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企業からの声

カジマ・オーバーシーズ・アジア 取締役社長
杉本 弘治 氏

2018.03.23

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社会を変えていこうとする、
そんな心意気とエネルギーを持つ人材が求められています

国際化は待ったなしですから、国の垣根を分け隔てなく超え、外国人と交われる資質は間違いなく必要になります。その後はさらに外に目を向けていかなくては、あっという間に世界から孤立してしまうでしょう。

グローバル時代を迎えた今、企業が求める人材、教育とは何でしょうか。企業の方からお話をうかがいました。

カジマ・オーバーシーズ・アジア 取締役社長 杉本 弘治氏

カジマ・オーバーシーズ・アジア 取締役社長
Kajima Overseas Asia(HQ) Pte Ltd.
Managing Director 杉本 弘治 氏

Q 御社について教えてください

鹿島は1840年の創業以来、日本の建設業界において、交通インフラや国土開発、高層建築など時代の先駆的なプロジェクトを手がけることで、国家の発展に貢献してきました。皆さまに馴染みがあるものとしては、東海道新幹線や原子力発電所、霞ヶ関ビル、最高裁判所、両国国技館などが挙げられます。また世界最長の吊り橋である明石海峡大橋や羽田新空港、東京駅、姫路城なども手掛けてきました。

1954年に東南アジアへ進出し、88年には地域統括現地法人としてシンガポールに当社が設立されました。以来、アセアン地域および香港、インドにおける開発・建設・設計エンジニアリングの3つの事業を展開しています。当地では、ミレニア開発やUEスクエア、セントレジスホテル、そして複合リゾート「リゾート・ワールド・セントーサ」などが代表的な事業です。

Q 海外オフィスをマネジメントされる上で、工夫されている点は

鹿島の海外展開の特徴は、現地法人主導により地域に根ざした事業を展開していることです。そして東南アジアの事業統括を担う当社の仕事は、いわばオーケストラの指揮者のようなものだと感じています。設計エンジニアリングから建築施工、メンテナンスまでを一気に手がける中で、多様な文化を持つ現地スタッフをまとめるのは決して容易ではありません。いわば、形も音色も異なる楽器の魅力を理解し、みんなで一つの音楽を奏でているようなものです。

東南アジア管下の当社グループ社員数は約2,700名にのぼり、そのうち日本人は約170名、その他マレーシア、フィリピン、ベトナムなど国籍は多岐に渡ります。そのためスタッフ一人ひとりに、手がけているプロジェクトが「いかに社会に貢献し、人々に喜んでもらえる仕事であるか」という共通認識を持たせることで、鹿島の一員として士気を高めるよう努めています。社員一人ひとりに責任を実感してもらう機会を多く与えており、外部の方々がプロジェクトを視察される機会には、できる限り作業の様子を見ていただくようにしています。緊張感から現場の雰囲気も引き締まり、責任感とチームのモチベーション向上に繋がるからです。

また社員への表彰制度を設けるなど、チームメンバーの努力を認め、お互いを尊重しているということを示す機会をできるだけ作るようにしています。そうした日々のコミュニケーションや努力の積み重ねの果てに手にするプロジェクト完成時の達成感は、言葉では例えようのない大きな喜びとなります。

Q 日系企業として大切な姿勢は

シンガポールという国は合理的で決断力があり、また新技術の導入に積極的であるという特徴があります。プロジェクト受注の審査においては、価格の比較だけではなく、これまでの安全成績や品質の実績、技術提案などを全て考慮された上で決定されるので、非常にフェアだと感じます。ただ、官民ともに世界各国から障壁なくアイデアを受け入れる姿勢のため、我々がプロジェクトを受注するためには日系同業他社だけでなく、周辺国である韓国や中国、ヨーロッパ、そしてローカル企業を含むとても厳しい競争を強いられます。

このような市場の環境下では、日系企業であれども従来の日本のやり方では通用しません。まず日本の建築に欠かせないのは耐震性ですが、シンガポールでは地震が起こらないため、当然耐震性強化の優先度は低い訳です。そのため建築デザインへの制限が少なく、非常に自由度が高い点も特徴的です。実際に最近の集合住宅やホテルでは、地上で箱状に組み立てた部屋を積み上げるPPVCという工法がシンガポール政府によって推進されています。このような政策や方針の違いは数多くありますから、我々は日系企業だから日本のやり方を守り抜くのではなく、日系企業の強みを生かしたうえで、現地のニーズと環境に即した新しい提案が常に求められているのです。

