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グローバル教育

この人からエール

土浦日本大学中等教育学校 校長 堀切 浩一氏

帰国生の可能性に魅了され
人材育成に挑む

はじめに

私は長らく公立中学校の教員を務め、その後、中学校受験の大手学習塾で指導をしていました。ちょうど受験業界には偏差値が浸透し、合否の尺度として定着していた1980年代のことです。模試で出た結果は概ね受験の結果に結びつくものでした。しかし、模試の結果を物ともせず挑戦校に挑み、周囲の予想を良い意味で覆す生徒たちがいました。海外で教育を受けた帰国生たちです。帰国生に限っては、偏差値では合格が見込めなくても見事に「合格」をたたき出す生徒が続出していたのです。当時の一般受験生ではありえないことでした。私は帰国生の可能性の大きさに魅了され、帰国生の才能と大いなる可能性を育む環境とはどのようなものか、海外在住期間にどのような教育を受けているのかをこの目で確かめたくなりました。

教育業界で充実していた私は、組織に強い所属意識を持っており、自分の立場をありがたく思いながらも、心のどこかではそこに依存しきって いる自分の弱さにも気づいていました。そして、現状に甘んじることなく 価値観や世界を広げていきたいという思いが次第に募っていきました。 ちょうど帰国生の可能性の大きさに感銘を受けていた頃と重なり、私は 海外に強い関心を抱き、思いを馳せるようになりました。そこから私の海 外遍歴が始まりました。当時すでに東南アジアで海外に在住する日本人 子女の教育に取り組んでいた方との貴重な出会いがあり、シンガポー ル、香港、そしてオーストラリアで日本人子女の教育に携わることになり ました。その後、さまざまな人との出会いを通じて本校開校に携わるご 縁をいただきました。海外で得た知見を日々の学校運営に生かしなが ら、国際社会に貢献できる人材の育成に取り組んでいます。

土浦日本大学中等教育学校 校長 堀切 浩一氏

帰国生をとりまく変化

本校は、開校当時より国内他校からの編入は認めず、唯一「帰国生」のみを途中編入可能とする学校です。開校当時は、保護者の駐在任期間際まで家族で過ごし一緒に帰国するご家庭が一般的で、中学2年生や3年生、高校1年生での編入希望者が多かったものです。近年では、保護者の駐在期間にかかわらず、お子さまの進学の区切りに応じて母子で先に帰国されるご家庭が多いように思います。お子さまがよりスムーズに教育環境に馴染めるようにというお気持ちがわかる一方で、貴重な海外での生活を一日でも長く体験されてはという気持ちが錯綜する思いです。

進路選択でも感じる変化があります。それは、理系選択者が増えたことです。以前は、帰国生特有の「英語の強み」を生かし、有名私立大学の文系に進学する人が圧倒的多数でした。近年では理系、特に理工学部や医学部の進学率が大変伸びています。本校で言えば、その理由の一つとして、先輩方の体験談の影響が大きいと言えます。有名私立大学文系に進学した卒業生たちの話にある、「高校生までは自分の英語力を過信していたが大学ではもはや特別でないことを実感した」というものです。有名私立大学となると、日本中から帰国生が集まり外国人教員数 も多くなります。そのため、それまでの英語力では自慢にならないということは想像に難くありません。そのような体験談を聞くにつれ、進路指導でも英語力を過信せず、英語力だけに頼った勝負はしないように伝えています。

「真にグローバル」な英語教育

「英語でグローバル社会に貢献できる人材の育成」は本校が掲げる教育目標です。近頃の私立学校では聞き慣れた目標かもしれません。しかし、ここでいう「英語」とは、真にグローバルな意味を含んでいます。なぜなら本校の外国人教員は、全員、非英語圏出身者だからです。親御さんの世代では、クイーンズイングリッシュをしっかり学ばせたいという考えや、やはり英語を母語とするネイティブ教員から学ばせたいと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、国の垣根を超えてボーダレスにヒト・モノ・コトが動く現代、英語は単なる道具でしかなく、その英語ももはや人種の数だけ特有の「英語」が存在していることを体験しておく必要があると感じています。

そのため本校では、外国人教員はルーマニアやカザフスタン、ハンガリー、ラトビア、スウェーデン、ロシアなど欧州からも積極的に採用しています。さらに、中学2年次と高校1年次で実施するイギリス研修での寮生活を通して、英国であっても都会と下町とでは話されている英語は異なり、皆がハリーポッターみたいな英語を話すわけではないことを実感しているのです。

