Kids' Health
~キッズ・メディカルの常識~
日本メディカルケアー
鍋島 寛志 医師より
秋田大学医学部卒業、東北大学大学院修了、医学博士。東北大学と関連病院で産婦人科医として勤務し、2012年来星。2015年日本メディカルケアーに着任。『未病を治す(病気になる前に予防する)』をモットーに、健診や予防接種などを含めた予防医学の観点から診療を行う。日本では主に不妊内分泌外来を担当。
1.「子宮頸がん」ってなに?
皆さんは「子宮頸がん」を聞いたことがありますか?「がん」は、まだ自分とは関係のない病気だと思うかもしれません。確かに多くのがんは年齢が高くなるとかかりやすくなるので間違いとは言えないのですが、例外もあります。代表が「子宮頸がん」です。20代~30代の女性に発症しやすく、年々若い人に増えています(グラフ1)。あなたが高校生であれば、数年後には発症する可能性もある身近な病気なのです。
「子宮頸がん」は、最も原因がはっきりしているがんで、ほとんどは子宮頸部(図)に「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスが感染することによって発生します。HPVは100種類以上の型があり、一般には、感染しても免疫で排除されます。しかし、一部の型が子宮頸部に感染し、うまく免疫が働かず感染が続いた場合、がんの前段階の異型細胞になり、さらに数年が経過するとがん細胞に変化します。進行したがんは、命にかかわる可能性があり、大きな手術や抗がん剤、放射線治療などの大変な治療をしなくてはなりません。ですから、早く見つけて治療をすることが重要です。
幸いなことに、「子宮頸がん」は早く見つかれば子宮の入り口を削る円錐切除術で治るので、20代になったら定期的に子宮頸がん検診を受けて早期発見する必要があります。
2.予防はできないの?
HPVによっておこる「子宮頸がん」は、感染を防げばならないはずです。ただHPVは免疫を逃れる機能があり、感染前に免疫を高めないと防ぐことができません。そこで開発されたのが「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)」です。
がんになりやすい型を狙って、事前に免疫をつけることにより感染を防ぎます。日本ではハイリスクのタイプ16と18を防ぐワクチンが使われています。欧米では16と18が圧倒的に多いのですが、日本では52や58など他の型も多く、カバー範囲が少ないのが問題です(グラフ2)。シンガポールでは、タイプ 6、11、16、18、31、33、45、52、58の9種類を網羅した新型のワクチン(Gardasil9)が昨年から認可されたので、この欠点が解決しました。
3.「HPVワクチン」は危険だと聞きますが。
日本では、2013年に「HPVワクチン」が定期接種として認可されましたが、その年、副作用報告が続き、接種勧奨が中止されてしまいました。現在では世界130ヵ国以上で「HPVワクチン」が使われており、そのうち約60ヵ国は公費負担で行っています。今のところ問題はほとんど報告されておらず、WHOの調査でも安全性と有効性が確認されています。
このワクチンは、自然免疫がつきづらいHPVの抗体価をあげるために「アジュバンド」という物質を一緒に打ちます。そのため、他のワクチンに比べて少し痛みが強いことが副作用の原因ではないかと言われています。痛みは自然におさまるのですが、思春期の女性は刺激に敏感なため、痛みの刺激で機能障害が引き起こされるという機序が考えられています。
定期接種としては小・中学生が推奨年齢ですが、心配であれば、もう少し高めの年齢でも良いかもしれません。HPVは性交渉をきっかけに感染すると言われているので、確実な予防のためには、セクシャルデビュー前の接種が重要です。誤解してはいけないのは、ワクチンは90%以上の子宮頸がんを予防しますが、100%ではないため、子宮頸がん検診を受けなくても良いわけではありません。ワクチンと定期検診で、子宮頸がんから子宮を守りましょう!
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