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グローバル教育

企業からの声

三井不動産アジア 社長 松藤 哲哉 氏

2020.03.25

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海外にいる間にさまざまな経験をして「場数を踏むこと」が、大きな力になります。

その時には成長や学びの成果が見えなくても、無数の小さな冒険や「トライ&エラー」をしているので、結果的に「あと伸び」につながるのです。

グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。
企業の方からお話をうかがいました。

Q. 御社のご紹介をお願いします

三井不動産は、1914年に当時の三井合名会社の中に設置された「不動産課」が始まりで、その後41年に別会社「三井不動産(株)」として設立されました。戦後の住宅需要に合わせて住宅地や別荘地の開発を行い、高度成長期には中高層住宅の建設と販売事業を手がけるようになりました。68年には日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」が竣工し、その後次々とオフィスビルや大型のショッピングセンターの開発を行っています。日本各地の「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」などは、読者の皆さんにも馴染みがあるのではないでしょうか。

海外への進出は米国を中心に70年代から進み、オフィスビルやホテルを数多く手がけています。アジアでは72年にシンガポールで合弁会社を設立し、徐々に各国に進出しました。当地の開発事業としては2008年に「セントレジス・ホテル&レジデンス」が開業しています。バブル崩壊後の一時期は海外事業を減らすなど紆余曲折はありましたが、現在シンガポールの当社では、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、インドを統括して各地の開発事業に取り組んでいます。

三井不動産アジア 社長 松藤 哲哉 氏

Q. 御社の開発事業の特徴をお聞かせください。

当社は「都市に豊かさと潤いを」を企業スローガンとして掲げています。私たちが開発を行う際に大事にしていることは、ビルやマンションなどの「建造物を建てること」そのものではなく、そこを利用する「人」を中心に据えて考えることです。そこに住む人や、そのビルで働く人、そのモールに遊びに来る人などを最初にイメージします。それぞれの人がその場所で過ごす時間は、一人ひとりにとってはかけがえのない時間です。「ここで豊かな気持ちで潤いのある時間を過ごしてほしい」という願いこそが、私たちの全ての事業の原点です。このため、時代の嗜好やニーズに合わせることはもちろん、「例えばこういう過ごし方もできますよ」という未来志向のご提案をすることで、新しい文化を創っていくという気概で取り組んでいます。

例えば「東京ミッドタウン」についてお話しましょう。防衛庁の跡地だったこの場所を開発した際に私たちが目指したのは、観光客や遠方の方が「一生に一度は行ってみたい」と思うようなきらびやかな場所ではなく、近隣で働いている人、遊んでいる人、子どもやおじいちゃんおばあちゃんまで、「気軽に日常の買い物や憩いの場として活用したくなる場所」「結果として、世界中からお客さまが集まる場所」というイメージでした。このため、利用する人の立場に立って徹底的にデザインを考え抜き、スーパーマーケットを正面に設置したり、ご年配の方でもアクセスがしやすいオープンな構造にするなどの設計の工夫をしたのです。その甲斐があり、2004年の誕生以来、都会のオアシスとして日々多くの人で賑わい、幅広い年代層に気軽に立ち寄っていただける場所となっています。

Q. グローバルに展開する上で工夫されている点は。

どこで仕事するにしても、我々一社だけで事業を行うことはできません。このため、同じ価値観や目的を共有する「パートナー企業との出会い」を最も重視しています。目先の利益のためにビルを建てるのではなく、ショッピングセンターであれオフィスビルであれ、前述したように人が「豊かな気持ちで幸せに過ごせる場所」を提供することが第一義です。「そこで幸せな気持ちで働けるから、結果的に豊かになる」「楽しく過ごせる場所だから、買い物客で賑わう」ということが実現して、はじめて社会は潤います。そして結果として、弊社やパートナー企業の利益にもつながるのです。どの国でも、まずは最初にこのような価値観を共有できる現地のデベロッパーと巡り会えるかどうかが成功の鍵であり、だからこそ長くお付き合いできる「人との出会い」を大切にしています。

社内的な工夫という点では、海外でも国内でもさまざまなバックグラウンドの方がいて、「何かが異なる人たちの集合体」であることには変わりありません。人種や文化・慣習の違いなど海外特有の違いもありますが、それらをお互いに認め合い、同じ目的を共有する仲間・家族であるという関係性を大切にしています。

