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コラム

スポーツとの出会い~夢をかなえるには~

2015.01.09

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日本を代表するトップスイマーの北島康介選手、白井裕樹選手、塩浦慎理選手が昨年9月に来星し、開催されたSwimStarsへ参加しました。SwimStarsは、Sports Swim Organisation(SSO) が主催し、より質の高いスポーツ観戦の機会と、競技者の能力向上のため新しい機会を提供することを目的として開催されました。

イベントには世界各国から競泳のオリンピックメダリストらが集まり、熱戦を繰り広げました。子どもたちを対象にした水泳指導がシンガポール日本人学校小学部チャンギ校を含む9箇所で行われ、同日午後には選ばれた2名の子どもが選手とともにリレー競技に参加しました。参加した日本人の子どもたちは真剣な眼差しでトップ選手の泳ぎに注目していました。
3選手に共通する強靭な心と身体は、どのようにして育まれたのでしょうか。各選手から「水泳との出会い」と子どもたちへのメッセージをうかがいました。

3選手に聞く ~夢をかなえるヒントとは~

水泳との出会い

北島選手:5歳の時に、友だちが通っていたスイミングスクールに行ったことがきっかけです。僕の子ども時代は本当に水泳一色でした。友だちと遊ぶ時間は無かったですし、水泳の練習のため修学旅行にも行けませんでした。当時、両親は水泳で食べていけるとはもちろん思っていなかったので、息子を「水泳バカ」にしたくないと塾にも通わせました。練習で辛い時もありましたが、続けてこられたのは同級生たちの応援が常にあったからだと思います。

白井選手:僕は6人兄弟で、上の3人の兄たちがみな水泳をしていたので、自然な流れで泳ぐようになっていました。水泳以外にも外で遊ぶことが多かったのでそれも良い経験でした 。水泳に関しては、兄たちが良い成績を残していたので、その影響は一番大きかったと思います。身近な目標であった兄に追い付き、追い越したいという気持ちが上を目指す強い原動力になりました。

塩浦選手:水泳は小さい頃から、サッカーは小学生になってから始めました。当初はサッカーの方が好きだったほどです。子どもの頃は、親や周りの環境に左右されることが多いと思います。僕の場合は、両親がやりたいことは何でもやらせてくれていたので、非常にありがたかったです。サッカーと水泳の練習が同じ日にあることも多く、送り迎え一つとっても 両親にずっとサポートしてもらったことが大きかったと思います。

夢を実現するために

北島選手:僕がオリンピックに行きたいと思ったのは小学4年生の時のことです。憧れの選手と一緒に泳ぐ機会があり、それがきっかけで オリンピックを目指すという大きな夢を持ちました。まずは大きい目標を作り、その中で小さい目標を決めて挑戦していくことです。自分が成し遂げたいことに関して一歩ずつ階段を上ることが夢をつかむということだと思います。はじめは遠い夢も、努力をし続ければ必ず自分の手に届くはずです。好きなことがあり、そこに夢があるのなら 簡単にあきらめずに最後まで続けて欲しいです。

白井選手:どんなことがあっても「続けていくこと」。そして、続けて いくためには「好きでいること」。この二つが大切だと思います。結果が出ないときはとても辛いですが、結果が出たときには本当に嬉しいので、やはりその辛い時間は必要なことだと感じています。

塩浦選手:スポーツも勉強も「面倒くさいな」と思うようなことが、実は一番大事だと思います。それをいかに長く続けられるかではないでしょうか。海外に来ると日本人はすごく真面目だと感じます。この真面目さや一つの事を続ける実直さは日本人の大きな強みです。海外にいる皆さんだからこそ、日本人のこの部分はぜひ持っていていただきたいです。

北島選手に聞く ~水泳・子どもたち・オリンピックへの想い~

100%以上の力を発揮するために

どんなスポーツや分野でも、人は緊張する立場におかれる時こそ真価が問われると思います。緊張感がともなってこそ、大舞台で100%以上のパフォーマンスができるのではないでしょうか。「試合で緊張しないためにはどうすれば良いですか」と尋ねられることがありますが、僕は反対に「緊張する経験をたくさん積んでください」と伝えたいです。経験を積むほど、緊張感を武器に実力を発揮しやすくなれると思います。

