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国際バカロレア

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

2021.09.24

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なぜ「国際バカロレア」なのか
第2回 初等教育プログラム(PYP)
~実施校での取り組み~ 編

※PYP:Primary Years Programme

 前回までの記事はこちら☞
https://spring-js.com/global/global01/iinternational-baccalaureate/

7月号では入門編として、国際バカロレア(以下IB)の概要と現在の動向をお伝えしました。今回はIBの初等教育プログラムであるPrimary Years Programme(PYP)について特集します。

2021年1月に日本の公立小学校で初めてPYPが認定されるなど、日本国内でもますます注目度が高まっている中、「実際にどのような授業が行われているのか」「他のカリキュラムとの違いを知りたい」という読者からの声も多くいただいています。そこで今回は、シンガポールと日本でPYPを導入している5校を取材し、その取り組みについてご紹介します。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

(画像提供:アオバジャパン・インターナショナルスクール)

取材協力:
文部科学省IB教育推進コンソーシアム
アオバジャパン・インターナショナルスクール(東京)
東京インターナショナルスクール(TIS, 東京)
Canadian International School(CIS, シンガポール)
EtonHouse International School(Broadrickキャンパス, シンガポール)
One World International School(シンガポール)
参照:文部科学省IB教育推進コンソーシアムウェブサイト

PYPとは

1997年に導入された3~12歳までが対象のIB初等教育プログラムで、「精神」と「身体」の両方を発達させ全人的に育てることを重視しています。PYPでは、幼児期における経験が将来のすべての学習の基礎となると考えており、どの言語でも取得可能です(7歳以上は第二外国語の言語教育が必須)。

実施している幼稚園・小学校の数は?

2021年9月現在(国際バカロレア機構提供)

世界 2,054校 シンガポール 23校 日本 48校※

※学校教育法第1条に規定されている学校(一条校)は14校

PYPの特徴

言語・算数・社会・理科・芸術・体育の6つの教科を横断的に学ぶ。
基本的に、教科書は使用せず。
「 学んだことを実社会でどう生かすか」を大切にする。
教師は「教える立場」ではなく、「ファシリテーター(学びの手助けをする人)」という位置付け。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

(画像提供:One World International School)

プログラム内容

国際教育において不可欠である「人間の共通性」に基づいた以下の6つのテーマ「探究
プログラム」が中心となっています。

6つのテーマ(国際バカロレア機構が定めた世界共通のテーマ)
私たちは誰なのか… Who we are
私たちはどのような時代と場所にいるのか… Where we are in place and time
私たちはどのように自分を表現するか… How we express ourselves
世界はどのような仕組みになっているのか… How the world works
私たちは自分たちをどう組織しているのか… How we organize ourselves
この地球を共有するということ… Sharing the planet

このテーマを教科の枠を超えて横断的に取り組みながら「探究型学習」を行います。通常、一つのテーマにつき6週間程度の期間で取り組んでいきます。

PYPの基本要素の統合

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

PYPの学び方

児童・生徒は、まず地球規模で重要な課題を「探究の単元」(UOI:Unit Of Inquiry)の中で学習していきます。それぞれの単元では、特定の教科の枠をこえたテーマ に関連したセントラルアイデア(Central Idea)を扱います。

セントラルアイディアの例

テーマ セントラルアイディア
私たちはどのような場所と時代にいるのか 「歴史上の出来事が与えた影響」
世界はどのような仕組みになっているのか 「世界の政治のシステムについて」
「宇宙の仕組みとは」
この地球を共有するということ 「平和と紛争について」

このように、一つのテーマを探究しながら、各教科の学習内容をそれぞれ結びつけて学ぶことができるのです。

UOIの基本的な学習の流れ

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Spring編集部が
PYP実施校に聞きました

PYP導入校の多くは「なぜIBを導入しているのですか?」という問いに対し、学校方針がIBの学習者像に重なるから、と回答しました。変化し続ける世界で成功するために必要なスキルとして、批判的思考力や問題解決能力、コミュニケーション力の習得を目指す学校が多く、国際的な視野を持ち、世界で起こる諸問題の解決につながる探究心を養うには、まさにPYPのフレームワークが当てはまるようです。

◆ テーマ別学習の進め方は?
  教科を横断的に学ぶとは?

アオバジャパン・インターナショナルスクールでは、PYPにある6つの学際的な学びのテーマを、幼稚園は3年に一度テーマを変えて、小学1~5年生は1年間で6つのテーマをすべて探求し、各テーマごとに通常約6週間をかけて取り組んでいます。

各テーマでは、生徒が国際的な思考を探究し、その考えを発展させることのできるグローバルマインドを養うために重要な概念を扱います。テーマには「Who We Are」のように、「I」ではなく「We」という表現が使われているのも、国際的な視座を持つことを目的とした意味があります。テーマ別学習は、年齢に応じた方法と深さで探究されます。

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「NOMOPHOBIA(携帯電話依存症)」について探究したことを発表
(画像・資料提供:アオバジャパン・インターナショナル)

テーマ「Who We Are」

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なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

「教科の枠を超えた教科横断的な学習」は、IB PYP教育の特徴の一つです。子どもたちが違う教科で学ぶ内容の繋がりを理解するとより深い学びが得られ、スキルと知識ベースの学習領域(2D)から概念主導で深い探究を促進する(3D)レベルに学習の質を引き上げることになります。教科横断的な繋がりを生成するため、IBでは7つの重要な概念を通して、各UOIでの活動を進めていきます。

