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Spring創刊5周年特別企画 意外? それとも周知の事実? 教育分野での課題が多い日本 皆さんは、どう思いますか?「日本の教育の現状」

教育は「国家の根幹をなす」と言われます。戦後の教育が日本の教育水準を高め、日本人は先進国の中でも高い基礎学力を維持しています。しかしその一方で、経済発展や社会構造の変化に伴い、教育の格差や子どもの学ぶ意欲の欠如など、新たな教育の問題を抱えています。

Springでは創刊5周年特別企画として、知っているようで知らない「日本の教育の現状」について、ニッポン教育応援団の竹田氏にお話をうかがいました。この機会にご家族の団欒の場で、お子さまと共に改めて理解を深め、話し合ってみませんか。

  • 自己肯定感は世界最低レベル
  • いじめや引きこもりは増加傾向
  • 1クラスの生徒数は世界最高レベル
  • 発達障がい児の個別指導は1割のみ
  • 日本の教員は世界一多忙

ニッポン教育応援団 竹田 潤氏

東京大学農学部卒業後、農林水産省入省、2014年より現職。

ニッポン教育応援団 竹田 潤氏 ニッポン教育応援団 竹田 潤氏

社会で求められるスキルと日本の教育で育めるスキルとの差に危機感を感じ、教育への変革を進めるために、霞が関を飛び出し活動を開始。一般財団法人世界で生きる教育推進支援財団、ニッポン教育応援団の立ち上げに参画し現職。

 日本の教育現場はさまざまな問題を抱えています。まず、私たち大人がそうした問題を知り、そして、子どもたちのために声をあげていくことが求められています。教育改革を今進めなければ、世界の中で日本だけが取り残されてしまいます。かつてないほどの少子化の時代だからこそ、子どもたちが希望を持てる社会を創っていくべきではないでしょうか。

子育てや仕事で忙しい世代が中心となって声をあげ、安心して子どもを育てられる、子どもたちが質の高い教育を受けられる、そうした社会になることを訴えていく必要があると切実に思っています。

日本の子育て・教育予算

 年金、医療、福祉などの社会保障給付費は年々増え続けています。しかし、保育園や育児休養給付などの子育て関係費が占める割合は、はわずか5%に過ぎません。過去40年ほど、ほとんど増えていないのが現実です。

社会保障給付費のうち子育て関係費はわずか5% 社会保障給付費のうち子育て関係費はわずか5%

 国家予算に占める教育財源の割合はどうでしょう。先進国が加盟するOECD34ヵ国の中で、日本はその割合が最低です。

日本は教育財源の割合はOECDの中で最低 日本は教育財源の割合はOECDの中で最低

学校での支援の問題

個別の支援が必要とされる発達障がいの子どもたちは63万人以上いると言われますが、支援を受けているのはわずか9.9%で、その9割以上は個別の支援を受けていません。

不登校の子どもたちは12万3千人いると言われていますが、そのうち、支援も教育も届いていない子どもは10万人以上いる可能性があります。高校を含めると、約18万人の子どもたちが不登校になっているのです。

不登校の小・中学生のうち 支援も教育も届いていない子どもが10万人以上いる可能性 不登校の小・中学生のうち 支援も教育も届いていない子どもが10万人以上いる可能性

今の日本の学校環境

少人数の双方向授業やアクティブラーニングが推奨される一方で、日本の学校は1クラスの定員が40人と、世界各国と比べて多人数の子どもたちが在籍しています。1クラスあたりの人数が多くなるほど、子どもたちの学習の理解度にも差が生じ易くなるのです。

世界と比べて日本の子どもたちは1クラスに詰め込まれている 世界と比べて日本の子どもたちは1クラスに詰め込まれている

日本の若者の「自己肯定感」の低さ

内閣府の発表によると、日本の若者は諸外国と比べて、自己を肯定的に捉えている人の割合が低く、「自分に誇りを持っている・長所があると思っている」割合も低い状況です。特に高校生では「自分に自信がない」人の割合は、8割にも及んでいます。

日本の教育・社会において、何が原因で子どもたちに「自分に自信を持ちにくい」と思わせる結果になっているのか分析は容易ではないと思います。しかし、文化・慣習では謙遜や遠慮を美徳とすること、学校教育では「自由な発言が奨励されていない授業形式」や「得意な部分を伸ばすよりも、総合的に『苦手をなくす』ことに重点が置かれている指導」などが少なからず影響しているのではないかと想像します。また家庭教育でも「自信を持って物事に取り組む」といった積極性より「他人に迷惑をかけない」といった謙譲の精神に重きをおく傾向もあると思います。

平成26年内閣府の子ども・若者白書においても、日本の若者に「自分が政策に影響を与えられると思うか」との質問に、「はい」と答えた人が約3割と非常に低かったという結果があります。時代の変革期である今こそ家庭や学校、そして地域が一体となって子どもの教育を見直す環境づくりを進める好機といえましょう。

高校生のうち実に約8割が自分に自信を持つことができていない 高校生のうち実に約8割が自分に自信を持つことができていない

教育費の私費負担の問題

日本は教育費に占める私費負担の割合が高い、つまり「親が教育費を負担することが当たり前の社会」と言えます。特に就学前段階では突出しています。日本は基礎学力が高いと言われますが、教育の公費比率が高い諸外国と比べ、比率の低い日本では、私費負担の割合が高くなるのはやむを得ないことです。この事実は、貧富の差が教育の格差に繋がることを意味しています。

日本は教育費に占める私費負担の割合が高い(出典)OECD「Education at a Glance(2009)」 日本は教育費に占める私費負担の割合が高い(出典)OECD「Education at a Glance(2009)」

国家の発展は、次世代を担う子どもたちに託されていると言っても過言ではないでしょう。より多くの子どもたちが質の高い教育を受けることで、日本の未来が変わります。子育てや教育の充実について、今こそ皆さまがそれぞれの立場で考えて意見を発信することが重要だと考えます。ご家庭から、企業から、教育機関から小さな一歩を踏み出していきませんか。

竹田氏からのメッセージ

ニッポン教育応援団では、「子どもたちのための教育財源を倍増しよう!」をスローガンにChangeという電子署名サイトで皆さまの署名を募集しております。どなたでも簡単にサイト上でご署名いただけます。皆さまの声をお待ちしております。また、Facebookでは、応援団メンバーの募集も行っております。ニッポン教育応援団は子どもたちのための社会を創ろうと集まった有志の会です。応援団メンバーとなって、一緒にこの活動を盛り上げていきましょう。

詳しくは以下のページをご参照ください。
ウェブサイト http://kyouikuouendan.org/
Facebook https://www.facebook.com/kyouikuouendan/
署名サイト https://www.change.org

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