子どもが生まれつき言葉を学ぶ能力を持っているように、親も本能から言葉を教えようとします。親が赤ちゃんや幼児に、高く歌うような声で繰り返し話しかけるのは世界のどの文化でも共通です。言語学者が「親語」と名付ける言葉を無意識のうちに使い、知らず知らずのうちに言語教育をしているのです。まるでメロディーのように余分な言葉を取り除いたわかりやすい話し方は、「物」と「呼び名」を結び付け、子どもの理解力を高めることにつながるとわかっています。また「親語」は、文法規則を学ぶときに必要な単純化された構文と反復練習を子どもに与えます。子どもは無条件に自然と話せるようになるのではなく、愛情を持って親が言葉を教えるから話せるようになるのです。
まだ返事や会話ができない月齢であっても、親の話しかけは子どもが言葉を覚える上では決定的な意味を持ちます。著名な育児書「Magic Trees of the Mind」で、著者のマリアン・ダイアモンド博士とジャネット・ホプソン氏は「あらゆる機会に子どもに話しかけて欲しい」と述べています。言い換えれば、子どもに常に言葉を与え続けて欲しいということです。幼児期に絵を一緒に指差すこと、親の言葉を真似させること、効果音を会話に入れることなどは、子どもの集中力を伸ばし、子どもを会話の内容に引き付けるでしょう。
新しい言葉を使うときは、実生活でその言葉を実感できる状況を選ぶことも大切です。例えば「後で」と「今」という時間の概念は、大好きなお菓子をもらえる時間や公園に出かける時間と結び付けて使われると、子どもは早い理解を示します。また、2歳のお誕生日が近づくころ、「物の名前を見つけよう」とする子どもの本能的欲求はピークに達します。家の中で見るもの、車で通り過ぎていく景色、近所の店先に並んでいるものなど目につく物すべての名前を知りたがりますが、子どもの尽きない興味にぜひ応えてあげてください。
「一緒にする」ことも子育てで忘れてはいけないことです。抱っこしながら会話をしたり、一緒に本を読んだりすることは、親子の愛情を深めスキンシップの機会を増やします。それは言葉の習得を促進させていくでしょう。