施設が素晴らしく、国際的な環境に身を置くことは、「スポーツを 楽しむ」という観点では理想的です。ただし「勝負で勝つ」ためには、どんなに環境が悪くても目標を見失わず、頑張り続けることができる「ハングリー精神」を持つことが必要でしょう。

みなさんにも、努力しているのに思うような結果が出ないことがあると思います。選手としてこれは一番悔しいことですが、この「悔しさ」が次の飛躍のチャンスなのだと思っています。競技として勝負だけにこだわるのではなく、実際なぜそこで負けてしまったのかを普段 からしっかり分析し、次の結果につなげることが、競技を続けていく上で一番大事だと思います。

読者の皆さんへのメッセージ

水泳は個人競技なので自分だけの勝負だと思いがちです。しかし実際は、チームメイトがいて、仲間がいるからこそ互いに良い結果を残すことができるのです。結果が出ない時、くじけそうになった時に励まし合い、高め合う、そして結果が出せた時に仲間たちに心からの拍手を贈ってあげられるかどうか、そこが真の競技者に求められる資質だと思います。皆さんには、是非そのような人になっていただきたいと思います。

大きな試合で結果を出せた時の華やかな勇姿の陰には、どの選手もその何百倍もの苦しい練習を乗り越えた経験があります。もちろん僕らも、練習に行きたくないと思うことがありますし、辛くて逃げ出したいと思うことは毎日あります。それでも頑張れるのは、乗り越えて成し遂げたい目標が明確にあるからです。オリンピック選手の中には、いじめやトラウマを抱えながら、がむしゃらに水泳に打ち込むことで一流の選手になった人もいます。自分の中に得意なものを見つけ、ひたむきに頑張り続けることで「新しい自分」を発見してください。

東京オリンピックに向けて

2020年には東京オリンピックが開催されます。普段よりもいろいろな競技を見る機会が増え、子どもたちが「こんな競技があるんだ」、 「この競技に挑戦したい」と思うきっかけになると思います。そういう思いの受け皿となる環境を用意してあげられたら、オリンピック後の日本のスポーツの裾野が広がっていくのではないでしょうか。選手たちが出来ることは、日の丸を背負ってオリンピックで戦うことです。夢を与えられるようなスポーツを見せることで子どもたちの目標となり、憧れ続けてもらえる存在でいたいと思っています。僕らの泳ぎを通して、リアルなスポーツだからこそ味わえる感動を共感してもらいたいと思います。

編集部より

水泳教室に参加した子どもたちはトップスイマーの泳ぎを目の前で見る機会に恵まれました。さすがのスピードとダイナミックな泳ぎに本物の凄さを感じることが出来たと思います。かつて北島選手が少年時代に憧れの選手と泳いだことからオリンピックを目指したように、シンガポールの地で子どもたちは小さな夢をかなえ、次の夢への一歩を踏み出したことでしょう。

選手のプロフィール

北島 康介 選手(平泳ぎ)1982年生まれ

アテネ、北京オリンピック100m、200m平泳ぎの金メダリスト。オリンピック史上初の2大会連続2種目制覇を果たした。2011年に「子どもから大人までたくさんの人達に水泳を好きになってもらいたい」との想いからスイミングスクールKITAJIMAQUATICSを設立。日本コカ・コーラ所属。

白井 裕樹 選手(背泳ぎ)1989年生まれ

200m背泳ぎ日本記録保持者。2013年には日本実業団選手権背泳ぎ100m、200 mともに1位。2012年のワールドカップ東京大会でも200m1位と、背泳ぎでは日本のトップ選手として活躍中。

塩浦 慎理 選手(自由形)1991年生まれ

2011年夏季ユニバーシアードに出場。男子4×100mメドレーリレーでアン カーとして出場し、金メダル獲得の立役者となった。活躍が期待される中、左人差し指を骨折しロンドンオリンピック代表を逃すも、2013年には日本新記録を樹立し再起を果たす。
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