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教育の現場から

教育の現場から vol4. 桐朋女子中学校・高等学校 熊野 孝 氏

2015.04.24

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海外生活で得た経験の大切さを今後の人生に結びつけるために、教育現場ができることは何でしょうか。

「何をしてもらえるのか」だけでなく

勤務校で帰国生の受入れ担当者となって 15年になる。仕事柄、学校見学のために来校される多くの方とお会いするが、初めてお目にかかり、せいぜい数十分しか話していないにもかかわらず、「この人は入学したら、きっと毎日楽しんで学校に通ってくれるだろう」という、半ば確信のような思いが頭をよぎるときがある。このように感じた時、それが外れることは殆どない。入学してしばらくしてから本人と話してみると、皆一様に目を輝かせて「入学して良かった、毎日が楽しい。」と話してくれる。

このタイプの人に共通しているのは①海外生活で頑張ってきたことを自分の言葉で語ることができる②新しい環境(例えば帰国後の学校)に入った時、自らをその場の主人公と意識し積極的に行動できる、ということだ。②について言えば、この種の人は学校見学の時も、自分がその一員となることが誇りに思え、自分が入ることで更に素晴らしい場となるような学校を探そうとして、色々と質問してくる。

かつてアメリカのテキサス州で出会った生徒がこのタイプだった。彼女は「アメリカの学校でソフトボールを始め、それを通して現地校の友達もできチームスピリットも学んだ。日本に帰ってもソフトボールを続け、チームや学校に貢献できるように頑張りたい。」 と一生懸命話してくれた。そして翌年高校 2年で編入し、片道 2時間近くの通学時間をものともせず、言葉通りソフトボール部で大活躍しただけでなく、学習の面でも本当にいきいきと活動していた。卒業後は英語教育の道に進み、なんと今は母校の桐朋女子で教員となり、職員室では筆者の隣の席に座っている。

一方、お会いする人の中には「この学校に入ったら自分は何をしてもらえますか」と受身の意識が前面に出ている方もいる。自分の (もしくは自分の子どもの)海外での経験をできるだけ高く買ってくれる学校を探そうとする気持ちそれ自身は必ずしも間違ってはいない。だがそういう時に、「では海外ではどんなことを頑張ってきましたか」と質問すると、得てしてしっかりした答えが返ってこなかったりするものだ。

学校は生徒にとって一日の大部分を過ごす生活の場であるが、自ら積極的に関与していかなければ何も得ることはできない。帰国後 充実した学校生活を手に入れるためにも、今通う学校でぜひ実りある経験を積み重ねて欲しい。アメリカのケネディー大統領の有名な演説になぞらえれば、「何をしてくれるかを問うのではなく、自分が何をできるかを問いなさい。」ということである。

 

桐朋女子中学校・高等学校 熊野 孝 

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