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アートディレクター 増田 セバスチャン氏 カラフルな世界と「Kawaii」哲学~ビジュアルは言語を越える~

2017.01.10

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アートディレクターとして、きゃりーぱみゅぱみゅさんの演出や、サンリオピューロランドのライブなどを手がける一方、 原宿では国内外から年間20万人が訪れる「モンスターカフェ」をプロデュースしています。

アメリカ、ヨーロッパを周り今回初めてシンガポールを訪れたのは、AFA(Anime Fair Asia)NHK World TVブースでのアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」のためです。このプロジェクトでは、世界中の人々に作ってもらった可愛いタイムカプセルを、オリンピックイヤーである2020年に東京でタワーにすることで、世界の「kawaii」を一つに結集する予定です。

アートディレクター 増田 セバスチャン氏 カラフルな世界と「Kawaii」哲学~ビジュアルは言語を越える~

僕が作品に込めているのは、黒と灰色の世界をカラフルにしていきたいという思いです。社会、そして人々の心には闇が存在します。しかし 世界中の人々が心に秘めた大切な思いを「Kawaii」ものとして尊重し合い、それが「哲学」として広まり、平和で彩りのある世の中につながることを願っています。

一風変わった子ども時代

子ども時代の僕は早熟で「大人って馬鹿だな」と、少し斜に構えていました。学校では 算数でわざと答えを間違えて、先生がどんな説明をするのかを試したり、親のお金を黙って持ち出し京都へ一人旅をしたこともありました。

家で商売をしていた両親は忙しく、夕方も家にいると 仕事の邪魔になるからと、100円を渡され商店街を歩くことが日課でした。その時に見た、商店街の佇まいやお店で売られていたカラフルなおもちゃ、可愛いお菓子のパッケージに心を奪われ、それらの世界にひき込まれたことを鮮明に覚えています。

幼いながら 、当時は大人が想像する以上にいろいろなことを考えていたと感じます。一般的な温かい家族との思い出とは少し違いますが、今の僕を作る原点は、間違いなくそこにあったのです。

1冊の出会い

絵を描くことが好きだったので、中学・高校では美術専門の学校に行きたいと思っていました。しかし、芸術を究めるにはお金がかかるし現実的ではないと、両親から猛反対されました。結局高校では地元の進学校に入学したものの、半ば引きこもりのような状況になった末、1日中図書館で過ごすような生活を送っていました。ひと月に100冊以上は読んでいたでしょうか。その中で、寺山修司氏の著書「書を捨てよ、街へ出よう」に出会い、その衝撃が、僕の人生を大きく変えました。世界には見その後の僕は演劇に、舞台芸術に、店舗の開店にと、さまざまなことで自分を奮い立たせ表現し、チャレンジしていきました。

ニューヨークでのデビュー

ニューヨークのチェルシー地区でデビューを飾った個展「Colorful Rebellion: Seventh Nightmare」では、人間の持つ感情をまずは一つずつ言葉にし、作品として表現しました。テーマである「7つ目の悪夢」はあえて空白にして、見る人が十人十色に受け取り「どう感じるか」を問う作品にしています。当時マイナス15度の寒空にもかかわらず、私のデビュー作品を見にギャラリーの前に1,000人もの行列ができました。作品を見て泣く人、恐れを抱く人もいました。皆それぞれの見方をしてくれたのです。まさに 日本の「可愛い」が独特の世界観を創り、「Kawaii」として世界の人々と繋がったのです。ビジュアルは言語を越える、と実感した瞬間でした。

アートディレクター 増田 セバスチャン氏 カラフルな世界と「Kawaii」哲学~ビジュアルは言語を越える~

Photo by GION

子どもたちへ

「Kawaii」とは、「自分が大切にするもの」を愛でる文化であり、「誰の価値観にも邪魔されず、自分の本当の感情を出せる小宇宙」だと思います。 これは決して奇抜さや物理的にカラフルなものだけを指しているのではありません。時にはコンプレックスになるようなもの、他の人が理解しにくいことであっても、価値があると信じることだと思います。ですから、皆さんも自分の心に秘める「小宇宙」を大切にしてください。

どんな時でも大切なのは「行動を起こす」ことです。私は今46歳。自分のしたいことに出会い、形になるまでに実に20年以上もかかりました。その間、自分自身がわからなくなり人々との別れもあり、辛く苦しい時期もありました。

今振り返って思うのは「人生はトランプゲームのようなもの」だ、ということです。ぴったり合うカードを探すには、ひたすら引き続けるしかありません。カードを引くこと自体を止めてしまったなら、それはあらゆる可能性を自ら閉ざすことに他なりません。自分の人生を自分らしく歩むには、辛抱強くカードを引き続けるしかないのです。

世の中は 、以前に比べれば「カラフル」になってきていると感じます。そして、これからの世界が更に彩り豊かになるかどうかは、皆さんの行動次第だと思います。

増田 セバスチャン氏

1970年生まれ。フランス開催「Japan Expo」、サンフランシスコ開催「POP Summit」など海外での出展を経て、2014年海外で初の個展「Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-」をニューヨーク、マイアミ、ミラノで開催。ミラノでは「見逃してはいけない10の作品」に選ばれる。ニューヨーク大学で「原宿、Kawaii 文化」をテーマに講義、京都造形芸術大学 客員教授。現在は文化庁「2020年に向けた文化イベント等の在り方検討会」委員就任。NHK World TV の「Kawaii International」のアートディレクターを務める。

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