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この人からエール

SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表 学校法人高宮学園代々木ゼミナール 副理事長 髙宮 敏郎 氏

2015.01.09

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輝く次世代のために~時代に即した教育への挑戦~

はじめに

1992年にピークを迎えた18歳人口は減少を続け、予備校・学習塾業界では競争が厳しさを増しています。大学は全入時代と言われて久しく、また中学受験者数はリーマンショック以降マイナスに転じました。

「代々木ゼミナールが校舎を大幅に集約」という報道を目にした方も多いと思います。教育に対するニーズが多様化・早期化している中、従来は当たり前であった「大教室で皆が一緒に同じ勉強をする」という考え方から変わっていかなければならないと感じています。そして、教育の変化にしっかり対応したいという思いで今回の大きな改革に踏み出しました。その一環として海外大学進学講座もスタートし、英語でのディスカッションを中心とした双方向型の授業を開講しています。現在海外に在住するご家族と、これから海外進学を視野に入れている教育に関心の高い皆さまにも、良質のサービスを提供していきたいという思いを強く持っています。

日本の教育が激変する今、代々木ゼミナール創業者一族として先代が築きあげた母体に将来を見据えた変革を加え、日本の教育に貢献していくことが私の使命だと考えています。

日本の教育がとり入れるべき価値観

教育が大きく変わろうとする中、現代の親御さんの多くは「今のままの教育でいいのか」という不安を強く抱いていると感じます。学校選択において教育理念が子どもに合っているかどうか、将来の職業選択に有利か不利かを熟考する方が増えています。かつては受験に成功しさえすれば、社会の中である程度の立ち位置を確立することができるとされていましたが、現在では「この学校に入れば将来安心」という物差しが実質無くなったと言えるのではないでしょうか。そして、このような不透明な時代だからこそ、日本が積極的に取り入れるべき教育の価値観があると感じます。

私が20代後半にアメリカで大学経営を学んだ時、日米の授業形態の違いに愕然(がくぜん)としました。日本では授業内で一定の結論にたどりつき、その日学んだことはきちんと明確に整理することができました。ところがアメリカでは、学生自らがテーマについて各自の意見を表明し、さまざまな考えを出したところで教授は授業を終えてしまうのです。何が正しいのか、結論は一体何だったのかが明確になることはあまりありません。当時からアメリカの教育の根底には、「考え方は違うのが当然」「答えは一つではない」という価値観が根付いており、自分の意見を持ち、表明することが重要視されていました。これは教育が大きく変わろうとしている今日の日本でも、忘れてはいけない大切な視点だと思います。

また、間違いを恐れず「誤りからこそ学べる」という姿勢も大切な要素だと考えます。日本の子どもたちは学習の際に消しゴムをよく使い、間違いをきれいに消しますが、これは間違えたことにネガティブな感情を抱かせてしまう象徴ではないでしょうか。欧米諸国では「間違いを気にしなくて良い」というポジティブな発想があるため、間違いに線を引き自分が誤った箇所をそのまま残すのです。日本人はとかく人前で意見を発言することが苦手ですが、その根底には間違えることは恥だ、という気持ちがあるのではないでしょうか。「間違えても良い」という価値観を高めるために、保護者の皆さまにはお子さまが綺麗に消していたら「そのままで良いんだよ」と言ってあげ、とことん褒めて育てるくらいの気持ちを持っていただきたいと思います。無論、言うは易しで実際に実行するのは難しいことではありますが。

「根っこ」を持つ日本人になる

海外で生活し学ぶ経験は、人生においてかけがえのない大きな財産となります。さまざまな人と出会い、日本を離れることで改めて日本という国を見つめ「日本や日本人がいかに価値ある存在であるか」、更には「自分が何者であるか」に初めて気づかされるのではないでしょうか。

私が留学中に「What makes you Japanese?」と聞かれることがありました。日本にいる時はあまり意識しませんが、「何を以って自分は日本人なのか」という問いに向き合い、世界の中で自身を相対化する経験は大きな意味があったと思っています。自分自身の存在と日本の歴史・伝統・文化などとの関係を考えさせられる瞬間でありました。

新聞やテレビで毎日のように目にする「グローバル人材」という言葉も、二つの異なるイメージがあると思います。一つは「ルーツや母国という概念に囚われず、突き抜けた個性で活躍する人材」、もう一つは「母国が根底にあり、それを踏まえた上で活躍する人材」です。皆さまの周りにも、グローバルに活躍する両方のタイプの方がいらっしゃると思います。

日本の教育が目指すべきなのは、究極的には日本の良い「根っこ」を備えた日本人を育成することだと考えます。その人たちが海外で良質な経験を積めば、日本人としてのアイデンティティーをしっかり持ったグローバル人材への道が開かれるでしょう。日本の初等中等教育における「基礎力の確立」は世界的に見ても素晴らしいと感じます。日米の初等中等教育を比較しても、数学などの実力は日本人の方がはるかに優れています。強みを持つ教育システムを維持しつつ、世界の優れた高等教育の要素を融合することが、今求められているのではないでしょうか。

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