高い進学実績が期待される「理系インタークラス」

本校では開校以来から最難関理系大学の高い進学率を実現してきました。過去5年間の進学実績を見ても、理系生徒のおよそ半数が医歯薬獣医学部・最難関理系大学への進学を実現しています。さらに、2019年に「理系インタークラス」を設置したことで、今後は理系進学者を一層手厚くサポートできると確信しています。同クラスは、中学1、2年次より英語・数学は習熟度別クラスで学び、3年次に一クラスの生徒(学年の20%程度)を選抜します。早い段階で数学を諦めることがないよう指導し、探究型学習を徹底しています。課外ゼミや実験授業などを通して養われる自然科学に対する知的好奇心は生徒の学習意欲の礎になっており、SDGsに関わる地球温暖化や経済格差などの諸問題を解決し、世界の人々と対話のできる能力を養っています。その成果は目を見張るものが あり、日本国内の大会では、高円宮杯中学校英語弁論大会での県優勝 や、文部科学省後援「自然科学観察コンクール」において、中学2年生の 生徒が文部科学大臣賞、本校が学校奨励賞に輝いたほどです。

土浦日本大学中等教育学校 校長 堀切 浩一氏

お子さまの進路選択で大切なこと

お子さんの進路選択の際には、「どうか成績で選ばないでください」とお伝えします。日頃から目的意識を持って行動し、ぜひ自分の体験の中で関心を持った分野に進むことをおすすめします。お子さまの「学ぶ意欲」を損なわないためにご家庭でできる工夫、それは、「勉強しなさい」 と強要しないことでしょう。難関大学に合格した生徒に聞くと、異口同音に「勉強しなさいと言われたことは一度もない」と答えます。多感な中学高校時代には、親に言われるとむしろ反骨精神が芽生えるものです。親御さんの立場では、お子さまが勉強しているのか気になって仕方ないこともあるでしょう。そのような時は「何してるの?」と間接的な聞き方にとどめ、関心を持って見守っていると伝わる声がけが良いでしょう。親だからと頭ごなしに命令口調で発言したり、何かモノで釣る、ルールで縛るという方法は、絶対に逆効果なのです。

目標達成のためには、お子さん自身のモチベーションを高めるのが一番の近道です。本校の卒業生で、国際医療に関心を持ち医学の道に進んだ生徒がいました。きっかけは中学2年次のイギリス研修中に救急車で搬送された経験でした。イギリスでは医療費が無償なため、日本の医療事情との違いに関心を持ち、医療系に進みたいと感じたのだそうです。 本校のさまざまな体験の場で将来につながる目標を見出す生徒は少なくありません。自分の将来のイメージに向き合い社会にどう貢献すべきかという視点で内発的動機を重んじ、進路を選択していただきたいと切に願います。海外ではお子さまと対話する時間が多く、理想的な環境だと感じます。日頃からお子さまの関心事に耳を傾け、時に一歩離れて見守りながら、お子さまが最善の進路選択をされることを願っています。

土浦日本大学中等教育学校 校長 堀切 浩一氏

海外に暮らすご家庭にメッセージ

私の海外経験から、空港で一歩踏み出した瞬間にその国独特の香りを感じることができると思います。香港は臭豆腐、シンガポールはココナツミルク、日本は醤油の匂いと言われていますが、皆さんはどのように感じるでしょうか。

海外で生活している方の特権は、バーチャルリアリティーではない、正に現実で素晴らしい体験ができていることです。現地で見て感じる経験とは、知識と実体験が融合した得難いものなのです。それらの体験は、 必ずや一生の宝となり自分の拠り所になるに違いありません。学校内でも帰国生から聞く現地の体験談には力強さがあり、一般生をもその世界に引き込んでくれるほど別格の影響力があります。皆さんにはその尊さを感じていただき、貴重なチャンスを逃さずに思う存分体験していただ きたいと思います。家でゲームやメタバースに時間を費やすのはもった いないことです。親御さんもご一緒に、海外体験という生きた知識にとどまらず五感を研ぎ澄まして日々の生活を送り、海外での異質性・多様性を体験してください。きっといろいろな気づきがあるに違いありません。

国によっては、日中は学校、夜は学習塾、週末はその宿題に追われが ちで、駐在期間の多くを学校→塾→家というトライアングルの中で過ごす方もいらっしゃると伺います。帰国を見据えた学習の時間を削るようお すすめするつもりはありません。しかし、シンガポールであれば週末のちょっと空いた時間にチャイナタウンやインド人街に行き、いろんな文化に触れることはできるでしょう。オーチャードを歩くだけでも、見るもの聞くもの食べるもの全てが日本とは異なるはずです。インド人街のホーカーで素手で食事をするもの面白いかもしれません。ご帰国後の皆さんのご活躍を、期待してやみません。

※土浦日本大学中等教育学校に関する情報はこちらにも掲載しています!
https://spring-js.com/japan/1076/2/

堀切 浩一(ほりきり こういち)氏

宮崎県の公立中学校教員から大手学習塾を経て、シンガポールや香港、オーストラリアにて海外教育事業のDIRECTORとし て従事。

2003年、土浦日本大学中等教育学校開校に参画。

21 年より現職。

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