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大学の挑戦  大阪大学 ~真の国際化を目指して~

 閉そく感が強く漂う今の日本。この一因として日本の「国際競争力の明らかな低下」が挙げられています。世界と対等に渡り合える人材の育成は日本にとって喫緊の課題です。教育分野での開国、日本の内なる国際化のために、最高教育機関である大学が新たな挑戦を始めています。
「世界で活躍できる人材」の育成・獲得に向けて各大学が取り組む国際化戦略とは何か、シリーズでお届けします。

世界を目指し、世界が目指すグローバル大学へ

 大阪大学は、1838(天保9)年に緒方洪庵が開いた蘭学塾・適塾を源流のひとつとしており、開学当初より国際性を強く意識した大学です。その精神は今も脈々と受け継がれ、来世紀においてひときわ輝く世界屈指の総合大学を目指し、歩みを進めています。本稿では教育に関する取り組みを中心に、その一端をご紹介します。

学部英語コース

 2009 年、本学は文部科学省「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業(通称グローバル30 またはG30)」(※1)に、東大など他の12大学と共に採択されました。同事業は、わが国高等教育の国際競争力強化を目的としたもので、教育の質を確保しつつ、国際的に活躍できる高度な人材を養成することが求められています。

 採択により、本学は2010 年インターナショナルカレッジを開設し、わが国の国立大学としては初めて、英語による授業のみで学位取得が可能な2つの学部コースを開講しました。化学・生物学複合メジャーコースと人間科学コースがそれで、両コースとも年々応募者の数が増え続けています。

 G30 は当初、留学生数の増加を大きな目的のひとつとしていましたが、「国際的に活躍できる高度な人材を養成すること」が同事業の最終目的なら、学生の国籍は無関係との立場から、本学では当初より日本国籍を有する学生も区別なく受け入れています(※2) 。当然のことながら、得られる学位も既存のものと何ら変わりはありません。

 開講から満2年を経た今、在学生はどのようにこれらのコースを評価しているのでしょうか。最近の学生アンケートから見てみましょう。まず、肝心な教育内容のレベルについては、「非常に高い」「高い」という回答がほぼ8割に達しています。さらに、母国の人に本学を薦めるかという問いにも、同じく9 割強の学生が「是非薦める」または「薦める」と答えています。

海外著名大学との連携・協定

 本学の学生には、在学中、様々な国際的体験を積めるような制度が準備されています。その一例が海外への短期(派遣)留学と、本学への短期留学生の受入れです。大阪大学は日本学生支援機構が実施する「ショートステイ・ショートビジット」事業(※3) において、2011 年度には25 プログラム598 人分が、さらに2012年度にはそれを上回る27プログラム623 人分が採択されており、いずれも国立大学としては全国第1 位です。米国のコーネル大学、中国の北京大学など、世界の99 もの一流大学(学部間協定では371 大学・学部)と協定を結んでいる本学ならではの高い実績だと自負しています(※4) 。

大学院英語コース

 大学院の英語コースについても短く触れておきましょう。まず、上述のG30 では、大学院でも英語2コースが整備されました。国際物理特別コースと統合理学特別コースがそれです。物理、生物、化学それぞれの分野において、国際的にトップレベルで活躍できる人材の養成が目標です。また、大学院レベルではこれ以外にもフロンティアバイオテクノロジー英語特別プログラム、船舶海洋工学英語特別コース、“Engineering Science 21st Century” プログラム、量子エンジニアリングデザイン研究特別プログラムの4 つの英語によるコースがあり、いずれも最先端の教育・研究内容を誇っています。

大阪大学未来戦略

 大阪大学ではこれ以外にも、カリキュラム改革による学生の外国語運用能力向上、海外の高校を対象とした指定校制度導入、学部段階での留学生受入れの増加など、大学のさらなる国際化に向けた様々な方策を検討中です。詳しくは大学HP「大阪大学未来戦略」をご覧ください(※5) 。

大阪大学インターナショナルカレッジ教授・副カレッジ長 大西好宣

※1… 当初の呼称は「国際化拠点整備事業(グローバル30)」
※2… 但し、他の留学生に対するものと同じく、出願資格としてある一定の条件は課されます。
※3… 日本の大学等が実施する3か月未満の留学生受入れ、または3か月未満の学生派遣のプログラムに参加する学生を対象とした奨学金
※4… 数字はいずれも2012 年10 月1日現在
※5… http://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/president/president_message/files/future_strategy_2012_2015.pdf
※本文は2012年11月23日現在の情報です。

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