海外生・帰国生へのヒント
教育の現場から vol1. KOMABA室長 石川晋太郎 先生

海外生活で得た経験の大切さを今後の人生に結びつけるために、教育現場ができることは何でしょうか。

【教育と経験】

多くの方が論じられているように、シンガポールは多様な教育を受ける機会に恵まれた国です。それゆえにどのような教育環境を選ぶか、さまざまな意見があります。

当たり前のことですが、「教育」はそれを受けただけで何かを達成するものではなく、子どもたちが自らの手で受けた教育を「経験」に変え、自己を形成し、社会の中で生きていく力にしなければなりません。外国で暮らし日本とは異なる教育環境にいることが不安の要員になる場合もあるでしょう。それはインター校でも現地校でも日本人学校でも同じです。

では、海外生活で得た経験の大切さを今後の人生に有意義に結びつけるために、教育現場でできることは何でしょうか。

私は大学を出てから青年海外協力隊としてアフリカに赴き、貧困地域の教育開発に関わっていました。現地の子どもたちの「勉強がしたい」という純粋な気持ちに胸うたれ、それが今の教育業界に身を置く原点となっています。周囲に強いられて勉強をすることが多い日本の子たちにアフリカの話をすると、「学ぶ意味」を本気で考えるようになる子がいます。一般論ではなく自らの経験に基づいた話をすることで、子どもたちも「じゃあ自分は?」と自身の経験を新たに見つめ直し、考えるきっかけになっているようです。

日本人の大人は「地上ユートピア主義」つまり「自分のおかれた場所が一番よい場所だと思わず、良いところはどこか他にある」という考えを持つ傾向が強いそうです。しかし、真の意味での「ユートピア」は、最終的には子どもたち自身で創り出すしかないと思います。周りの大人たちは子どもたちが自力でそこに辿りつけるよう支えていくことが大きな役目ではないでしょうか。

より多くの経験を子どもたちに聞かせることで、「経験することの大切さ」を子ども自身が悟り、失敗しても這い上がり成功につなげられるよう全力で応援したいものです。それが未来へ向かう子どもたちの「確かな力」につながると信じています。

KOMABA室長 石川晋太郎 先生

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