こうした事業環境をよく理解し、鹿島グループとしても常に最先端の技術を提供し現地に貢献し続けるという姿勢が欠かせません。

Q 日本人が国際社会で活躍するために必要なスキルは

まず外国に対するハードルをなくすことです。日本も徐々に国際化が進んではいますが、まだまだ外国人、とくにアジア人に対する偏見があることは否定できません。成長著しいアジア諸国への関心が薄いことは、非常に残念なことだと感じています。国際化は待ったなしですから、国の垣根を分け隔てなく超え、外国人と交われる資質は間違いなく必要になります。建設業界では「日本が今のままで通用するのは2020年の東京オリンピックまで」と言われています。その後はさらに外に目を向けていかなくては、あっという間に世界から孤立してしまうでしょう。

Q 御社が求める人材は

鹿島が社名に「建設」をつけないことには理由があります。それは、建築物の設計・施工だけでなく、多様なソリューションを提示できる「総合力」を提供している会社であるからです。建設は地球最大規模の「ものづくり」です。その源は「技術力」と「人材」だと考えています。

3月を迎えるたびに、我々日本人は2011年の東日本大震災への思いを新たにし、鎮魂と不屈の精神を強めます。震災直後から、弊社は社員一人ひとりの「現場力」を活かして復旧・復興に取り組み、建設会社として長年蓄積してきたノウハウを生かすべく努めました。災害対応だけでなく、人と人をつなぐライフライン、豊かな暮らしを叶える街を作ること、それが私たちの使命だと感じています。この使命のために、社員一人ひとりの気持ちが一つにならなくてはなりません。

被災地のみならず、世界中のどの現場においても人の気持ちを理解し、社会を変えていこうとする、そんな心意気とエネルギーを持つ人材が求められています。世界はかつてないほどのスピードで変化を遂げています。そのスピード感に臨機応変に対応しようとする柔軟な考えを持つことも大切でしょう。

世界で活躍するためには、何事にも果敢に挑む行動力と前向きな思考力を発揮してほしいと思います。鹿島の海外派遣にあたっては、じっくり現地を理解すること、そして一通りの現場経験を通してこのような力をつけてもらうために、5年間程度の任期で派遣しています。

Q 海外で子育てをされるご家族へ

我が家は、長男が生まれてから高校卒業までマレーシア、英国、シンガポールで過ごし、次男もシンガポールで高校を卒業しました。今振り返りますと、日本の受験戦争やいじめといった問題から少し離れた暮らしの中で、のびのびと育てることができたことは良かったと思います。

海外と言ってもさまざまな国がありますが、一番大切なのは「その国のことをよく知り好きになること」です。シンガポールは多種多様な価値観が溢れており、日本人に対して概して好意的だと思います。治安がよく、日常生活が送りやすいことは非常に大きな利点と言えるでしょう。文化的にはアジア圏のさまざまな人種や文化が共存している上に、合理的な欧米の価値観も受け入れている大変稀有な環境です。今後、世界中の人々と交わっていくであろう子どもたちにとって、このような異文化を身近に実感できる海外生活は、間違いなく貴重な財産となるはずです。皆さまにもぜひ、限られた海外生活を楽しみ、お子さまの今後の人生の糧となる得難い経験を積極的に積んでいただきたいと思います。 

会社概要

鹿島建設株式会社 シンガポール現地法人
KAJIMA OVERSEAS ASIA(HQ) Pte. Ltd.
(カジマ・オーバーシーズ・アジア、 KOA)
 

地域に根ざした事業展開でアジアの都市作りをリードする

鹿島建設株式会社のアセアン地域における地域統括現地法人として、開発事業、建設事業、設計エンジニアリングの3つの事業の展開。シンガポールに本社を置くとともに、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インド、香港の拠点では、建設事業および開発事業を行っている。

杉本 弘治 氏

1979年に鹿島建設㈱入社。

国内建設プロジェクトを経験後、イラク、マレーシア、英国、インドネシア、シンガポールで通算30年の海外駐在を重ね、さまざまなプロジェクトを担当する。

現在は東南アジア8ヵ国での建築事業を統括し、各国拠点の管理業務に従事。

 

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