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企業からの声

小学館アジア社長 加治屋 文祥氏

2016.04.25

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グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。企業の担当者に聞きました。

小学館と言えば、図鑑や月刊誌などだれもがなじみのある出版社で、子ども時代をともに過ごした方も多いと思います。近年は少子化で日本マーケットが縮小する中、海外展開は重要な経営戦略の一つだと思います。東南アジアの拠点である小学館アジアの役割について教えてください。

小学館は1922年の創業当初から「おもしろくて、ためになる」をキャッチフレーズに、楽しく学べて学習意欲を高める雑誌を出版してきました。最初は「小学五年生」「六年生」といった学年別学習雑誌に始まり、現在では子どもから大人まで、各種雑誌をはじめ絵本や図鑑、学習書、小説などの書籍、そして電子書籍も販売する総合出版社で、本社には現在約750人の従業員がいます。

小学館アジア社長 加治屋文祥氏

小学館アジア社長 加治屋文祥氏

海外展開は、86年のアメリカ・サンフランシスコを皮切りに、ヨーロッパはパリとベルリン、中国では上海市、台湾において出版事業を行ってきました。東南アジアでは20年以上前から、各国の現地出版社をパートナーとしてライセンスの許諾による出版が行われてきました。

「小学館アジア」の設立は2013年で、成長著しい東南アジアマーケットが拡大する中、積極的に小学館独自の展開をしたいと考えました。シンガポールにおける唯一の日系の出版社で、本社100%出資子会社です。すでに小学館アジアとして「ドラえもん」「名探偵コナン」などのコミックスを16タイトル83巻、「原寸大恐竜館」などの教育関係書籍4タイトル18巻を、英語版で出版しています。まずはアジア各国でも英語で読む層を想定して、英語出版を第一に手がけている段階です。今後さらにタイトル数を増やし、現地の学校などにも利用していただきたいと考えています。

東南アジアの中でも、シンガポールでは全般的に教育への関心が非常に高いのですが、他の国々はようやく所得水準が上がってきて、教育への関心が高まってきている段階です。タイ、インドネシア、フィリピン、インド、カンボジアなど、今後さらに発展が期待される国々で、楽しみながら学習意欲を刺激するような書籍や学習まんがなどを多言語で出版し、国全体、地域全体の教育と文化水準の向上に貢献できればと考えています。

出版業界は、言葉や制作手法の違いなどもあり、グローバル化が進みにくいイメージがありますが、今後、どのような展望をお持ちでしょうか。

確かに、普通の商品と違って日本語で書かれたコンテンツが商品ですからそのまま海外で売ることができません。現地の言葉に翻訳し、内容が文化的に受け入れられるものかどうかの調整が必要になる場合もあります。例えば有名なキャラクターのコミック作品でも、女の子がお風呂に入っている場面などは、国によっては「不適切」という見方をされることもあります。そのような場合は作家の方の了承を得て、湯気を描き足して修正するといったことが必要になります。また、恐竜の本では恐竜の名前や説明を単純に翻訳するだけでは足りず、最新情報のアップデートや専門用語のチェックに英語版独自の監修者をつけることも珍しくありません。加えて虫や植物の本には地域性があります。「この国にはこんな虫はいない」「こんな花は見たことがない」ということがありますから、現地にどこまで合わせるかという調整が必要になります。

一方、マンガでは作品の背景にある日本の文化、例えば礼節を重んじたり、物を大切にするといったような日本的な価値観自体が外国の方から見て興味深かったり、良いものとして尊敬されたりします。作品のエンターテイメント性はもちろん重要ですが、実はそういった日本的な良い要素が根底に流れているからこそ世界的に注目されている側面もあります。この点は大切にしたいポイントですね。

また、現地発のコンテンツ発信も現地の作家と協力して手掛けているところです。日本発の「ポケモン」「ドラえもん」「コナン」などは海外で大人気ですが、やはりアジアに拠点を置く出版社として、今後はローカル発のヒーローやキャラクターなどもプロデュースしていきたいと考えており、各国のクリエーターたちとの協力を進めています。またそのプロセスで、編集者と作家が緊密に協力しながら、緻密で映画のように展開していくストーリーを作り上げる日本独特の制作手法のノウハウも役に立ててもらえたらと考えています。

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