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この人からエール

女優・ユニセフ親善大使 黒柳 徹子さん

2016.09.23

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~子どもは子どもなりに考えている~

はじめに

子どもの頃、一般的に言えば「問題児」だったような私に対して「きみは本当は、いい子なんだよ」と、言い続けてくださった校長先生。「子どもだもの」と、一度も叱らずに、やりたいことをやらせてくれた母。自分らしく生きながら楽しく仕事をしてこれたのは、多くの温かい大人たちにいつも認めてもらっていた子ども時代があったからだと思います。

女優・ユニセフ親善大使 黒柳 徹子さん

窓ぎわのトットちゃん

私は小学校1年生の時に、入学した小学校を退学になりました。担任の先生は、「他のお子さんの迷惑になるから、よその学校に連れて行ってください」とおっしゃったそうです。理由としてあげた「迷惑な行為」は、教室の窓際に立って、すぐ向かいの文房具屋さんのおばさんとおしゃべりしたり、外を通ったチンドン屋さんを呼び込んだり、巣作りしているツバメに「何してるのー?」と大きな声で叫んだり、確かに迷惑千万なことばかりです。今思えば、私は学校という場所が何をすべき場所なのか、よく分かっていなかったようです。でも、母は私に「他の学校に行ってみない?」とだけ言って転校させたので、私は20歳になるまで「自分は退学になった」ということを知りませんでした。大人になってから詳しく聞いた時、母は「子どもだもの、それくらいするだろうな、って思った。あなたが悪いとは思わなかったわよ」と話していました。

もしその時に「あなたは、こんな悪いことをしたから退学になったのよ」と言われていたら、きっと私は新しい学校を楽しめなかったのではないかと思います。「みんな、私が退学になったってことを知ってるのかしら」「他の子も、退学になった子なのかな」などと余計な心配や勘繰りをしてしまったでしょうから。

新しい学校での初日、学校に着くなり校長先生はお部屋で、「何でも話してごらん。話したいこと全部」とおっしゃいました。私は張り切って、今乗ってきた電車のことや飼っている犬のことなど、思いつくことを全て話しました。その間、4時間。6歳の子どもが初対面の大人に向かって4時間も何を話したのかしら、録音していたら面白かったのに、と思います。

女優・ユニセフ親善大使 黒柳 徹子さん 小学生のころ

小学生のころ

もしその間に、少しでも先生が腕時計を見たり退屈そうな素振りをしたら、きっとそこまで話が続かなかったと思うのです。でも校長先生は、「へぇ、それで?それからどうしたの?」って、すごくよく聞いてくださいました。それでとうとう、もうお話しすることが尽きてしまった時に、「ああ、話が終わっちゃったら、もうこの人とお別れしないといけないのかな」と悲しくなったのを覚えています。子どもは、自分の話をよく聞いてくれる人のことを信頼して好きになるものですね。

その後、この大好きな校長先生が私を見るたびにおっしゃった、「トットちゃん、きみは本当は、いい子なんだよ」という言葉が、何十年過ぎてもいつも私の心を照らす灯のように自信を与えてくださいました。

女優・ユニセフ親善大使 黒柳 徹子さん NHK時代

NHK時代

子どもは子どもなりに考えている

5歳の時、「結核性股関節炎」という病気で脚を悪くして入院したことがあります。隣の病室に私と同じくらいの女の子が同じ病気で入院していました。私は運よく完治して普通に歩けるようになりましたが、退院後しばらくしてから、自宅の近くで道の向こうからその女の子が赤い松葉杖をついて歩いてくるのに出会いました。女の子は私の顔を見ると、さっと目線を落として私の脚を見たのです。私はとっさに「あ、この子に私の治った脚を見せてはいけない。きっと悲しくなるわ」と思いました。それ以来、近所で赤い松葉杖が見えるといつも、私は物かげに隠れたりしていました。

それから、最初の小学校でクラスにいつも怒鳴っているような女の子がいました。「誰もいじめたりしていないのに、どうしていつも怒ってるんだろう」と気になって、「よそで辛い目に遭ってるのかな。お友だちになってあげようかな」と考えたことを、今でも覚えています。

またトモエ学園では、身体的に障がいのある児童も何人か通っていて、校長先生はいつも「みんな一緒にやりなさい。一緒だよ」とおっしゃっていました。「助けてあげなさい」とはおっしゃいません。そこで、子どもたちは当たり前のように知恵を絞って、全員が一緒に楽しく遊べる方法を考え出しました。

こうして思い出すと、5歳や6歳の小さな子どもでも、自然に人のことを思いやれて、いろいろなことを考えていることに気づきます。言葉ではまだうまく言えなくても、子どもの言動の背景にはその子なりの考えや、感じていることがあるのですね。大人には迷惑なことも、本人は一生懸命考えて、良かれと思ってやっていたということもあります。ですから、大人が子どもの気持ちを傷つけないように、それをくみ取って理解しようとしてあげることは、とても大事だと思います。

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