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企業からの声

東京海上日動火災保険株式会社 執行役員 Tokio Marine Asia Pte. Ltd. Managing Director 前田 一郎氏

2017.11.24

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海外では心身ともに強靭であれ
グローバルに活躍するためには、どんな逆境にも負けず、
やり通すタフさが必要だと実感したのです。

グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。企業の方からお話をうかがいました。

東京海上日動火災保険株式会社 執行役員 前田 一郎氏

Q 御社についてご紹介ください

現在私が駐在するシンガポールでは、アジア大洋州統括会社のTokio Marine Asia社、損害保険会社のTokio Marine Insurance Singapore社、生命保険会社のTokio Marine Life Singapore社の3社を軸として事業展開をしています。同3社には日本人駐在員が約40名、地元スタッフは600名ほどで、圧倒的に地元スタッフが多い当地に根ざした企業です。

2000年以降はシンガポールに限らず、新興国市場展開や欧米市場での2兆円近いM&Aにより、海外事業を本格化してきました。その結果、グループ純利益の約4割を海外事業が占めています。

Q 世界展開する上で大切にしていることは

現地のお客様の「信頼」をあらゆる事業活動の原点におき、お客様本位でいることが大切だと考えています。「保険」とは万が一の時に役立つ「安心と安全」を提供する仕組みです。利益を追求するだけではお客様から支持されるはずもなく、むしろ、「信頼」を得る仕事をしていれば利益は自然についてくると考えています。実際に、東日本大震災でお客様が未曾有の災害に遭遇された時も、あくまでもお客様最優先で行動し、ご提供するサービス品質にとことんこだわりました。

保険の約款も、外資系会社の場合「どのように支払いを断るか」というスタンスで解釈する場合がありますが、当社では「どうしたら保険金をお払いできるか」と考えます。国ごとの文化慣習に依るところもあるでしょうが、海外事業会社にも一貫してこの価値観を浸透させ「信頼」を得るべく努めています。

Q 御社が求める人材とは

2000年以降、海外展開を本格化する中で、外国籍で海外大学出身者の採用も開始し、本社でもアジア系や欧米系のスタッフが働くようになりました。外国人の執行役員も5名ほどいます。

我々が必要とする人材は、「自ら考え、発信し、行動する個性豊かな学生」です。更には、常に問題意識を持ち、自ら考え解決策を創り出せる人です。新卒者の中にはTOEIC900点以上の高い英語力を持つ日本人もいますが、グローバル展開に必要な人材としては、語学力以上に、人物・能力・資質を重視しています。採用にあたって留学経験者、帰国生を特別扱いすることはありませんが、そのような資質を築く過程で海外生活での経験が大いに役立っているように思います。在外日本人はこれからも増える傾向ですし、国内外で活躍する企業では、自ずと今まで以上に海外生が活躍する場が増えていくことでしょう。

Q グローバルに活躍するための資質とは

私自身、入社37年の中で16年間が海外勤務です。時を分けて米国に駐在し、ASEANやインドに駐在する機会がありました。長期にわたり海外勤務をして痛感したことは、以下の3つです。

1つ目は「心身ともに強靭であること」です。約30年前のジャカルタは、今日の状況とは程遠く、まだインフラが整っていない環境でした。殊にインドのニューデリー駐在の際には、一言では語りつくせない困難が次から次へと起こりました。例えば外国人が何かをしようとする時に、さまざまな規制や予想外のコストが発生するなど、思いがけない障壁をいくつも超えなければなりませんでした。グローバルに活躍するためには、どんな逆境にも負けず、やり通すタフさが必要だと実感したのです。

2つ目に必要なことは「人間性」です。海外という異文化の中で、多様な価値観を柔軟に受け入れることが大切なのは、言うまでもありません。しかし、無国籍のようになることは非常に危険なことです。日本人として自国の歴史・文化をよく学んだ上で、赴任国の歴史・文化を理解することが重要なのです。インド駐在時代には、日本人会理事として日本人学校の理事長職と付属幼稚園の園長職を拝命しました。同校の理念に、「祖国を愛し、伝統と文化を理解すると共に、他国を愛し、他国の文化を尊重できる、他国の人々に尊敬される品格を身につけた児童・生徒を本校より輩出していく」という節がありました。自国の文化を理解できず愛せない人が他国の文化を理解し尊敬できるはずがありません。これは正にグローバルビジネスでも必須の考えなのです。

