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コラム

「大切にしたい幼児期の感性」高橋 万弥さん / スタジオ ミュウ シンガポール主宰

2012.03.23

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~アートとの出会い~

シンガポールで16年、日本での絵画教室指導年数も合わせると25年の指導経験をもつ高橋さんが、子どもとアートの関わりを考えます。

大切にしたい幼児期の感性

「私はラファエロのような絵を描くのに4年かかった。しかし、子どものような絵を描くには一生かかるだろう」というピカソの言葉をご存知ですか。幼児期の絵には、大人にはない人間としての本質を見つめるための行為や環境の中で自分の存在を確かめる営みがあります。たとえば、小さな子どもがプールで手足をばたつかせてキラキラ光る水しぶきをあげて遊んでいます。すると、そこから美しい光と音が湧き出て、飛び散った水が地面に模様を作り、濡れた足が乾いた地面に足跡をつけます。そうやって、子どもは全身を使って環境の変化を受け止め、自分の行為が形となることを体験しながら飽きることなく遊びの探求を続けます。このような日常の行為が子どもの感性を刺激して、イメージする力や創造する力が徐々に養われていくのです。

障害物にぶつかって絵具の流れ方が変わるよ!感じることが描くことの連鎖において作品ができる

成果を期待しない

幼児期ー絵の描き始めには、具体的なイメージの成果を期待してはいけません。彼らの身体から自由に湧き出てくる行為とその過程を重視することが大切です。絵の具を使ったら、全部の色が混ざってドロンコのような絵になることを体験したり、太陽といいながら描いていたものが途中から卵に変化したりと、留まることをのない想像力がそれらの行為によって涌き上がっているからです。子どもは、「描く」という行為によって外の世界にあるものを感じて自分自身に取り入れ、表現するということを絶え間なく繰り返しています。感じることから絵を描きはじめ創造することの楽しさを体験し、また反対に描くという身体行為から感性を鍛え心で感じることの幸福感を実感するということにもなります。描くという行為は、それ自体が楽しいものなのです。そこに大人の具体的なイメージをあてはめる必要はまったくありません。なぐり描きのような幼児の絵は、探索活動が記された素晴らしい芸術作品といえるでしょう。

幼児期にアートを通じてより多くの幸福感を実感し、自分の身の回りの世界が善であふれていることをなんとなく感じとることができると、自立心の基礎固めへとつながります。

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