シンガポールは2002年からの「Global School House」構想を背景に、世界のトップ大学の誘致と積極的な留学生の受け入れにより、「教育のハブ」としての地位を固めました。 現在は「Home for Talent(人材の本拠地)」※1戦略のもと、優秀な人材とリーダー育成の観点から、教育機関と企業内大学、政府が相互に連携しています。
留学生率が全体では16%、理工学分野においては26%※2と真に国際化が進む当地シンガポールの大学進学について、Spring編集部が徹底取材しました。
※1 EDB:http://www.edb.gov.sg/
※2 2013年7月時点。現地大学および、理工学分野においてはNUS、NTU、SMUの3大学の割合。
シンガポールの主な大学
※各用語については、「海外大学進学特集 第1回基礎知識編」をご参照ください。
https://spring-js.com/global/3405/
※各情報は2014年5月現在Spring調べによります。詳細は直接お問い合わせください。
シンガポール国立大学 National University of Singapore (NUS)
1905年に創立した最も歴史のある大学です。16学部55の学士課程を開講し、世界40ヵ国のトップ大学と300の交換留学制度を設けています。2013年度のQS 世界大学ランキングでは24位として上位の評価を受けています。 全学生数は37,000人に上ります。なお、全学部生27,391人のうち、外国籍学部生の割合は15%を占めています。
【創立】 1905年
【学生数(学部のみ)】 27,000人以上
【外国籍学部生の割合】 15%
【所在地】 21 Lower Kent Ridge Road Singapore 119077
【Website】 http://www.nus.edu.sg/
【年間授業料】 助成金を受ける場合 S$15,700 ~
助成金を受けない場合 S$28,600 ~
※学部・専攻により異なるため詳細はお問い合わせください。
【出願期間】 10月~ ※詳細は直接ご確認ください。
イェール・NUS大学 Yale- NUS College
300年の歴史を誇る米国のイェール大学とNUSによる、シンガポール初のリベラルアーツカレッジとして2013年に開学しました。イェール大学と同様に全寮制で、 2年間の教養課程の後、 14の専攻から選んだ専門分野に進みます。 現在の一期生は25カ国から150人が学んでおり、最終的には大学全体で1,000人の学生を迎える予定です。外国籍学生率は40%に維持され、世界的にも「最高水準の国際性」を持つ大学と言えます。
【創立】 2013年
【学生数(学部のみ)】 約1,000人(予定。現在は一期生のみ150人)
【外国籍学部生の割合】 40%(27ヵ国)
【所在地】 6 College Ave East, #B1-01, Singapore 138614
(2015年末までに全キャンパス完成予定)
【Website】 http://www.yale-nus.edu.sg/
【年間授業料】 助成金を受ける場合 S$30,000
助成金を受けない場合 S$45,840
【出願期間】 11月、1月、4月と各国教育システムに応じて3回
※詳細は直接ご確認ください。
南洋工科大学 Nanyang Technological University (NTU)
1991年創立の研究集約型の大学です。教育省が調査研究に対して予算配分する助成金※では、同大学が最多の助成金を受けています。比較的新しい大学でありながらも、2013年度はQS 世界大学ランキングで41位、創立50年未満の大学としては同調査で世界2位の評価を得ています。広大なキャンパス内に約23,500人の学部生が学んでおり、世界80ヵ国からの外国籍学生はおよそ16%に上ります。
※シンガポール教育省が定めるTier2Grant Systemと呼ばれる助成金
【創立】 1991年
【学生数(学部のみ)】 約23,500人
【外国籍学部生の割合】 16%(80ヵ国)
【所在地】 50 Nanyang Avenue Singapore 63979
【Website】 http://www.ntu.edu.sg/
【年間授業料】 助成金を受ける場合 S$15,700 ~
助成金を受けない場合 S$28,680 ~
※学部・専攻により異なるため詳細はお問い合わせください。
【出願期間】 10月~ (IBDPやその他の国際資格の取得学生の場合)
※詳細は直接ご確認ください。
シンガポール経営大学 Singapore Management University (SMU)
2000年に国際的かつ世界水準の研究機関として創立されました。海外での研修プログラムには84%の学生が参加しています。キャリア構築にも重点を置き、在学生には10,000社以上のインターンシップの場が提供されています。92%という就職率や相対的に高い初任給※などの実績を出しています。学部生数は約7,300人、うち12%が世界27ヵ国からの外国籍の学生です。
【創立】 2000年
【学生数(学部のみ)】 約7,300人
【外国籍学部生の割合】 12%(27ヵ国)
【所在地】 81 Victoria Street Singapore 188065
【Website】 http://www.smu.edu.sg/
【年間授業料】 助成金を受ける場合 S$22,200 ~