3つ目に必要なのは「徹底した語学力」です。英語であれ他の言語であれ、世界のビジネス界で戦うためには、仕事の内容や必要な知識を完全に理解し、自分の考えを正確に発言できる語学力が必要でしょう。言葉だけでなく、論理展開の進め方も重要です。欧米流とも言える、はじめに結論、次にその背景と締めくくりを話すという「三段論法」ができるようになることは、海外でのビジネスでは必須だと感じます。その上で、国際舞台で発言・交渉する場数を踏むことが不可欠なのです。

Q 海外で子育てをするご家族へ

私が過去に経験した4つの立場から、その思いをお伝えします。まずは私自身が、小学校時代を香港で過ごした、いわゆる「帰国子女」としての思いです。日本人学校に通っていたため、英語などの外国語が強化された訳ではありませんが、「異国に住む違和感がなくなったこと」と「異文化への対応力が養われたこと」は、その後の人生でも非常に役立っています。親御さんの転勤で海外生活をする機会を得たお子さんは、世界と日本の両方を見る貴重な経験をしているという点で大変恵まれており、「一生の財産を得ている」ことに気づいていただきたいと思います。お子さんによっては新しい環境になじめないこともあるでしょう。その場合には無理して現地校やインター校に通うのではなく日本人学校を選択され、お子さんの負担が少なく安心して通える環境を整えていただきたいと思います。

次に、ジャカルタやロサンゼルスで子どもを帯同した時の「海外生の父親」としての思いです。長女はロスで現地校に入り高校を卒業しましたが、年齢が大きくなってから英語環境に入るのは、本人にも家族にも大きな覚悟が必要でした。今思い返すと、正に「根性」で乗り切った感覚さえあります。お子さんが現地校やインター校への挑戦を希望する際には、家族で一丸となって応援していただきたいと思います。学習面においても、家庭教師をつけるなどきめ細やかなサポートが必要でしょう。スポーツなどで多国籍のクラスメートから認められることもあると思います。正に「芸は身を助く」で、語学が上達するきっかけにもなります。お子さんの得意なことは、大切に伸ばしてあげてください。

3つ目はインド駐在時の「日本人学校理事長」の経験からくる思いです。当時、在留日本人の増加に伴い、日本人学校の新校舎建設に向けて取り組みました。それは八木毅大使閣下や在外大使館、海外子女教育振興財団や多くの企業の皆さんとともに官民一体となって成し遂げたことでした。海外で育つ子どもへの「教育」は、そのお子さんの人生を左右し、ひいては日本の将来を担う重要なことです。世界各地で企業活動を行いながらも、我々大人は、保護者として企業人として子どもたちがより良い環境で学んでいけるように、全力を尽くす責務があるのだと感じます。
最後に、保険会社としての思いです。海外生活ではどんな国であれ、感染症、事故、テロなどの危険が高まるものです。各国の衛生・治安面に注意をして、ご家族皆さまで貴重な経験や楽しい思い出を作っていただくとともに、病気や事故がなく楽しく駐在期間を終えて帰国されることを、切に願っております。

会社概要

東京海上日動火災保険株式会社

「To be a Good Company」をコンセプトに、保険業務を世界展開

1879年(明治12年)海上保険を提供する日本初の保険会社として、前身の東京海上保険会社が誕生。開業当時より国内および諸外国で事業を図る。現在、世界38ヵ国・地域、469都市に海外駐在員270名、海外ローカルスタッフ約23,000名と、国内124ヵ所に日本人スタッフ17,000名を擁する。(東京本社内には、駐在家族と帰国子女の支援団体「フレンズの会」を設置。駐在前研修や教育相談窓口を持つ)

前田 一郎 氏

1981年 早稲田大学商学部卒、東京海上火災保険株式会社入社。インドネシア、米国、インドで駐在を経験。
2012年 東京海上日動火災保険株式会社 理事 アジア・ニューデリー首席駐在員を経て、14年 執行役員 アジア・ニューデリー首席駐在員。
2016年より現職。

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