一方で、ジョブ・ホッピングが当たり前となっている当地の文化の中で、終身雇用・年功序列という独特の人事方式の日本企業が長期的に事業を続けていくには、工夫が必要だと感じています。例えば「長期的なビジョンを示す」ということは常に心がけています。「会社としてのビジョン」だけでなく、「スタッフ一人ひとりのキャリアビジョン」もしっかり示すことが大事です。そして「できるだけ長く当社で活躍してほしい。仮に将来転職することになっても、ここにいる間は大いに成長して、会社に貢献してほしい」と伝えています。結果として当社の離職率は非常に低く推移しています。転職する方がいても、弊社の価値観に共感する有能な人材が社会全体には増えていくことになり、その方の転職先の会社と弊社が新しい仕事を一緒にするような可能性も出てきますから、決してマイナスではないと考えています。

Q. グローバルに活躍するための資質について、お聞かせください。

私はアジア各国やオセアニアなど、さまざまな国の方と仕事をする機会があります。シンガポール人をはじめ、各国に優秀な方がいて感心させられることが多いのですが、私の実感としては、日本人も世界的に見たら大変優秀だということです。大切なのは「誠実さ」と「胆力」です。日本人は、緻密に考え責任感を持って誠実に物ごとを進めていく力を自然に持ち合わせており、それは、他国にも誇れる点だと感じます。

しかし一方で、せっかくの実力を世界で発揮する上で直面する課題もあります。それは実践的な英語力の不足や、慎重すぎる点です。日本人はしっかり考えすぎてしまい、その結果、皆が同じことをしてしまっているような傾向があります。「イノベーションをしよう」と言いながら、「イノベーションってどうやってやるんだろう」と一生懸命考えるばかりで前に進まない、という笑い話もあります。シンガポールは非常に動きが速いですが、「まずはやってみよう」「間違っていたら、その部分は変えていこう」というメンタリティが現れていると思います。

日本人が英語を難しく感じているのも、根本的には同じ原因からだと思います。「間違えたら恥ずかしい」「しっかり文法をマスターしてから話す練習をしよう」などと考えているうちに、「トライ&エラー」の練習を通して力をつける機会を逸してしまうのです。すでに優秀な頭脳をお持ちの方が多いので、あとは挑戦する心を若い頃から養うことが大切だと思います。

Q. 海外で暮らすご家族へのメッセージをお願いします。

海外で生活することの利点は、やはり自分の「コンフォート・ゾーン(居心地の良い場所)」から出て、新しい異質な経験をする「場数を踏めること」だと思います。

私の持論ですが、子どもは物理的な移動距離が長ければ長いほど成長するように思います。一度に長距離を飛んで外国に行くのでも、毎日近くのコンビニや塾に通い続けることでも合計の距離は増えていきます。移動する道程や行った先で、さまざまな経験をすることでしょう。その時には成長や学びの成果が見えなくても、無数の小さな冒険や「トライ&エラー」をしているため、その後の人生において新しいことを楽しみ、挑戦することが怖くなくなります。結果的に「あと伸び」につながるのです。

私は小学校の低学年の時期にカナダに在住し、当初は英語で苦労したり「日本人」とからかわれたりしました。帰国後も、国語や算数の勉強で苦労したり「英語喋って」などと言われ、大変な思いをしたものです。しかし海外で仕事をするようになってみると、幼い頃の海外生活や帰国後のさまざまな経験は、間違いなく自分の考え方や価値観に影響しており、そこで得たものが大きな力になっていると確信しています。海外で生活するお子さんには、英語力などのスキルだけでなく、いろいろな場所に行き、酸いも甘いもさまざまな経験をする機会を重ねて、「後から伸びる力」をつけていっていただきたいと思います。

会社概要

三井不動産株式会社

総合不動産会社として不動産業界において売上1位を維持し、オフィスビル、商業施設、大型物流施設、宿泊・リゾート施設、マンションなど、幅広く不動産開発事業を展開。2017年11月からは、インターネット通販サイト「三井ショッピングパーク&モール」も運営。

松藤 哲哉 氏

早稲田大学政治経済学部卒業。

1991年三井不動産(株)入社。本社地域開発事業部、東京ミッドタウンマネジメント(株)プロモーショングループ統括などを経て、2017年より三井不動産アジア/ TID Pte. Ltd.社長、19年より現職。

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