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コラム

「絵を描く事は思考すること」高橋 万弥さん / スタジオ ミュウ シンガポール主宰

2012.06.25

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~アートとの出会い~

シンガポールで16年、日本での絵画教室指導年数も合わせると25年の指導経験をもつ高橋さんが、子どもとアートの関わりを考えます。

絵を描くことは思考すること

デッサン(素描)は、絵を描く技術を向上させるためだけではなく、実は物事に対する理解力を深める訓練でもあります。たとえば、リンゴの色や形を表現するにはその感触や香り、味までも考慮して、リンゴが実った過程や光、風などにも想いを馳せることが必要です。日常の中で洞察と想像をする習慣を持ち続けることが、子どもたちの将来にとって大切なことは言うに及びません。立体の、見えない向こう側の形を予測して表現する作業は数学的概念の成長を促しますし、観察して表現し続けることは文章を書く時にも役立つでしょう。また、情報が氾濫して様々な知識が手に入る現代だからこそ、子どもに物事の本質とは何かを問い実在感をしっかりと持ち続けさせることが大切です。人との比較ではなく、また、どれだけ写実的に描けているかということでもなく、毎日の生活上の出来事や身の周りの物を360度の視点から独自の観察眼で描くことを促し尊重しましょう。

11歳男児の自画像。じっと自分を見つめて描いていました。

絵に込められたメッセージ

子どもたちの絵には、うれしい時や悲しい時など、その時々の感情が如実に表現されます。成長の過程では自分の想い通りにならない場面に必ず突き当たるものですが、もしそんな気持ちを絵にぶつけられるとしたら、客観的な視点から問題を解決する糸口を自分自身で見つけることができるかもしれません。思春期へ向かう準備のひとつとして、絵を描くことで自分の想いを表現する方法の選択肢を持つことは大変意義のあることです。絵を描くことは思考することであり本質を問い客観的に見つめることですから、自画像を描いてみれば未来を見つめる自分自身を発見できるかもしれません。幸せな気持ちの時に描いた絵、寂しい時に作った作品、それら心のこもった作品一つ一つが自分の成長の記録であり生の証です。作品を通じ、そういった自分の歩みを振り返って見ることができると、思春期の悩める時期が来ても自尊心を持ち続けて進むべき道を見つけられるのではないでしょうか。子どもとアートに携わる人間の一人として、子どもたちがより多くの自分の可能性に出会い、挑戦する姿勢を持ち続けることを切に願います。

 

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