英語を本気で武器にする!vol.2
~幼児・学童期に育む英語力~
徹底的に考えよう、本当の英語力
英語を使って仕事をするビジネスパーソンや海外に住む日本人が増加しているだけでなく、日本国内に住んでいても外国人や観光客に出会うなど、英語に触れる機会は急速に増加しています。英語が話せることがごく当たり前となる時代に、「本当に求められる英語力」とは一体何でしょうか。
Springでは読者のご要望にお応えし、シリーズで特集しています。
2回目となる今回からは、年齢別に効果的な取り組みをご紹介します。今号では、幼稚園児から小学校低学年のお子さまのための英語について注目しました。
<前号の特集はこちら>
英語を本気で武器にする!~社会で通用する英語力とは~
アジアの英語教育事情
日本の公教育では2020年から英語が小学3年生より必修化され、文部科学省が「アジアトップクラスの英語力」を目標に掲げています。 日本では英語の早期教育を促進していますが、近隣のアジア諸国ではどうでしょうか。アジア諸国における英語教育を比較してみましょう。
主なアジア諸国の比較
TOEFL iBTのスコア比較(2017年)
120点満点
世界平均82点
出典:Educational Testing Service
日本は、スコアが公表されているアジア29ヵ国のうち、26位 71点(アフガニスタンと同位)
※6位以下は、日本人駐在家族が多く住む、主なアジア諸国を抜粋。
アジア諸国には、過去に英米の統治下であった歴史や、多民族国家という背景から、英語を日常的に使用している国々があります。
また、「早期に英語教育を開始している」ことで、英語力が強化されていると思われます。
各専門家に取材した「バイリンガルの育て方」も合わせてご覧ください https://spring-js.com/global/9392/ |
幼児・初等教育での取り組み
年齢が低いほど語学を習得する柔軟さがあると言われますが、実際にどのようなアプローチが良いのでしょうか。幼児・初等教育の専門家に聞きました。
【幼稚園】
EtonHouse Preschool
探究活動を通して英語を学ぶアプローチ
「『探究心』や『好奇心』を持ち自分の興味があることを通じて、英語を学びましょう」
国際バカロレア初等教育プログラム※・カリキュラムコーディネーター Ms. Asmita Sharma
※3歳から12歳の児童を対象とした国際バカロレアの初等教育プログラム
日々の遊びや探究活動を通して、英語を自然に使えるようになるのが理想です。同時に、「フォニックス」の基本などを歌や視聴覚教材を使って楽しく身につけていきましょう。また、レベル別の「リーディングプログラム」などの読書を通して、頻出する「サイトワード」も徐々に定着させることをおすすめします。そして忘れがちですが、子どもが過度な緊張を強いられることなく、リラックスして安心できる環境作りも大切です。
【英語教室】
My English School
読書が鍵!「フォニックス」は読み方の基本
「段階的に学ぶことができれば、1年間でも飛躍的に英語を読む力がつきます」
塾長 Mr. Gerold Kaske
綴られた文字を発音に置き換える「フォニックス」は、英語の「読み方」を学ぶ上では必須の大切な基礎です。しかし言語の習得には正しい「読み方」だけでなく、年齢相応の単語の「意味の理解」も必要です。読み方の土台をしっかり身につけ、本を読めるようになっていれば、日本へ帰国後も語彙を徐々に増やすなど家庭で英語を伸ばしていく取り組みがしやすくなるでしょう。
【音楽教室】
Our Music Studio
英語を学ぶことが楽しくなる音楽とリズムからのアプローチ
「受け身で習うのではなく、自分自身で体を動かしたり歌ってみたりすることが、英語に慣れる近道です」
ディレクター Ms. Huzzy A R
年齢に合わせたクラスでは、英語の歌を歌ったり、リズムに合わせて体を動かします。本の読み聞かせや楽器にも触れ合う中で、楽しく自然な形で英語に親しむことができます。音楽を通じて、自己表現ができるようになるでしょう。
先輩ママの体験談
読み方の練習では4~5個の単語が書かれたリストを音読する宿題がありました。たった1分で終わるような簡単な宿題でしたが、毎日の積み重ねで、いつの間にか複雑な単語も読めるようになりました。
「サイトワード」を覚えるためのレベル別の本があり、毎日1冊ずつ持ち帰ってきました。先生の前できれいに読めると次のレベルに進み表紙の色が変わるので、それを目標に頑張っていました。
英検Jr.®と英検®
英語に慣れ親しんだら、今の英語力を客観的に測ってみましょう
日本英語検定協会より
「英検Jr.®」はリスニングのみのテストです。リスニング力の達成度を客観的にとらえる良い機会となるでしょう。リスニングだけでなく、学習しているうちに文字にも慣れ親しむことができる仕掛けになっていますので、リスニングからリーディングへの自然なステップアップにも活用できます。また、英検Jr.®と英検®は共通のスコアである「CSEスコア」でつながっているため、将来にわたって継続的に英語力の伸びを測ることができます。
