シンガポールで一変した生活
私は中学2年1学期の終わりにシンガポールへ移りました。日本では中高一貫校で充実した学校生活を送っており、当初は行きたくない気持ちと諦めも混じった複雑な気持ちだったことを覚えています。
シンガポールでは日本と違う経験をしようとインターナショナルスクールへ編入しましたが、あまり英語の勉強をしていなかったため苦労しました。学校ではSPP(The Study Preparation Program)という英語補習プログラムを1年間受講し、英語力を徹底的に鍛えました。英語を母語とする生徒たちと一緒に授業を受けても問題なくついていけるようになったのは、このプログラムと友人たちのお陰だと思います。
学校では年1回、各国の食べ物や出し物を披露するイベントがあり、最終学年の時は外国人も含む日本のダンスグループのリーダーを務め、グループを牽引しました。ダンスや衣装、そして音楽を通し日本文化をどのように伝えられるか悩みながら取り組み、成功を収めることができました。
学校生活の中で、恩師である日本人の先生との出会いが「どの大学で何を学び、何をしたいのか」という、将来を考えるきっかけを与えてくれました。また、外国の多文化社会で生きる日本人としての自分を見つめ直すこともでき、この先生との出会いはかけがえのない財産となりました。
大学選択の決め手
11年生の夏、恩師が実施してくださった日本の大学ツアーで国際基督教大学(ICU)を訪れ、自然豊かな広大で美しいキャンパスに魅了されました。ICUでは2つの専門分野を選択することができるダブルメジャー制度があり、幅広い専門分野を学ぶことができる「リベラルアーツ教育」は、日本で一番伝統があることも知りました。国際色に富んだ大学は他にもありましたが、31ものメジャーがありダブルメジャーも可能なICUは、幅広い知的好奇心を持つ私にとって非常に魅力的でした。そして多くの学生寮がキャンパス内にあることも決め手の一つとなりました。
受験対策としては、11、12年生の2年間、国際バカロレア・ディプロマプログラム(IBDP)に一生懸命取り組み、TOEFL対策に力を入れながら過去問題を繰り返し解きました。
ICUでの生活
ICUの大きな特徴は、専門分野の講義のうち、全体の40%近くが英語で開講されること、そして世界各国から集まる教授に指導いただけること、海外出身の学生も多く学んでいるということです。私はこの環境を活用し、積極的に英語で開講する授業を履修したり留学生とのコミュ二ケーションを取ることで、英語力を維持しています。
入学前は日本語で開講される授業に不安がありましたが、単語を英語に訳したプリントが準備されているなど帰国生向けの配慮が多く、安心して授業に臨むことができました。
高校生までは生物学が好きでしたが、大学で心理学の授業を受講したことで、発達心理学や神経科学に興味を持つようになりました。将来は子どもの発達を神経科学の視点から研究したり、それに関わるような仕事に就きたいと思っています。ICUではさまざまな分野の授業を履修できるため、本当に自分の学びたいものを見つけることができます。これもリベラルアーツ教育の恩恵だと思います。
海外で生活している皆さんへ
私は英語が全く分からないままインターナショナルスクールへ編入し、周りの環境に慣れていくことに精一杯な毎日を送ってきました。つたない英語で外国の友だちや先生とコミュニケーションを取っていくうちに、徐々に英語力がついてきたと思います。さまざまな苦労を乗り越えてきた経験が、今となっては大きな支えとなっています。新しい環境で慣れないこと、不安に思うこともあると思いますが、勇気と目標を持ってこの貴重な生活を楽しんでください。
お母さまより
突然の海外生活により、今までの当たり前が当たり前でなくなり、経験したことがない環境に本人は大変苦労したようです。しかし、友人や先生方に恵まれ、いつしか自信を持って過ごすことができるようになっていました。海外での貴重な経験は、子どもにとって大変有意義で、これからの人生における大きな財産になると実感しました。お子さまのみならず、ご家族の皆さまにとって実り多い滞在となりますよう心よりお祈りいたします。
※国際基督教大学に関する情報はこちら
https://spring-js.com/japan/7288/
『海外生の今』バックナンバー
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