グローバル教育
第5回 イギリス編

イギリスの大学は歴史と伝統を誇りつつ、自主性と新たな価値の創造を重んじることで、多くの優れた人材を世界に輩出してきました。シリーズ第5回目は、イギリスの大学進学について特集します。

ブリティッシュ・カウンシル シンガポール Director of Education
Shabir Aslam 氏からのメッセージ

イギリスの教育の真髄は、専門知識とスキルの習得、自由闊達な風土の中で育まれる個性と創造力、そして才能を最大限活かすための支援体制にあります。大学では世界トップレベルの教育環境と設備の中、専門分野を極めながら、企業や学術機関からも高く評価される知識と 人間力を養うことができます。各大学は政府が定めた厳しい評価基準を満たすことが求められ、その結果は公表されています※

世界中から多様な学生が集まることも、大きな魅力です。全ての大学には、日本人学生のニーズを熟知したスタッフがいます。卒業生のネットワークや各種支援グループは、イギリスでの学生生活が豊かで実り多いものになるよう、万全な体制でサポートしてくれます。Education UKのウェ ブサイト(www.educationuk.org/Singapore)をぜひご活用ください。

※Quality Assurance Agency for Higher Education (QAA):大学・高等教育を評価する独立機構 (高等教育質保証機構)のウェブサイトで志望大学の評価を確認できる。www.qaa.ac.uk


イギリスの主な大学

世界の先端を行く教育と研究

○ 2014年度QS世界大学ランキングでは、4大学が上位6位までに入る。
○ イギリスは世界有数の研究国家であり、研究者一人当たりの論文数や被引用論文数で世界をリードしている。
ビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)「International comparative performance of the UK research base」より(2011年発行)
○ イギリスの大学・カレッジを卒業した留学生の88%以上が、学習経 験を肯定的に評価している。
ビジネス・イノベーション・職業技能省ビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)「Tracking International Graduate Outcomes」 より(2012年発行)より(2011年発行)

イギリスの大学および出願の特色

○ 通常3年で学位を取得できる。ただしスコットランドは4年、医学や獣医学、建築などは5~7年必要
○ 一般教養課程がなく、入学初年度から専門過程を学ぶ。
○ 少人数制のセミナーやチュートリアルと呼ばれる個別指導などで、発表や教授・クラスメートとの議論を重視する学習スタイルが主流。
○ 学位にも学業成績が反映され、成績順に区分された学位が授与される。
○ 各大学への個別出願ではなく、大学共通の入学手続き機関である UCAS(Universities and Colleges Admissions Service)にまとめてオ ンライン出願(入学前年の9月中旬から出願開始、締切は学部により異なる)。出願書類は成績証明書、パーソナル・ステートメント(志望動機書)、推薦状など。www.ucas.com
○ 合否は出願書類で判断されるが、面接試験を課す大学や学部もある (例:オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、医学部、獣医学など)。 面接方法は、現地での対面、Skype、面接官の海外派遣などさまざま。
○ 統一専門試験が必要な学部もある(医学部のBMAT等)。

※大学・学部によって詳細は異なりますので、直接お問い合わせください。

入学までの主なルート
~多数ある経路のうち一部を紹介

1. 大学に直接入学

国際バカロレア(IB)またはAレベル等を履修した高校生(インター校生やイギリス現地校生)などが該当する。
インター校生でIBのスコア結果が確定する前に出願する場合、 conditional offerという「条件付きの合格」が出される。後に実際のスコアが一定の基準を満たせば入学が認められる。
※Aレベル:イギリスの高校生が受ける大学入学に必要な統一試験。試験成績は合格を左右する。2年間のコースを履修して受験する

2. 大学進学準備コースを経て入学

日本の一般の高校生など が該当する。大学に入学する前に、「ファウンデーション・コース」または「Aレベル」を履修する例を下記に紹介。AレベルではなくIBDPを履修する生徒もいる。
出願にはIELTSなど、英語力証明が必要になる。
インター校生でIBのスコア結果が確定する前に出願する場合、 conditional offerという「条件付きの合格」が出される。後に実際のスコアが一定の基準を満たせば入学が認められる。

ファウンデーションコース

教育制度や言葉が異なる留学生が、学部での学びに必要な専門英語と スキル(リサーチや発表の方法など)を身につけるコース。9月から6月 までの 9ヶ月間が多い。大学がコースを提供している場合、規定の成績 を収めればコース修了後にその大学または提携先大学に進学できる。

Aレベル

ファウンデーション・コースを提供していない大学や医学部など特定 の学部を目指す場合、現地の高校生と同じ試験を受ける必要がある。2 年間履修するコースだが、成績によっては1年で修了する生徒もいる。

学費と奨学金

大学学部:£10,000 ~ £32,000(専攻科目による)
奨学金:Education UK(上述)や日本学生支援機構(www.jasso.go.jp) のウェブサイトで情報収集が可能。大学にも直接お問い合わせ下さい

