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この人からエール

世界的投資家 Jim Rogers 氏

2020.03.25

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日本のより良い未来のために

はじめに

私は、米国のアラバマ州の片田舎で5兄弟の長男として育ちました。「地元では何もやりたいことはできない、もっと広い世界を見てみたい」という強い思いで懸命に勉強し、人生の選択肢を広げてきました。投資家として成功を収めるまでに、常に興味を持ち続けたことがあります。それは「世界はどのように変遷し、国々はどのように発展し衰退するのか」ということです。歴史を多角的に学び世界中を旅したことで、時代の変化を肌で感じこの眼で見極められるようになりました。歴史上では突然起こったように見えることでも、実はそのずっと前から兆しがあったという史実は決して少なくありません。変化の激しい現代こそ、このような前兆を見極め、時代の変化を読み取る見識と洞察力が必要だと改めて感じています。

私は、世界中から愛され称賛される文化や伝統、技術と精神を併せ持つ日本という国が好きで、それゆえにかつては世界第2位の経済大国にあった日本が、国際競争力という面で衰退の一途をたどっている現実を大変残念に感じています。さまざまな問題に直面する日本の次世代を担う皆さんに、私自身の経験を踏まえ心からの応援メッセージを贈ります。

世界的投資家 Jim Rogers 氏

日本への提言

私は大の日本好きで、これまで数え切れないほど日本を訪問しています。しかし現在の日本を取り巻くさまざまな状況を見ると、その将来は決して明るいものではありません。日本と世界の社会経済状況、人口動態や歴史、文化、政府の政策などを幅広く理解した上で、日本がこの危機を乗り越えるための提言として、昨年『日本への警告』という本を上梓しました。著書の中でも触れていますが、自国のことを真に知るためには国内にとどまっていてはいけません。国を出て世界を見てこそ初めて、世界の中の日本の立ち位置がわかり自国を知ることができるからです。

少子高齢化が急速に進む日本は、労働力不足に悩む多くの国がそうしてきたように、移民を受け入れ、女性を重用していく必要があります。制度改革もようやく進み始めて転換の兆しも見えてきましたが、長きに渡り移民を受け入れてこなかった日本社会ではさまざまな軋轢が生じています。女性の活躍が叫ばれるようになって久しいにもかかわらず、まだまだ伝統的な価値観に縛られ、能力のある女性が十分に活躍できていない現実を残念に感じています。

皆さんはすでに海外で暮らされており、自分の国をより客観的に見つめ、国が直面している喫緊の課題や、他国との比較から改善すべき点などに気づいていることでしょう。国全体が従来の社会通念や価値観を打破することが必要な中で、海外で多様な価値観を学んだ日本のお子さんたちは、必ずや日本に活気をもたらし必要な変革の原動力となるに違いありません。ぜひ愛する母国、日本のために、まずは皆さん自身が世界情勢を知る術を身につけ、勇気ある一歩を踏み出し日本のより良い未来を築いてください。

歴史を学び、旅をしよう

次世代を担う皆さんには、周囲の意見や伝統的な価値観に縛られず、どんなことでも「自分の頭で考え、自分の目で見極める」力を養っていただきたいと思います。自分で考えて決断する力を身につけるためには「歴史を学ぶこと」、そして「実際に世界を旅すること」が最も有効な方法だと断言することができます。

私は世界一周旅行を2度敢行し、これまでに合計6大陸116ヵ国を巡りました。1度目はオートバイで2年、2度目は車で3年という歳月を費やした壮大なスケールの、まさに人生をかけた旅でした。私は旅をするにあたり、訪問する前にその国の歴史をじっくり学ぶことにしています。なぜなら、歴史を知らなければそこで実際に見る大半のことは理解できずに通り過ぎてしまうからです。歴史を学んでこそ、現地で実際に見る町の活気や人々の暮らしぶりからさまざまな事象や変化を読み取り「先を見通す力」を養うことができるのです。これは「人生」という旅路にも共通です。お子さんが将来どのような道に進むにしても、また、どんな変化の激しい時代であっても、こうしたアプローチで世界を見る癖をつけておけば、より豊かな人生を切り拓いていけると確信します。

私には16歳と12歳の娘がいます。娘たちには「家からできるだけ遠くの大学に進みなさい」と言い聞かせてきました。なぜなら、人は未知の世界で異なる文化に触れてこそ、己を知り、世界を知り、さらには故郷を知ることができるからです。もちろん、先行きのわからない未来は、誰もが怖いと感じるものです。しかしそのような時でも、世界の歴史を知り、実際にさまざまな国を見ておくことが、未来の変化を怖れることなく冷静かつ柔軟に、来るべく変化に備えて行動を起こせる原動力となります。

