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専門家の声 Specialist

この人からエール

World Creative Education Pte. Ltd. CEO 後藤敏夫 氏

2011.09.23

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海外で育つ子どもたちはどのように未来へ向かって歩んでいけばよいのか、親が出来ることとはいったい何なのか。専門家から進路や将来を見据えたアドバイスをいただきます。

はじめに

編集部:ここ5-10年で世界が非常に大きく変わっていると思います。アメリカ、ヨーロッパ、日本という今までの基軸が多極化し、その中心がアジアに移っています。この激動する状況を教育という視点からどのようにご覧になりますか?

後藤:日本は超高齢化と人口減少が進むことで、国全体として社会の活力が落ちてきています。毎年約12万人も減少しています。およそ苫小牧市くらいの地方都市の人口がそっくり減っているイメージです。国内マーケット縮小とGDP減は避けられず、企業が海外の成長地域で積極的に活動するため「国籍を問わないグローバル人材」を求めるのは、この状態から見て当然の話です。

 国内にいるとそれが見えず「みんな厳しい。自分もこの中で落ちなければ良い。」と思ってしまいます。教育もその延長で「せめて名前の通っている大学へ。」と考えがちですが、これでは将来の就職は相当厳しく、正規雇用に就けない層(志の低い【下流意識】の典型)と言わざるを得ないでしょう。この程度の学校なら恥ずかしくないだろうと有名大学に入れる。それで通じた時代は確実に終わっています。

 逆に質の高い国際教育を受けた、すなわち「グローバル人材」はどんどん就職が決まっている現実が一方ではあります。特に英語が堪能でネットワークを持った海外大学卒業生は、近年より一層企業の関心が高くなっています。キーワードは「グローバル化」ですが、ビジネスの世界でもアジアや中近東が活況を呈し、欧米そして日本の存在感が低くなって、その「グローバル」の意味がかなり異なってきております。そこで生きていける力=スキルや精神力を企業は求めており、そういう力を育成する教育環境を現在の日本国内の中で探すことは容易ではありません。

シンガポールで学ぶアドバンテージ

編集部:シンガポールの教育環境はかなり理想に近いと言われますね。

後藤:当地シンガポールでは英語は『アングロサクソンの文化』という意味はとうになくなり、シングリッシュといわれるように、中国人、マレー人、インド人はそれぞれ独自の特徴ある表現やアクセントをもつコミュニケーション手段「共通言語としての英語」になっています。お正月も4回(西暦の正月に加えて旧正月、ムスリムの正月、インド正月)ありますね。その中でシンガポール以外の国の色々な文化・価値観に接することもできます。他のアジア諸国では考えられない治安の良さも特筆もので、子どもだけで自由に行動ができるまさに世界でも稀な「多元的なグローバルを体感できる場」と言えましょう。

 更に重要な点は、アメリカの現地校に行っている子供が「日本語が破壊されてしまう」現象、すなわち欧米の価値観に合わせて「日本人を止めなくてはいけない心理」にはここでは決してならないところです。お互いの文化を自然に受け入れて尊重してくれる。つまり日本人が日本人として住みやすい国であることは、我々が感謝すべき最大の特徴です。

編集部:小さいころシンガポールで育つと英語や異文化を理解するセンスが磨かれますね。

後藤:当地で学んでいたある日本人留学生は、「インド人は約束の時間になっても現れないことがたびたびあり、約束を守らない。」ことに文句を言っていましたが、インド人は後からの約束でも、優先順位の高い方を優先する価値観を持っていることを知って「シンガポールに来て良かった。日本にずっといたら絶対にわからなかったことです」と語っていました。

 世界にはこのように我々と決定的に異なる倫理観・価値観を持つ人が多数いて、多民族国家シンガポールで生活すると年月とともに感覚的に分かってきます。こういう経験をした人と、30代、40代で外国に赴任にして初めて経験するのでは大差がある。「僕と君の約束はこれだけ大事だ。」と説得して、その日に来させる努力が必要なことを知らず、単に約束にルーズと考えるようではあまりに一元的です。彼らとビジネスや研究を欧米人と同じやり方でやったらまったく通じません。たとえ日本人学校に行っていても、ここシンガポールであれば、両親の日々の姿勢次第でそのような感覚は十分習得できます。

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