特集記事
中等教育の挑戦 茗溪学園中学校高等学校 ~世界で活躍できるグローバル人材育成のために~

グローバル化の波が押し寄せる現代。世界で活躍できる人材を育てるために、日本の中等教育のあり方も大きく変わろうとしています。日本が世界から取り残されないよう、次世代の教育に奮闘する各校の取り組みや独自のプログラムを、現場からシリーズでご紹介します。

 茗溪学園は、現在の筑波大学の同窓会である「茗溪会」が設立母体で1979年に創立されました。国際的な科学の街「筑波研究学園都市」の地の利を生かし、創立以来海外生受け入れ校として帰国生の支援に取り組むと共に、国際教育に力を入れてきました。今後は更なる進化をとげ、日本式の教育と海外の良質な教育の融合を目指す挑戦を続けていきます。

文部科学省指定「 スーパーグローバルハイスクールアソシエイト」校

 文部科学省が、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを育成する高等学校等に指定する「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」のアソシエイト校※に指定されました。国内外の大学や企業、国際機関等との連携により、 以下のような質の高い教育内容に取り組んでいます。
※SGH事業をより多くの学校に広めていくために、SGH事業を踏まえたグローバ
ル・リーダー育成に資する教育の開発・実践に取り組む高等学校等が指定された。

★ 筑波大学プログラムへの参加
 SGHアソシエイト校に指定されたことで、筑波大学と下記の連携プログラムに参加することが決まっています。
◎ Appropriate Technology(適正技術講座)
 途上国の人たちが生活で必要なことを見いだし考案したものを実際に提供する、「イノベーション起業」を促進するプログラム。英語での講義。
◎ ヒューマンバイオロジー学位プログラム
(博士課程教育導入プログラム)
 全学部生が受講できる「国際リーダー育成」を目的とした内容。

★ その他、国際交渉力強化プログラム、英語模擬国連への参加
 国際問題の理解を深め、会議の作法、ディベートの戦術を英語で学ぶ。授業ではディスカッション形式で実践に重きをおく。

時代に応える革新的なプログラム

★ 国際バカロレア ディプロマプログラム(IBDP)実施予定
 (2017年度開始予定)
 帰国生の受け入れの歴史は古く、毎年世界中の国々から帰国した生徒が入学しています。今後は国際バカロレアも導入し、英語によるディプロマプログラムと同時に日本語のデュアルランゲージディプロマプログラムを開講することで、日本式世界水準のプログラムを提供します。

★ 英語による中学Gコースの新設(2015年度より)
 2015年に開講の「中学Gコース」では、「理科」の授業をネイティブ教員による英語で行うなど主要教科に英語を導入することで、日本の教育の良さを崩さず世界で通じるスキルを身に付ける挑戦をしていきます。

★ SAT、APテストセンター 認定校 
 SAT※の試験は年に2回実施。また「APサイエンス」を年に6回開催。米国の「AP(Advanced Placement)テスト※」を受験する高校生に対して発展的な内容の講義を展開しています。筑波大の教授や当校の教員が英語のテキストを使用し、解説をします。日本では、インター校以外で唯一の試験会場です。

※SAT:主にアメリカの大学を受験する際に必要な統一学力テスト。
※AP:アメリカ式教育システムの高等学校で、成績上位者の高校生が大学の単
位を取得することができるクラスのこと。アメリカの大学では教養課程のクレ
ジットとして認められている。

茗溪学園の特徴

★ 文部科学省指定 「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」「コアSSH」
 SSHに認定され3年が経過し、文部科学省によるその取り組み状況の中間評価では、研究開発の狙いを十分に発揮しているという最上位の評価を受けています。
 取り組みと成果
  ◉ 実験の場を大幅に増やす。
  ◉ 結果の出やすい実験だけでなく、基本スキルを訓練するための実験も導入。
  ◉ 理系進学者の増加。
  ◉ 全国レベルのコンテストや国際大会での受賞

高校生を対象にした科学技術の自由研究コンテスト「高校生科学技術チャレンジ(JSEC)」にて当校の生徒による2作品が入賞。2014年5月に米国で開催された国際大会ISEFに派遣されました。

  ◉ 高校生が小学生に実験の指導をする「ジュニアサイエンスキャンプ」に向けては、事前研修としてJAXAの宇宙飛行士を指導する外国人講師による「英語プレゼン講座」やJST(科学技術振興機構)の研究者による「科学プレゼン講座」を受講。とても貴重な機会が与えられ大きな成長の場となっている。

★ 部活動が盛んな文武両道の学校
 芸術・体育も全国レベル。文武両道を目指し、高い知識と技術を有する教師が指導にあたっています。

★ Study Skills を評価し伸ばす
フィールドワークや実体験、調査活動を通じて自主的に思索し行動する能力を段階的に伸ばします。高校2年時に取り組む個人課題研究(必修)は1年間にわたり生徒自身が考え、調査・研究を行いその集大成となっています。

School Data

【全校生徒数】 共学1,450人
【一クラス生徒数】 34~45人
【入学金 】250,000円
【年間授業料】(税込) 390,000円
【寮】 有
【寮年間費用(税込)】 986,500円(食費、水道光熱費込)
【帰国生割合】 15%
【帰国生特別クラス】 英語・国語で開講
【英語習熟度別クラス】 有
【帰国枠の有無】 有
【編入試験】 6月・7月・9月・10月・12月・2月・3月

