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グローバル教育

企業からの声

株式会社商船三井 専務執行役員 アジア・中東・大洋州担当  MOL(Asia Oceania)Pte Ltd 社長 八嶋 浩一 氏

2020.06.25

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海運がなければ日本人の生活は成り立たない、と言っても過言ではありません。

世界中の人々の生活基盤を支えるために海上輸送は不可欠であり、私どもはその重要な責務を担っています。生活に関わる製品の多くは、皆さんの手に渡る前に何ヵ国も巡ってくるものなのです。これからも人々が豊かな生活を維持するために、世界中で海運の貨物量は伸び続けていくでしょう。

グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。
企業の方からお話をうかがいました。

Q. 御社のご紹介をお願いします

「外航海運会社」というと一般的にはあまり親しみがないかもしれませんが、世界中の人々の生活基盤を支えるために海上輸送は不可欠であり、皆さんの生活にとって非常に重要な役割を担っています。

当社は1884年に大阪商船として創業しました。1964年には大阪商船と三井船舶が合併し大阪商船三井船舶に、99年には大阪商船三井船舶とナビックスライン(ジャパンラインと山下新日本汽船の合併企業)が合併し、商船三井が発足しました。創業以来136年間にわたり、世界最高水準の安全輸送と地球環境保全に努めながら、世界の暮らしと産業を支え世界経済の発展に貢献しています。

皆さんは、世界中における貨物の国境を越えた年間運送量をご存知でしょうか。過去に遡りますが、2002年の実績では人口63億人に対しちょうど63億トン、つまり一人当たり年間1トンに相当します。2050年には人口93億人に対して貨物がおよそ150億トンに増えると言われており、一人当たり年間1.7トンほどになるという予測です。なぜそこまで貨物の輸送量が多いのかと思う方もいらっしゃるでしょう。例えば車を例にすると、まずブラジルでとれた鉄鉱石が中国に運ばれ鉄になり、その鉄はタイに運ばれ自動車が生産されます。そしてその自動車は、アフリカやシンガポールをはじめとするアジア各国へ運送されるという動線を辿ります。このように、人々の生活に密接に関わる製品の多くは、皆さんの手に渡る前に何ヵ国も巡ってくるものなのです。これからも人々が豊かな生活を維持するために、世界中で外航海運の貨物量は伸び続けていくでしょう。

当社は現在世界中に約800隻弱の船を運航し、貨物需要の増加に応えています。外航海運は他の輸送手段に比べ環境に優しいエコな輸送モードを実現しており、その特性を生かし、鉄鋼原料や石炭、木材チップなどを運ぶ各種専用船、原油などを運ぶタンカー船、液化天然ガスを運ぶLNG船、自動車船、コンテナ船などで、さまざまな分野の輸送を担っています。航空貨物と比較しますと、航空貨物は重量ベースでは3%であり実に97%の貨物が海上輸送です。私たちの日常生活を見回しても、例えば食料品、家具、建築資材から原油や液化天然ガスなどエネルギ―関連に至るまで、多くのものを輸送しています。特にエネルギー関連については、日本はほぼ100%輸入に頼っているのが現状です。つまり、外航海運がなければ日本人の生活は成り立たない、と言っても過言ではないのです。

株式会社商船三井 専務執行役員 アジア・中東・大洋州担当  MOL(Asia Oceania)Pte Ltd 社長 八嶋 浩一 氏

Q. 環境対策にも積極的に取り組まれているそうですね。

近年の地球温暖化防止をはじめとする地球環境保全への要請の高まりを念頭に置き、経営にとって最重要課題の一つとして環境対策にも配慮しています。海運会社の船舶から排出されるCO2は単位輸送あたりの排出量は少ないながら全世界の2%とも言われており、さまざまな環境問題を深刻化させているのも現状です。そのため、当社に何ができるかを常に考え、果たすべき社会的責務と向き合いながら日々実行しています。

一例として環境負荷を低減するために、船舶用燃料を重油からLNG(液化天然ガス)に変える取り組みも始めています。今後はますますLNGを燃料とする船舶が増えていきますので、それに先立ち、ガスを充填する船舶の建造をシンガポールで始めています。海上風力発電所を支援するサービス船事業への取り組みや、クリーンな代替燃料の研究などを進める環境先進企業として、地球環境保全の継続的な改善に努めていきます。

Q. 採用について教えてください。

当社の採用は主に海上職と陸上職とに分かれています。陸上職の新卒採用では、出身大学や文系・理系、語学力の明確な基準はなく、男女も分けては捉えていません。近年は理系や大学院からの応募も増えている印象で、女性の比率も高くなり4割以上を占めています。船長資格がある女性社員もおり、これからはますます女性の活躍も増えてくるでしょう。

