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企業からの声

日本航空株式会社 シンガポール支店 支店長 山下 康次郎 氏

2016.11.25

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グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。企業の方からお話をうかがいました。

御社は日本のフラッグ・キャリアとして、多くの海外在住の日本人にとって大変親しみのある企業です。また、きめ細かいサービスはシンガポールをはじめ世界的にも定評があります。ここに至るまでの御社の歩みについてお聞かせください。

当社は1951年に「日本航空株式会社」として、日本政府主導による半官半民の体制で設立されました。当初は国際線専門の航空会社で、定期便の第一号は53年にスタートしたサンフランシスコ便と香港便で、シンガポール便もこの草創期に開通した便の一つです。

当社の歴史を振り返ると、忘れてはならないのが1985年の御巣鷹山の事故になります。御巣鷹山の事故は、犠牲者の数が史上最も多い大変痛ましい事故でした。この事故を教訓とし、当社は安全に対する意識を根本的に変革し、二度とこのような犠牲は起こさないことを誓っております。事故から30年あまりですが、「お客さまの安全に対してはいかなる妥協も許さない」という姿勢は今後も変わりません。

日本航空株式会社 シンガポール支店 支店長 山下 康次郎 氏

日本航空株式会社 シンガポール支店 支店長 山下 康次郎 氏

また、皆さまも記憶に新しいと思いますが2010年に会社更生法を申請し経営破たん致しました。ご迷惑とご心配をお掛けしましたことをお詫びすると共に皆さまの温かいご支援をいただき本日を迎えることが出来ております。本当に有り難うございます。

経営破たんは、経営面で会社が生まれ変わった大きな節目でした。破たんに至った理由としては、「社会インフラ」を担う会社として、採算性を度外視し社会貢献を第一に考える旧来の経営から脱却していなかったこと、そして、海外旅行の一般化が進むのと並行して、2000年代に新型の「ハイテクジャンボ」と言われたボーイング747ジェット機を100機も購入するなど急速な拡大を続けたことが引き金となったと考えています。

再建にあたって稲盛和夫会長(現名誉顧問)が大きな役割を果たしました。稲盛会長が当社にもたらした最も重要な変革は、リーダーの「意識改革」です。組織はまずリーダーから変わらなければならないこと、そして改革には何よりも「考え方」の変革が必要であることが徹底されました。それが明文化されたのが「JALフィロソフィー」です。その第一章に「人生・仕事の成果=考え方×熱意×能力」という言葉があります。能力は高い方が良く、熱意もないと困る、しかしそれだけではだめで、そもそも「正しい考え方」を持っていなければ、能力と熱意をプラスの方向に働かせられない、ということです。

「採算性を上げる」という目に見える目標に向かって、目に見えない「考え方」を変えるところから始められたのですね。この努力は、現在御社の中でどのような形で実を結び、定着されていますか。

再建当初に指摘されたのが、「採算性を優先させたら、安全性や快適性の面で妥協しなければならなくなるのでは」という懸念でした。しかしこれは「安全第一、お客さま第一」という私たちの「正しい考え方」からすると、全くの杞憂です。お客さまにとって最重要事項である安全性と空の旅の快適性は当社が提供するサービスの根幹ですから、これらを妥協することはありません。

例えば皆さまにもご利用いただいているシンガポール線は、エコノミークラスの座席の幅が通常よりも大きく、またビジネスクラスは全席フルフラットになりました。スペースをとるため全体の座席数が減り、採算面だけを見れば好ましくありませんが、「無駄なコスト」は徹底的に削りながらも、「お客さまの快適性、ラグジュアリー感はきちんと確保する」という、JALとして最適なバランスを取っているのです。

近年はLCC、バジェットエアーの種類も便数も増えていますが、急速に変わりつつある航空業界において、今後の戦略としてはどのようにお考えでしょうか。

バジェットエアーと当社のようなネットワークキャリアでは、マーケットの質も量も異なります。例えて言えば、LCCは湖の中の対岸を往来するための船です。湖岸の住民は頻繁に、ご飯を届けたり日常的な物品をやりとりするために行き来するイメージです。これに対して、ある湖から、遠くにある別の湖まで人を運ぶのがネットワークキャリアです。マーケットはどちらが大きいかと言えばLCCの湖の中で対岸に往来する方が大きく、また値段を下げれば下げただけ乗る人が増え、市場は人口の分だけ拡大していくでしょう。これに対して当社のマーケットは、微増する余地はありますが、それほどは増えないものと見込んでいます。

対象にするマーケットの中身も大きさも異なる「ニッチな産業」であることを意識した上で、そこにあるニーズの特徴やボリュームを理解し、供給量やサービスの質を決めていく、戦略的なビジネス展開をしていきます。

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