茗渓学園中学校・高等学校

「寮生活の一日」 密着取材レポート

 茗溪学園の学寮では現在116 名(全生徒の8%)の生徒が入寮し、さまざまなバックグラウンドで育った生徒たちが集団の中で精神を鍛えながら人間関係を育み、協調性とコミュ ニケーション能力を身に付けています。
 情報力が勝負の時代に、携帯電話やテレビ禁止など「あえて不便な環境に身を置く」ことで育まれる人間力とは、どのようなものでしょうか。編集部が密着取材をしました。

◎1日のスケジュール

起床・朝の活動  規律正しい生活のために
 朝は散歩などの軽い運動や草刈り・掃除などの作業をします。また毎週1回、朝6時半から女子は剣道、男子は剣道または柔道の稽古が行われます。

 毎年2月には恒例行事として、女子は剣道の「寒稽古」、男子は「突寒ラグビー」で 集中的に練習に励みます。この1週間は、早朝5時半から稽古が始まり厳しい寒さの中で、どんな困難にも負けない強い精神力を鍛えます。

朝食
 生徒たちは食堂で朝食をとります。

登校・授業・部活など  放課後の過ごし方
● 部活に励む : 通学時間がないため、全力で打ち込むことができます。部活に所属する生徒は多く、帰寮途中で夕食と入浴を済ませる等、効率の良い理想的なライフスタイルです。
● 外出する : 門限を守れば、近くのスーパーに買い物に行ったり、休日は友人の自宅に行っ たり自由に過ごすことができます。
● 習い事をする : ピアノ、バイオリン、フルート、ギター、声学などの「音楽教室」は学校内で受講することが可能です(有料)。

夕食・入浴
 栄養面を重視したメニューは豊富で、生徒たちの楽しみの一つです。

沈黙の時間  ~日々の「学習習慣」を確立~
 毎晩19:30から「沈黙の時間」があり、自学自習に励みます。テレビや携帯電話の誘惑がなく、情報源として新聞を活用するなど活字を読む機会が自ずと増えます。学習に集中できることが、寮生の学力向上の礎となっています。

寮補習
 門限は18 時でその後の外出は禁じられているため、塾に通うことも制限されています。そのため中学生には週2回、勉強を個別に指導する先生が巡回します。また高校生は有料で英語・数学の補習を受けることができます。 

施設紹介

★ 部屋 2~4人部屋 ルームメイトは学年の異なる縦割り制。年に3回部屋替えあり。
★ 食堂(完全給食) 食事は決められた時間内に、各自で自由にとることができる。 アレルギー・病人食にも対応。栄養バランスの良いメニューが並び、季節を取りいれた献立にも工夫が見られ、休日も3食提供される。
★ 浴場 食堂の2階にあり、放課後から19:20まで利用可能。
★ 各フロアに共用パソコン、 インターネット回線
パソコンは1フロアに4台(利用時間・利用可能サイトの制限あり)。
★ 洗濯室 洗濯は各自が行う。
★ 書物 新聞(朝日・読売・ジャパンタイムズ・朝日中学生ウィークリー)、アエラなど多数。新聞を読む習慣が付いたと好評。
★ 休日 休日も自由に寮内で過ごすことができ、食事も3食提供。

【ハウスマスター(学寮長) 藤嶋先生】


 寮生活は規則があり、自分のことは全て責任を持って行動しなくてはなりません。なぜそうする必要があるかをわかるまで説明し、その努力が全て自分の成長につながる大切なことだと理解してもらえるよう心がけています。
 携帯電話やテレビ禁止というあえて「不自由な環境」にすることで、人と直接関わりながらコミュニケーションを重視する感性や責任感、周囲への感謝の気持ちが 生まれ、人として一回り大きく成長すると確信しています。卒業生の多くも「かけがえのない仲間」に巡りあえたことが一番の宝だと言います。苦楽を共にしたことで 育まれる強い仲間意識を持った友達の存在は、人生の宝です。寮生活は自立を促すとても理想的な環境で、実社会に出る前に人として責任感をもって行動する訓練にもなっています。 

〈 中3 大薗 拓未さん 〉


 ラグビーがやりたくて茗溪に入りました。通学時間がないため、思い切り部活に励むことができます。寮生活は TV も携帯電話もありません。入寮当時は辛かったですが、今では余計な雑念から断ち切られて勉強に集中でき、自宅よりも学習しや
す いと感じます。

〈 高2 永山 瑞生 さん 〉


 1年間のアメリカ留学後、家族の転勤がきっかけとなり高2から入寮しました。はじめは早朝の活動が辛かったり、他の人への気疲れがあったりしましたが、それを払拭する楽しさがあります。
 規則正しい生活のため授業中に眠くなったりせず、成績も上がりました。友達とちょっとした時間に問題を出し合うなど、無理なく学習がはかどる理想的な環境で す。

【中3男子 母 小野久乃様】
 自宅からの通学では、自分の好きなことだけにのめり込んで自己中心的に育ってしまうのではと危惧し入寮させました。私自身が卒業生で、寮生の素晴らしさも熟知していました。寮生活では、異なる学年との交流もあるため、社会に出てから求められるタフな精神力や思いやりの心、会話力も培われ、家庭では教えることが難しい「生きる力」が育まれていると感じます。子供たちとの距離をうまく取りながら素晴らしいご指導をしてくださる先生方に、心より感謝しています。 

編集部より

 欧米の名門校では、「寮生活」は規律や社会性を身につける場で、一流の大人になるための登竜門として位置付けられていると聞きます。取材では、会う生徒全員が元気に挨拶をしてくる礼儀正しさに、清々しさを感じました。どの生徒も生き生きとした表情で寮生活を送っている様子が印象的でした。理想的な「生活と学習の場」では強い仲間意識が生まれ、どんな時代でも力強く生き抜く人間力が育成されている様子を垣間見た一日でした。

茗渓学園中学校・高等学校

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