楽しい思い出として残っています。

帰国して臨んだ小学校受験

 日本に帰国して入園した幼稚園は幼児教育にとても力を入れており、小学校受験をするお子さんが多く集まっていました。そのため小学校受験を考えるようになりました。

 我が家のように転勤が多い家庭には、数年の海外生活を経て帰国した児童の受入れ体制が整っている私立校は、まさに理想の環境だと思います。編入学や復学制度に注目して志望校を選びました。日本語の習得が著しく遅れていたこともあり、受験勉強は苦労しました。年長からは毎日の家庭学習と週に3回幼児教室に通い、週末には模試を受けていました。ひとつの目標を持ち勉強に集中したためか、飛躍的に学力が伸びました。努力の末に良い結果を得られた受験は息子に自信がついたとともに、親子の絆を深めることのできた意味のあるチャレンジとなりました。

シンガポールの皆さんへ

 シンガポールで幼少期をすごした息子は、今も人種を問わずいろいろな人と接し、友達を作るのが得意です。テレビで海外のニュースが流れると、その国の位置を地球儀で確認したり国の特徴を調べたりしています。また「将来いろいろな国に住んでみたい!そしていっぱい友達を作りたい!」と語ります。幼い頃の環境が意識の中に根付いており、海外に関心を示すようになったのだと思います。転勤が多い家庭の子どもは、環境への対応に苦労することが多くかわいそうだという意見もありますが、子どもには大人が驚くような適応力があるように感じます。シンガポールでの経験が少しでも活かされ、いつの日かグローバルに活躍してくれたら、これ以上嬉しいことはありません。

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