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音楽との出会い 「ヴァイオリニストとして」 諏訪内 晶子 さん

~音楽との出会い~
「ヴァイオリニストとして」
諏訪内 晶子 さん

日本を代表するヴァイオリニストの諏訪内晶子さん。史上最年少かつ日本人初のチャイコフスキー国際コンクール・ヴァイオリン部門で優勝され、現在はパリ在住で幅広く音楽活動を行っています。

年間約200日を公演のため自宅外で過ごされるという諏訪内さんに、昨年行われたシンガポール公演の際に、今日に至るまでの「ヴァイオリンとの歩み」を伺いました。

ヴァイオリニストへの道のり

ヴァイオリンを始めたきっかけは、2歳半の時に私が音に興味を示すことに気づいた両親が、幼い私を連れて近所のヴァイオリン教室を訪れたことでした。3歳から週1回のレッスンを始め、4歳からは週2回のレッスンに増やしました。小さいながらも、毎回のレッスンが楽しみだったことを覚えています。第2次ベビーブーム世代で待機児童でしたので、自宅で練習をする時間がありヴァイオリンはめきめきと上達していきました。

小学生になると、大きな大会に挑戦する機会が増えました。中学生の時には「日本学生音楽コンクール・中学生の部」で優勝し、高校1年生で「日本音楽コンクール」でも優勝すると、自然に海外に目を向けるようになりました。14歳から師事した江藤俊哉先生をはじめ、戦後に海外で教育を受けられた先生方の影響もあり、海外への憧れとともに世界を舞台に高みを目指したいという気持ちを強めていきました。

大きな転機になったのは、1990年、私が高校卒業直後「チャイコフスキー国際コンクール・ヴァイオリン部門」で優勝を手にしたことでした。留学経験がないにもかかわらず国際コンクールで優勝できたのは、ひとえに日本にいながら世界に通用する音楽教育を与えてくださった恩師たちのお陰です。これがきっかけになり、翌年の秋から文化庁芸術家在外派遣研修生として、ニューヨークのジュリアード音楽院へ留学することとなりました。こうして、私は19歳で初めて学びの場を海外へと移したのです。

「ヴァイオリニストとして」 諏訪内 晶子 さん

プロでい続けるために

プロの音楽家として世界で活躍するためには、音楽の才能だけでなく総合的な力が求められます。私が留学していた当時のジュリアード音楽院の校長先生は、「総合的な芸術である音楽にはアカデミックな素養も必要である」という方針で、コロンビア大学とも提携していたので、その制度を利用し政治思想史も学びました。現在、世界で活動するプロのヴァイオリニストとして、また、国際的な音楽祭の企画なども行う私にとっては、音楽以外にも視野を広げ教養を深めることが出来たのは文化人として成長するために、大いに役立ったと感じています。

私は現在フランスを拠点に、1年の半分以上を公演のため自宅外で過ごしています。移動も多く、精神的にも体力的にもタフである必要があり、決して簡単なことではありません。演奏活動は常に良い状態で挑まなければなりませんので、自分を律し、規則正しく過ごすことが大切です。また、演奏するその瞬間に本領を発揮するには「瞬発力」と「集中力」が必要ですし、初対面のメンバーとの演奏を成功させるために「コミュニケーション力」も非常に重要です。最終的にはストレスを感じず、困難な状況でも楽しめる、ある種の「図太さ」も必要なのかもしれません。

「ヴァイオリニストとして」 諏訪内 晶子 さん

海外で生活するご家族へのメッセージ

世界で活動をするには、「オープンマインド」でいることが大切です。ヴァイオリニストとは(私の場合は特にソリストとして)、柔軟性と自己主張をバランスよく持ち合わせることも大事な要素で、演奏は大勢のチームワークで成立しますから、もちろん語学力も必要です。皆さんには、失敗を恐れず積極的に学び「伝える」力を身につけてくださいとお伝えします。

私は帰国子女ではありませんでしたが、十代最後に海外へ出る決断をしました。あの時に留学していなかったら、きっと違った人生を歩んでいたと思います。海外で受けた影響は、後々その人の人生に深く影響してくると思います。今、海外で生活している皆さんには、ぜひさまざまな経験を積んで視野を広げていただきたいと思います。

「ヴァイオリニストとして」 諏訪内 晶子 さん

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