世界的投資家 Jim Rogers 氏

「情熱」を感じる道を信じて

子どもの頃から常々「外の世界が見たい」と思っていた私は、全米から優秀な学生が集まる名門イエール大学に進みました。両親は私に弁護士になることをすすめましたが、幸いにも私はロースクールに入る前に自分がやりたいことを見つけていたため、自らの意思で投資家の道を選びました。私自身の経験からも、「自分が一番好きなことをする」ことが幸福な生き方であり、成功に直結すると心から感じています。

自分が何に向いているのかがわからずに模索し続けている人は、少なくありません。自分のやりたいことを見つけられる絶対的な方法はありませんが、何に心が躍るのか、「情熱」を持って夢中になれるのかが一つのヒントになるのではないでしょうか。実際、私は投資が好きで、世界で何が起きているかをつぶさに調べるのが好きでした。私の中から込み上げるこの「情熱」に耳を傾けることなしに、投資家としての成功はあり得ませんでした。振り返れば、好きなことにとことん邁進した結果、こうして成功を収めたことは幸せだったと感じます。

もちろん、自分で選んだ道であっても、成功するまでの日々は決して楽しいことばかりではないでしょう。失敗をして落胆したり、嫌な仕事もこなさねばならなかったり、必ず「忍耐」も必要になります。私が知る限り、成功している人の多くは、忍耐強く決して諦めない人ばかりです。好きな道を極めるために、好きではないことを耐え忍ぶことができるかどうか、これが成功への鍵なのです。だからこそ、挑戦し続けられるだけの「情熱」がある本当に好きな道を、ぜひお子さんにも選んでいただきたいと思います。親御さんご自身がお子さんの道を決めるのではなく、お子さんが情熱を持って取り組める何かに出会えるように後押しすることで、お子さんの成長をしっかり見守っていただきたいと思います。

海外で暮らすご家族へのメッセージ

投資家として成功し、世界中をつぶさに見た私が13年前にシンガポールに移住したのは、他でもない、娘たちの教育、特に中国語をしっかり身につけてほしいという思いからでした。結果的に娘たちは、言語はもちろん、アジアの歴史や文化の理解も深めることができ、非常に良い選択だったと思っています。

近年、日本では「内向き志向」が続いていると聞きます。日本のパスポートは「世界最強のパスポート」と言われ、ビザなしで渡航可能な国の数が189ヵ国と世界一位です。しかし、2017年の統計によるとパスポート保有率は22.8%(アメリカは42%)と低く、その強みを生かしている人は少数だと言わざるを得ないでしょう。大変もったいないことだと感じます。子ども時代に海外経験を積んでいる皆さんには、ぜひ高いレベルで言語力を身につけ、異文化にも未来の変化にも恐怖心を抱かず、日本の内向き志向を打破するロールモデルになってくださると信じています。

日本には、守り続けていただきたい「良き伝統」がたくさんあります。例えば、何を作るにしても「高い品質」のものを作ろうという誠実な態度とこだわりです。日本人のこのような特質は、世界では非常に貴重です。高品質の代名詞「メイド・イン・ジャパン」に代わり、日本の製造業の多くが生産拠点を外国に移した今では、「メイド・バイ・ジャパン(日本人・日本企業監修のもとで作られるモノ)」を広めていくことを私は提唱しています。世界中で中流階級が増加する中、商品の品質やサービスの質へのこだわりや要求度はますます高まることでしょう。
日本人ならではの力を生かしたビジネスチャンスもたくさん出てくるはずです。海外で育ったからこそ「世界を見渡せる多角的な視点」と「日本人としての強み」の両方を兼ね備える皆さんの活躍に大いに期待するとともに、日本がそのような活躍を後押しするような社会となるように、心から願っています。

世界的投資家 Jim Rogers 氏

Jim Rogers(ジム・ロジャーズ) 氏

米国アラバマ州出身 。

Yale大学卒業後、Oxford大学にて修士取得。

10年間で4200%のリターンを生んだクォンタム・ファンドの共同設立者。

著書に「冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見」「人生と投資で成功するために 娘に贈る12の言葉」「日本への警告」など。

世界6大陸、116 ヵ国をバイクとベンツで走破し、ギネスブック記録を樹立。

2007年シンガポールへ移住。

二女の父。

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