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企業からの声

味の素株式会社 監査役室/シンガポール味の素株式会社 前社長 吉川 哲彦 氏

2015.09.25

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グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。企業の担当者に聞きました。

「おいしく食べて健康づくり」を創業以来の志とし、100年以上の歴史を刻み事業展開している御社ですが、現在ではアミノ酸事業を核とする食品分野、バイオファイン分野、医薬・健康分野と幅広く商品開発をされています。日本を代表するグローバル企業へと成長される過程において、新たな価値の創造と開拓者精神はどのように実践されてきたのでしょうか。はじめに御社の紹介をお願いします。

東京帝国大学・池田菊苗博士は、人々の食事をおいしくして栄養を改善したいという強い思いをもっており、1908年に昆布の「うま味成分」がグルタミン酸であることを発見しました。その翌年、創業者の鈴木三朗助が「味の素」と名付け調味料として販売に成功し、当社の歴史が始まりました。以来、「うま味」の発見を創業の礎としている味の素グループでは、アミノ酸開発において世界をリードし、世界各地域の文化に根ざしたビジネスを展開しています。当社は、皆さまご存知の「味の素」以外に風味調味料やメニュー調味料、冷凍食品などの食品や医療用アミノ酸、化粧品、サプリメント、介護用食品、医薬品など幅広い商品を取り扱っています。従業員は日本人がおよそ3,000人、全世界で30,000人以上の非日本人が協働しています。

海外進出は早く、創業の翌年には台湾に輸出、1917年にはニューヨーク事務所を開設しました。現在では世界の国と地域で26拠点、販売拠点は130を超えます。シンガポール味の素は80年余りの歴史を持ち、周辺国の市場開拓や原材料の購入・物流拠点となっています。

御社の事業展開は日本国内よりも海外比率の方が高いとお聞きしています。海外展開を促進する上での難しさと、現場での心構えは何でしょうか。

2014年度の総売り上げは1兆66億円で、日本と海外の売上比率は4:6となっています。今、一番力を入れて取り組んでいるのが「人材のグローバル化」です。そこで難しいのは、異動と待遇の問題です。海外の法人で採用した優秀な人材を国外に動かそうとすると辞める人が出ます。また、日本特有の年功序列や採用方法は特殊であるため、良い人材を集めグローバルに動かすためには、日本人も外国人も同じ処遇にするなど改善していく必要があると感じます。

現在、各国の現地法人はごく一部のトップが日本人で、ほとんどは外国や現地のナショナルスタッフです。今後は国籍に関係なく活躍できる場所と機会が更に多くなりますので、優秀なナショナルスタッフがトップに就く機会も増えていくでしょう。

多国籍のスタッフが協働する現場で心がけるべき点は、自分の考えをはっきり示し、「No」と言える勇気を持つことだと思います。それには理由をしっかり説明し、自分の信念を貫き通す意志が求められます。

また、「常識」を持つことも大切だと感じています。よくグローバルスタンダードという言葉を耳にしますが、根底にある「常識」は世界のどこでも大きくは変わらないと思います。「常識」さえあれば、国籍に関係なくお付き合いができるものです。その「常識」を育むのはやはり家庭教育と考えるので、親御さんが日々しっかりお子さまと接し、対話していくことが大切だと思います。

現在の日本食ブームに先駆けこれほどまでに世界展開を成し遂げられた背景には、大変なご苦労があったのではないでしょうか。

2多国籍展開の根底には、当社は新しい事業や新市場開拓に常に挑戦し続けるという「開拓者精神」があり、これからの100年もお客さまに「新しい価値をご提案したい」という強い信念と情熱があります。インドネシアやタイの市場へ営業に行くと、日本人を見た現地の方から「味の素」と声をかけていただけるほど当社の製品は浸透しています。営業は都市部だけではなく、飛行機を乗り継いで山奥までも赴きます。まだ市場開拓されていないだろうと思い小さな集落へ向かうと、そこには先輩の名刺がすでに置いてあり驚くことも多々ありました。

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