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世界で活躍する日本人

経済協力開発機構(OECD)勤務 小原 ベルファリ ゆり 氏 ~世界中の子どもにより良い教育を~

2015.06.25

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教育分野での「国際協力」をライフワークに

現職に至る原点は、大学時代の海外での体験です。一年間の交換留学でフィリピンの教員養成課程を受講しながら、現地NGOで青少年育成に関わるインターンを経験しました。その後他の東南アジア諸国やアフリカも訪問し、学校に行きたくても行けない子どもが多い状況に強い衝撃を受けました。日本とあまりにかけ離れたこの光景は私の脳裏に強く焼きつき、どんな貢献が出来るのかを真剣に考えさせられました。

私に何が出来るのかを考えたときに、まず、自分自身が教育分野の専門知識を身に付ける必要があると思い、アメリカの大学院で国際教育政策を学びました。現在は「Betterpoliciesforbetterlives(より良い暮らしのためのより良い政策)」をミッションとするOECDの教育スキル局で、教育成果や政策の国際比較を行っています。例えば、国際学習到達度調査(PISA)の結果をもとに、参加国別の数学、科学、読解での生徒の学習到達度を国際比較・分析しています。2012年のテストではシンガポール、日本を含めアジア勢が高得点を収めており、それらの国では最低ラインの習得レベルに達していない生徒の割合が低く、家庭の経済状況や、言語、親の教育レベルなどが得点に影響する割合も低いと言えます。つまりどんな家庭の子どもでも学習できる環境が整っており、学習に困難がある生徒へのサポートも十分にされているのです。

教育の質は、教員の力量にかかっていると言われます。PISAで高得点をとる国や地域に共通しているのは、優秀な学生が教職に就き、その後も教師の研修制度などの充実を図って常に教員が研鑽を重ねているということです。このように優れている国の傾向や学習を向上するために必要な政策は何かを分析し、まだまだ教育が十分でない地域の教育政策にその結果を反映することが私の仕事です。教育が改善されれば、経済の発展や人々の生活水準を向上させることができます。教育とは、まさに国家の根幹なのです。

かつて学校教育の主な目的は、将来の仕事や生活に必要な知識、技能を身につけることだと言われていました。しかしテクノロジーが急激に発展し、我々を取り巻く社会や経済状況も変化している現代では、現在習得している知識や技能が、彼らが就業する頃にはすでに時代遅れになっている可能性すらあります。それゆえ、学校で何を学び、どんなスキルを身につけるべきかは、多くの国で議論になっています。これからの時代に求められるのは、自ら問題を探し答えを発見する力であり、多様な背景を持った人々を相互に認め合う力でしょう。また、地球環境などのグローバルな課題を意識して、責任ある市民として社会参加する素質を育むことも、今後の教育の重要な課題だと思います。

PISA※もこうした教育の目的を踏まえ、2018年には数学、科学、読解リテラシーに加え、グローバルコンピテンスをテストに追加する見込みです。グローバルコンピテンスとは国際社会に対応する力、多様性や相互理解、世界の誰とでも協力できる力を意味します。現在参加国と具体的な測定基準を検討しているところです。

※PISA(ProgrammeforInternationalStudentAssessment)とは学習到達度調査のことで、世界約70か国で3年ごとに15歳児を対象に実施される。

世界で活躍するための資質とは

国際機関では、スタッフ一人ひとりが異なる言語や考えを持っていることが前提ですので、「自分」をしっかり持ちながら互いを尊重し合う視点が不可欠だと感じます。それゆえ、「日本人」としての強みと弱みを意識しながら仕事に取り組む姿勢を大切にしています。

世界で活躍するために多言語の習得が注目されがちですが、それ以上に求められる資質とは、多様な考えに耳を傾けながら独自の考えを持ち、それを他者に分かり易く伝え、異なる意見の人々とも協働できる力だと思います。単に多言語が操れるだけでなく、文化背景の違う人にも納得してもらえるような「共通理解」を導く力が求められているのではないでしょうか。そのような力は学校、課外活動、家庭、地域といったさまざまな場での多様な学習が複合的に蓄積して育まれるものだと思います。学校での学習を基盤にした上で、実生活での試行錯誤の経験こそが重要です。ぜひ皆さんには積極的に今自分が住む国・地域のコミュニティと関わり、その経験を未来のために最大限生かしていただきたいと思います。

経済協力開発機構(OECD)勤務 小原 ベルファリ ゆり 氏

1997年 津田塾大学卒業
1997年~ 1999年 青年海外協力隊員としてセネガルに赴任。
2000年~ 2001年 スタンフォード大学にて教育政策を研究、修士号取得。
2002年~ 2012年 教育政策のスペシャリストとして10年間モロッコ事務所にて基礎教育の改革に関する事業に従事。(2002年~ 2005年 、2007年~ 2012年 国連児童基金UNICEF 20005年~ 2006年 世界銀行)
2013年より現職 経済協力開発機構(OECD)教育スキル局、就学前・学校教 育課にて課長を歴任。パリ在住。

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