海上職は航海士コースと機関士コースがあり、機関士は基本的に理系です。航海士は文理関係なく多岐に渡ります。主として商船系の学校・大学から資格を持っている人たちを即戦力人員として採用しますが、広く一般大学からも採用し、約2年間をかけて自社養成を行うことにも力を入れています。現在当社の運航船では日本人の船乗りは3%しかおらず、97%は外国人です。中でもフィリピン人が約半数を占め、それ以外はインド人や中国人、ロシア人やクロアチア人など実に多国籍です。

私は過去16年間、採用を担当していました。当社が採用の際に重視することは、仕事をしていくうえで「常に当事者意識を持てるか」という点です。即ち「主体的に行動できるか、主体的に周囲にも働きかけることができるか」ということです。例えば、難しい問題に直面したときに、これは環境のせいだとか、会社が自分に良い仕事を与えてくれないからとか、出来ない理由をあれこれ並べることは誰でもできます。そもそも仕事は予定通りにいかないことの方が多く、ましてや世界が相手の場合には、予想通りいく方が珍しいのです。「当事者意識」がある人であれば、どんなポジションにいようとも「自分には何が出来るのか」を自ら考え行動し、解決策を講じ、関係者と協調しそれを実行してくれます。「最後は自分が責任を持って皆と協調し成果を挙げる」という姿勢が、まさに当社が求める人材像として大切にしている「自律自責(自らを律して自らの責任で行動する)」ということなのです。

Q. 御社はフィリピンに大学を作られたと伺いました。

当社は2018年に、フィリピンに「MOL Magsaysay Maritime Academy Inc(. MMMA)」という商船大学を作りました。これは、フィリピン最大級の船員配乗会社であるMagsaysay Maritime Corporation(MMC)と共同で運営しているもので、当社がこれまで培ってきた船員育成の実績と知見を大学の運営という形に発展させ、安定的に良質な幹部候補船員の育成を行うことで「世界最高水準の安全運航」の実現を目的としています。定員は1学年300人ですが、ウェブサイトでは約2万人の問い合わせがあります。そこまで人気が高い理由は、卒業後の当社の運航船やフィリッピン内航船船員としての職業をほぼ保証し、奨学金も給付しているからです。

一方で、当社グループでは海外で外航海運人材を育成するノウハウを他の分野にも活用し、日本の労働力不足にも生かしたいと考えています。日本の労働力人口は2040年までには20%減少すると言われており、減少に歯止めがかからず安倍政権が「特定技能者の積極的な受け入れ」を掲げていることは皆さんご承知の通りです。海外で確保・育成した優秀な人材を外航海運業以外でも、日本のさまざまな分野の産業で活躍してもらえるような仕組み作りを積極的に展開しようとしています。

Q. 海外で暮らすご家族へのメッセージをお願いします。

シンガポールは、これだけ多様な人がいる環境で人間関係を構築できるということが、何にも代え難い勉強になると確信します。当地で「視野」を広げるのも大切ですが、さらに大事なのは「視座」を変えることだと感じています。何ごとも一つだけの見方でなく、異なる見方をするといろいろな気づきがあるものです。多感な時期にそのような環境に身を置くことができる経験は尊く、羨ましく思います。ぜひ、この恵まれた機会を有意義に生かしてください。また、現在コロナウィルス対策の環境下、皆さん不安とともに不自由な日常生活に直面されているかと思いますが、海外ならではの視座で現実を見つめ、これからの持続可能な社会と環境への配慮等についても、さまざまな立場の方々と意見を交わしお互いの考えを深める良い機会だとも思います。

最後に親御さんには「子どもは自らの力で育ってゆく」ものですから、お子さんに期待し過ぎないでください、とお伝えしたいです。一度海外に出ると語学力も、日本の学習もと一生懸命になり過ぎ、お子さんへの期待がどんどん膨らみがちです。お子さんにとっても前向きな期待は良いですが、それがプレッシャーとなっては逆効果です。実際に親の期待に応えようとし過ぎてしまい上手くいかないケースも見聞きします。親御さんがこうなってほしいと期待を示すのではなく、お子さんの主体性に任せて温かく見守ることも大事ではないでしょうか。

会社概要

株式会社商船三井
MOL(Asia Oceania)Pte Ltd

世界の暮らしと産業を支える総合海運企業グループ。日本郵船、川崎汽船と並ぶ日本の三大海運会社の一社。暮らしを支える製品や自動車、産業を支える資源・エネルギーなどを、世界を舞台に船で運ぶ。海上輸送を通じ、各地域の産業の発展に貢献し、人々の暮らしを豊かにすることを社会的責務としている。

八嶋 浩一 氏

1983年慶應義塾大学経済学部卒業、大阪商船三井船舶株式会社入社。

92年Mitsui 0.S.K. LINES(AMERICA)INC.出向(シカゴ駐在)、2011年人事部長、13年執行役員、16年常務執行役員、19年より現職。

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