海外生・帰国生へのヒント
Vol.8 歯科医師 杉崎 由美子氏 ~歯科医師として、シンガポールへ~

はじめに

「世界は広いのだから、日本だけの世界観にとどまらず大きな世界を見てみたい」。大学時代にそう思っていた私は、9年前に日本を飛び出し、シンガポールで歯科医師としてのキャリアを積むようになりました。当地では所定の手続き後、日本の歯科医師免許を生かして日本人の患者さんを診察することができます。現在は、シンガポール人が経営する歯科医院に勤務し、一般歯科診療はもちろんのこと、審美歯科治療やインビザライン矯正にも力を入れて取り組んでいます。

歯科医師 杉崎 由美子氏 ~歯科医師として、シンガポールへ~

インビザライン矯正は、米国で臨床導入が始まって以来、世界で400万人以上が利用している治療法です。コンピューターの画面上でシミュレーションした治療の推移を患者さんに説明でき、各段階で使用するマウスピースが3Dプリンターで作られていく点は画期的だと感じます。治療する側としてだけでなく、私自身もこの矯正を経験したことで、患者さんへの理解も深まりました。この分野の専門性を高めたことに、大変大きなやりがいを感じています。

人との出会いこそが

子ども時代は虫歯で泣かされ、歯医者は大の苦手でした。そんな私がこうして歯科医師になり海外で働いていることは、その時々で人生の方向を左右する人との出会いがあったからです。

まず、開業歯科医であった叔父の存在があります。幼い頃から白衣を着てプロフェッショナルとして働く姿を遠目に見て憧れを抱いたものです。そして高校時代、進路を決める大切な時期に出会ったクラスメートたちです。お昼休みの時間を全て受験勉強に使うことを約束し、1分も無駄にせずとにかく勉強に励みました。お弁当は10分の休み時間に食べてしまったほどです。励まし合う同志がいたからこそ、念願の歯学部合格を果たせ、夢を実現することができました。大学時代の同級生から聞いた留学の体験談からは世界の広さを実感し、その衝撃は海外で活躍する起爆剤となりました。そして何より、現在のパートナーである英国人歯科医師との出会いが、私をこのシンガポールに導いてくれたのです。

今後はより広い世界観を持ち、更にステップアップすることを目指しています。治験などを重ね必要な勉強をし、世界中どの国でも歯科医師として活動の場を広げることが現在の夢です。このような夢を抱くようになったのは紛れもなく、いろいろな人との出会いで刺激を受けたからだと思っています。

女性が「プロフェッショナルになる」ということ

歯科医師 杉崎 由美子氏 ~歯科医師として、シンガポールへ~

日本の文化では、気配りなど女性にだけに求められる暗黙のルールが根強く存在しますが、シンガポールや欧米諸国では、プロフェッショナルである限り男女は常に対等です。道のりは予想以上に長く、資格取得後も日々の研鑽や勉強は続き、高いプロ意識が求められるのは事実です。しかし女性として、海外で働く者として、プロフェッショナルな資格を保持していることはとても有利であり活躍の場は大いに広がると実感しています。

過去には、医療に向き合う価値観がシンガポール人経営者と私で異なり、苦しんだこともありました。しかし、9年の歳月を経て理解し合い、今では私の意見を尊重してくれるようになりました。

プロでいることは、性差を超えること、そして努力し続けることです。その姿勢は、どの国であっても変わらないと思います。私は日本を離れたからこそこうして信念を貫き、自分の道を邁進することができるのだと思っています。

患者さんから学ぶこと

矯正治療を始める方の共通点は、将来のために「前向きな意思と目標」を持っていることです。治療後は、笑顔になり身のこなしや考え方まで変わったとお話しくださる方もたくさんいます。 そんな患者さんたちを尊敬し、私もこの地でポジティブに生きたいと思っています。見えないところでも自分を磨き、そのためには努力を惜しまない、そんな自分でありたいと思います。

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