助成金を受けない場合 S$37,830 ~
※コースにより異なるため詳細はお問い合わせください。
【出願期間】 10月中旬~ ※詳細は直接ご確認ください。
編集部が聞きました
「人生の転機となったNUSでの学び」 林 志洋さん
(東京大学3年~4年次に1年間NUSに交換留学。NUSでは政治科学を専攻し、現在は東京大学公共政策大学院修士課程で学ぶ。一般社団法人Bizjapan代表理事。)
Q : 交換留学の地にシンガポールを選んだ理由は。
A : 国際関係を専攻しており、特に日中関係に興味があった私は、中国と日本から離れた地で客観的に2国間について学びたいと思いました。また、成長著しい東南アジアの地であるシンガポールで学ぶことに関心がありました。
語学は好きでしたが、日本で教育を受けた一般的な学生の英語力で来星しました。NUSには英語を母国語としない外国人学生も多かったので、どんな英語でも自分の考えが論理的に伝わればよいのだ、と実感しました。 東京大学の教養学部で中国語を履修したので、シンガポール人の学生とは中国語で話すこともあり相互理解が深まりました。外国語が流暢に話せるということよりも、論理的な思考力が肝要だと感じました。
Q : NUSの印象は。
A : NUSの学生達の勉強量は日本の一般的な大学生の比ではなく、みな非常に熱心に学んでいます。シンガポールでの就職では大学の成績が大きく影響するため、学生には点数主義のきらいが強かったと言えるでしょう。また、学部を超えた受講ができたので、Japan Studiesの講義を受講しました。歴史観を世界の学生たちと有意義に論じられたことが印象的でした。
Q : シンガポールで学んだことがその後どのように影響しましたか。
A : 私は、海外の大学の方が優れていると言うつもりはありません。ただ、日本の大学と同じように一つの選択肢として考えることをお勧めしたいです。日本の大学の方が自由な時間が多い分、自分がしたいことに真剣に取り組んだり、教授に働きかけて研究を深められたりできるのは利点になると言えます。
私の場合はシンガポールに留学したことが大きな転機になりました。当地の報道や論調で日本が正しく理解されていないと感じることもありました。そこで真の相互理解を目指して国内外の学生が交流するための社団法人を発足しました。
編集部が聞きました
「イェール・NUS大学に合格するまで」 一期生 今村 ちはるさん
(福岡インターナショナルスクールに13年半在籍)
Q : 高校で学んだカリキュラムは。
A : 国際バカロレア・ディプロマ・プログラム(IBDP)のバイリンガルディプロマを履修しました。
Q : Yale-NUSへの志望理由は。
A : イェール大学の出願を調べている際にYale-NUSについて知り、パイオニア精神を持つ国際的な学生には最適な大学だと思いました。
Q : エッセイや面接では何を心がけ、伝えましたか。
A : 自分自身のバックグラウンドや将来国際的に活躍したい点を自分らしく表現しました。また、東日本大震災におけるボランティア活動などに情熱をもって取り組んだことや、生徒会でのリーダーシップ、自分の夢を具体的に伝えるようにしました。
Q : 親御さんや先生はどのようにサポートしてくれましたか。
A : あらゆるサポートのお陰で今の私があると思います。中でも母が幼少期から日本語と英語の二言語環境を整えてくれ、進路を決定する上でも全面的にサポートしてくれました。数学の先生やアドバイザーの先生方が後押ししてくださったことが、合格につながったと思います。
Q : Yale-NUSでの学生生活はいかがですか。
A : 現在は全学部共通の教養課程を幅広く勉強しています。リベラルアーツを幅広く学ぶことで今後の研究や価値観の基礎が作られると思います。教室外でのフィールドワークも奨励されています。古典文学の講義の一貫として訪れたギリシャでは素晴らしい経験を積むことができました。今では学びと生活を共にするクラスの仲間を家族のように感じています。
取材協力:
シンガポール教育省(MOE)、シンガポール経済開発庁(EDB)、シンガポール国立大学(NUS)、
イエール・NUS大学(Yale-NUS)、南洋工科大学( NTU)、シンガポール経営大学(SMU)
編集部より
取材中には「もっと日本人の学生には応募して欲しい」という大学側の前向きなコメントもありました。編集部では特に以下の3点に注目し、シンガポールを進学先として一考する価値があると思いました。
助成金と就職義務とは
NUS、Yale NUS、NTU、 SMUなどの国立大学では、日本人を含む外国人にも助成金を付与しており、その条件として卒業後にシンガポールで3年間の就職を義務づけています(※諸条件・詳細はご確認ください)。 日本を含めた他国でのキャリア構築と比較検討が必要です。
外国人にも門戸を開く奨学金
各大学には各種奨学金の情報が公開されています。学外でも日本人およびASEAN諸国の学生を対象としたGSK奨学金(Dr. GohKeng Swee Scholarship)などがあります。
出願条件
外国籍学生の出願条件にはTOEFL、IELTS、SATなどが含まれる傾向があります。英語力は必須であるものの、選考にあたっては諸外国の教育システムの違いが熟慮され、特定の国が不利になる印象はありませんでした。高校の成績が第一の大学もあれば、成績だけでなく学生の資質や面接などを多面的に評価する大学もありました。