オンラインで挑戦できる!英検Jr.®のサンプル問題
http://www.eiken.or.jp/eiken-junior/sample/exam/?g9
通常の試験会場で行われる英検®に活用できるチェックシート
英検デビューできるかな? ※一部抜粋
□ 初めての場所でも落ち着いていられる
□ 試験教室に入ったら静かにできる
http://www.eiken.or.jp/eiken/eikenkids/checksheet/
※英検®と英検Jr.®は公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
※このコンテンツは公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。
世界の第一線で働く海外生の先輩方のストーリーをシリーズでお伝えしています。
今回は「幼児期・学童期」を海外で過ごした方です。
Story パイロット
河野 晋久さん
ジェットスター・アジア航空 キャプテン
【プロフィール】
4~8歳 米国ニューヨーク在住、現地校に通う(週末は日本語授業補習校へ)。日本に帰国し小中高校を経て早稲田大学に入学。早稲田大学院(うち1年は米国University of Pittsburg留学)を卒業後、日本航空株式会社(JAL)入社(パイロット候補生として2年半米国で訓練)。7年間パイロットとして勤務後、現職。
Q. 「英語が強みになっている」と感じますか?
~英語力が次のステップに~
英語が強みになっていると感じたのは、日本からシンガポールに転職した時です。私は不安がなく転職に踏み出すことができましたが、海外の航空会社への転職の機会には「英語力」が必要最低限の条件であると実感しました。また現在も、操縦のマニュアルを正確に理解するために英語は必須です。英語が話せることで、社内での信頼関係を築くこともスムーズにできました。
Q. 英語を習得するために、どのような努力をしましたか。
~語彙力の大切さを痛感。単語力と慣用句力に集中~
帰国子女にありがちな傾向ですが、英語を「感覚」で理解できてしまっていたため、文法などをつい軽視しがちでした。私自身、高校生の頃に中学英語の文法を最初からやり直し、単語力と慣用句力も積極的に養いました。
Q. 海外在住のご家族にアドバイスをお願いします。
~英語力は最低限必要なスキル~
世界中がボーダレスになっている今、英語力をメリットと捉える時代は既に終わり、「最低限必要なスキル」と言うべきだと思います。「英語力は世界標準である」ということを家族でも共有し、その重要性を子どもに伝え、応援することが大切だと思います。
Story 豪州大手総合エネルギー会社勤務
小杉 陽子さん
APAグループ 営業統括部長
【プロフィール】
小学1~4年 米国ヒューストン在住、現地校に通う。日本に帰国し小中高校を経て東京大学に入学。東京にて大手総合商社の営業部門、シドニー・東京の民間/投資銀行の営業部門を経て、2015年より豪州上場企業に勤務。
Q. 「英語が強みになっている」と感じますか?
~自己形成をする上で英語が自分の自信に~
中・高時代に英語の文法や前置詞、ことわざをきちんと覚えたのが良かったと思います。大学の合格に際しては、英語はかなり強みになりました。社会人になってからも、英語ができることで自分の自信につながりました。何より、自分の得意分野や自我を見つけるのに大いに役立ったと思います。
Q. 英語を習得するために、どのような努力をしましたか。
~教科書から丁寧に学習を~
英語が話せるからといっても、科目としての英語ができるわけではありませんでした。教科書からきちんと学習して、練習問題も丁寧にこなしたのは今でも正しかったと思います。
会社では、オーストラリアの上場会社で投資家とコミュニケーションをする業務を1年ほど前まで担当していました。投資家へのコミュニケーションを一手に取り仕切るため、社長のスピーチから説明資料などを考え作成します。その時に、正しい英語を話せる・書けるということの大切さを痛感しました。
Q. 海外在住のご家族にアドバイスをお願いします。
~好奇心を持って学習を~
英語は一つのツールに過ぎないと思います。とても便利なツールですが、数学やサッカー、歴史の知識などと同じで、自分から興味を持ち、面白いと思って英語を磨いていくことが一番効果があると思います。
Spring 編集部より
幼児・小学校低学年のお子さまの場合、安心した環境のもとで楽しい英語体験を積むことが何より重要であると言えるでしょう。英語で熱中できる何かに出会うことで、その後も学習を継続することが、英語力をつける大切な出発点になるようです。次回以降は、小学生全般の英語学習や読書のヒントなど、好奇心を駆り立てられる英語学習のヒントをご紹介していきます。