シンガポール発海外教育情報誌サイト

専門家の声 Specialist

この人からエール

学校法人渋谷教育学園理事長 田村 哲夫氏

2016.01.08

LINEで送る
Pocket

人生は「自分で決める」~自調自考の大切さ~

グローバル教育への変遷

戦後の日本が国際化に向けて動き出したのは1980年代、ちょうど経済復興の波にのり、経済的に力をつけた時期でした。それはまさに、日本人がこれから海外で活躍する場がどんどん広がるであろうと予測された時代でもありました。1979年にはハーバード大学教授だったエズラ・ヴォーゲル氏が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を著し、高度成長期の日本の勢いを世界に発信し衝撃を与えました。80年代に入ると「プラザ合意」があり、円高が急激に進行しました。いよいよ日本が世界経済の一員として活躍する時代がきたことを、誰もが実感したのです。

この時期は、日本の「教育」について考え直す時でもありました。明治維新以降、近代化を目指して先進国に追いつけ追い越せという心意気で進められてきましたが、21世紀に向けて、ヨーロッパやアメリカを理想とする教育に終止符を打つべき時が来たのです。同時に、新たな時代に即した教育に必要なことは何か、という議論が活発になりました。まさに日本にとって、「グローバル教育」への幕開けでした。

アジア初の高等学校を設立

日本が世界に目を向け始めたことで海外への渡航も急激に増加し、日本人のための学校も世界各地に設立され始めました。80年代の終わり頃、海外に20校近くある高等学校の全てはヨーロッパやアメリカでした。そこで、アジアで初の邦人向け高等教育機関として、海外生からのニーズをくみとり、91年に渋谷幕張シンガポール校を開校しました。

シンガポールに開校した理由は、まず言語が英語であったことと、東南アジア各地からの利便性の良さや医療の質の高さも魅力だったからです。2002年からは、日本の高等教育機関の中で東南アジアの研究にいち早く取り組んでいた早稲田大学と共同出資する形で、現在の早稲田渋谷シンガポール校になりました。

その頃、経済分野でも日本はアジアで非常に貢献していたので、経済開発のリーダーたる日本人に、将来のアジアの発展のためにしっかり学んでもらいたい、という熱い思いがありました。シンガポールで学ぶ意義の大きさは、過去も現在も、そしてこれからも変わることはないでしょう。

求められる「自調自考」の取り組み

渋谷教育学園の両校(渋谷校・幕張校)の教育目標に「自調自考」があります。ますます複雑化する社会を生き抜くために必要な主体的な行動の原動力であり、複雑化した課題を解決する力を養うための教育方針です。

この力は、グローバル時代に生きる子どもたちにとって更に求められるものだと感じます。グローバル社会では、次に何が起きるかわかりません。つまり生徒一人ひとりが考えて主体的に生きていくことが非常に大切で、自分で切り拓いていく積極性が強く求められるのです。

生きるために必要な資質で最も基本的なものに「自分で決める」ということが挙げられます。残念ながら、これは周囲と同意を得てものごとを進めることを良しとする日本ではなかなか育ちにくく、弱い部分でもあります。なぜ「自分で決める」ことが大切かと言えば、自分で決めることによって「自己肯定感」や自分で責任を取る覚悟を感じることができるからです。

内閣府による若者の意識調査では、日本人は世界的に比較すると「自己肯定感」が低く、自分に対する信頼が薄いという結果が出ています。それは「自分で決める」という行為が十分に行われていないからに他なりません。子どもは、自分の人生に必要なことを高等教育機関で身につけます。つまり思春期の6年間で、自ら調べ・学ぶ習慣を身につけることにより、その後の人生の確たる基盤ができるのです。その基盤ができていないと大学に行っても何をしたら良いのかわからなくなり、五月病になったり何も身につかないで終わってしまうことになりかねません。人生で最も多感な時期にこの力を養い日々実践することは、将来に向けて大きな糧になると確信します。

1 2
LINEで送る
Pocket

PAGE TOP