取材協力:British Council Singapore /留学コンシェルジュbeo(ビーイーオー)
参考文献:英国留学ガイドブック 2014/15(編集:恵文社 発行:ブリティッシュ・カウンシル)
参照ウェブサイト:www.educationuk.org/japan

出納 楽(すいどう このむ)さん
私立海城中・高等学校で学ぶ。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン
(ロンドン大学 ※ 以下UCL)のファウンデーション・コースを経て、現在キングス・カレッジ・ロンドン(ロンドン大学)哲学部2年生。

Q. イギリスの大学を志した動機は。

高2の夏に参加したイギリス海外研修がきっかけです。当時海外大 学への進学は全く視野にありませんでしたが、特に訪問先のロンドンで、異なる人種や宗教、価値観等が衝突し合う環境とそのエネルギーに圧倒され、多様性が生み出す可能性に強く惹かれました。大学の世界最高水準の教育研究実績はもちろん、伝統と革新の両面を併せ持つ イギリスの「佇まい」にも魅了されました。

Q. 受験対策は。

学期中は学校の授業に真剣に取り組み、長期休暇中にIELTSの対策 を徹底して行いました。「パーソナル・ステートメント」の作成の際は、 中学の生徒会長や高校の生徒会副会長を務めた経験で培ったリーダー シップやチームワークの力をアピールし、志望動機などを論理的に表 現するよう心がけました。出願書類の準備などは留学エージェントを 随時利用し、最善を尽くしました。

Q. 渡航前に心がけたことは。

哲学や芸術、歴史や政治等に関する日本語の文献を読み込み、母 国語で教養を身につけました。また、大学での学問に必須の「アカデ ミック英語」を向上させました。学費面での両親の負担を軽減するた め、社会経験を積む意義を含め、アルバイトで資金を蓄えました。

Q. キングス・カレッジ・ロンドンでの生活は。

イギリスはもとより世界中から集まった多様な仲間と学問への情 熱を共有しながら、世界的権威の先生方から直接指導を受けられるキン グスでの生活は、学業面でも課外活動の面でも大変充実しています。授 業では議論を通じて互いの主張を闘わせ、批判的に評価し合うことが重 要視されているため、授業前の準備にはとりわけ力を入れています。

Q. これから進路を決定する後輩たちへメッセージを。

日本の学校で勉学や課外活動などに毎日全力で取り組んでいれ ば、海外の難関大学に直接進学することは決して難しいことではあり ません。中高時代から自分の将来を徹底的に考える時間を持ち、海外 への進学も国内と同じ次元で捉え直すことで、卒業後の選択肢が大き く拓けると思います。かけがえのない日々を精一杯過ごしてください。

※ロンドン大学は「カレッジ」や「インスティテュート」と呼ばれる 独立した教育研究機関から構成される

平山 ゆりさん
日本人学校小学部を経て、UWCSEAで学ぶ。 現在ケンブリッジ大学で生物化学修士課程を履修中。ClinicianScientis(t 臨床医科学者)を目指し今秋ケンブリッジ大学医学部入学予定。

Q. 高校までの教育と、イギリスの大学を選んだ理由は。

「日本という枠を超えて活躍してほしい」という両親の希望もあり、小4の時に日本人学校からインター校に転校しました。高校ではIB カリキュラムを履修し、課題に懸命に励みました。莫大な量の受験情報の中、「自分にとって本当に大切なこと」だけに全力で集中しました。 私の場合はIB日本語はあえて選択せず、理系に必要な科目に注力しま した。SAT等も受けていません。

イギリスはIBへの評価が高いことや、入学後すぐ専門課程に入れること、歴史上偉大な発見や発明が多くなされたという事実に惹かれま した。特に自然科学分野で多くのノーベル賞受賞者を輩出しているケンブリッジ大学は、私の憧れでした。

Q. 合格までの道のりは。

希望学部を念頭にIB科目を選択しました。職場体験は病院でインターンをし、個人研究論文では化学実験を行うなど志望分野との一貫性を持たせました。面接試験では問題解決の思考プロセスが大変重視されるため、時には面接官と議論しながら論理的に結論を導き出す努 力をしました。イギリス受験は学業重視と言われますが、私も面接で奉仕、課外活動などについては触れられませんでした。

Q. 大学生活の様子は。

ケンブリッジ大学での勉強はIBとは比べものにならないほど密度 が濃く、月曜日から土曜日の朝から晩まで講義、実験、Supervision(オックスブリッジの伝統である学生1~5名のゼミ)があります。800 年の伝統ある校舎で、その時代を生きた同じ志の人たちの息づかいを も感じながら学び生活できることは、何にも代え難い経験です。

Q. 後輩たちに伝えたいことは。

進路決定のキーパーソンはなんといっても自分自身です。全てに おいてイニシアティブをとり、責任を持って計画的に進めていただき たいと思います。目標が定まったら、自分を信じて邁進してください。


編集部より 周りに流されない芯の強さがあれば達成できない目標はないのだと、真摯な姿勢に感銘を受けました。目指すキャリアが明確な場合は、学部1年目から専門課程を学べるイギリスでは、夢に最短距離で向かえると思いました。

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