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例 「Causation(原因)」

◉ 数学
ピタゴラスの定理が何故どのように働くのかを検証し、さまざまな原因や方法を考える。

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◉ 音楽
何故・どのように、異なる楽器がそれぞれ違う音を出せるのかを探究する。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

こうして、生徒は各教科に関連するコンテンツを学習することになります。
キーコンセプトを活用して、すべての異なる教科を結び付けて学習したり、教科に関するスキル学習を取り入れることもあります。

◉ 環境問題の森林伐採について探究
子どもたちに10年前の地図と今の地図を見せ、今と昔の森林面積を比較

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編


生徒は数学スキルを活用し計算し、長年にわたる森林面積の減少を把握する。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

◉ 地球温暖化の探究学習
なぜCO2が地球温暖化の原因になるのか?何故、温かくなるのか?を考える

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編
小さいプラスチックバックを使い、植木などの植物にかぶせ経過観察をする実験を通して理科の学習にも繋げる。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

国際バカロレア機構(IBO)からガイドラインが提供されるため、その順番と基準をみて、教師は学習がどこまで達成できるかを深く考え、学年の最初にマッピングをします。子どもたちに何を勉強したいかをヒアリングし、生徒が特に関心興味のあるものをその学習マッピングに取入れ、進めていきます。
IBはこの子どもたちの声も取り入れ、子どもたちのAgency(主体性)を引き出すことを非常に重要視し、学習に取り入れることを大切にしています。

◆ 評価方法(成績の付け方)は?

アオバジャパン・インターナショナルスクールでは、4つの異なる方法を採用しています。

Monitoring
(観察評価)
評価の中で一番重視される。
教師が学習中の生徒をよく観察するという評価方法。
Documenting
(プレゼンテーション力等の評価)
プレゼンテーションを行い、教師が評価する。
子どもたちからもフィードバックを受け、教師は1~5までの評価をするRubricという評価表を用いて評価をしていく。
Measuring
(チームワーク等の評価)
教師が生徒のチームワークを観察し、どれだけ上手くチームと協力して学習を進められるかを評価する。
Reporting
(定期的な内外での試験評価)
試験は評価のごく一部であり、学習の結果ではなくあくまでスキルの向上を測定するために使用。

評価基準のガイドライン概念図

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

教師は最終的にはこれらすべての評価対象を全般的に考察し、UOIの最終的な成績を提出します。評価レポートは学期ごとに、教師が成績と評価コメントを記載し、保護者へ提出されます。学校により、評価方法は異なります。

また、Canadian International Schoolのように年に2回の通知表を発行することに加えて、教師と校長が毎週電子メールで保護者に連絡している学校もあります。保護者には、シーソーやManageBacなどのオンラインプラットフォームで定期的に更新され、お子さまの作品にも簡単にアクセスできます。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

生徒のポートフォリオ。アプリを使って動画を含む学習の成果を保護者と共有。
「自分が何をどう学んだか」を自ら評価。

◆ 学習者像(Learners Profile)についての取り組みは?

「学習者像」の10の属性は、IBのすべての分野で指針となっており、学習の評価はもちろん、生徒との何気ない会話まで日常の言葉の中にも定期的に取り入れています。
(東京インターナショナルスクール, TIS)

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なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

6年生の生徒たちによるデザイン体験の授業。
校長先生が顧客となり、製品のデザインを請け負う。
(画像提供:東京インターナショナルスクール)

最終的な目的は、子どもたちが全ての「学習者像」を理解し、どのような努力をすべきかを理解できるようにすることです。生徒には「今日、私は~を他者と共有できたのでコミュニケーターになれました。」と言葉にして伝え、目指す「学習者像」を再認識するようにしています。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)

「学習者像」は本校での教育に欠かせないもので、評価の基礎となっています。教員は生徒が学習者像を模範と認識し、それを体現するよう促しています。教師も日常的に意識しながら行動しています。
(One World International School)

「学習者像」にある10の特性を組み合わせることで、生徒が価値ある地球市民になるよう導いています。教員・スタッフは生徒や地域社会との関わりにおいて、まさに「学習者像」の模範となっています。
(EtonHouse International School)

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

タブレットで制御するおもちゃを作成。
楽しみながらコーディングや算数の計測方法、チームワークなどを学びます。
(コロナ前に撮影された画像です)

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

生徒主体で開催されたダンスクラス。
UOIでダンスが身体的、精神的な健康に役立つと発見し、ランチタイムに開催。
多くの生徒や先生が参加しました。
(画像提供:Eton House International School)

「学習者像」とは?
詳細はこちら ☞https://spring-js.com/global/16518/

◆ 教員の質はどのように維持していますか?

学習と指導の質を向上させるための継続的な計画を立てています。教育学者が常駐する専用の研究開発センターがあり、教務スタッフに継続的なトレーニングを提供し、探究型学習の最新の研究成果を利用できるようにしています。
(EtonHouse International School)

専門能力開発の予算を確保しています。米国外にあるリーダーズ・ライターズ・プロジェクトの1校であり、TCRWPからのトレーニングを優先的に受けることで、教員の質を担保しています。
(東京インターナショナルスクール, TIS)

保護者の声

アオバジャパン・インターナショナル

S.Mさん(Grade2の保護者)
枠にはまらない学びで高まる好奇心
息子は小さいころから好奇心が強く「なぜそうなるのか」と考える子でしたが、IBで学ぶことでより好奇心が高まり、自ら工夫する様子が見られるようになりました。IBは教科書がなく、答えを見つけるまでの過程や導かれる答えにも柔軟性があるので、決められた枠にはまらない学び方が良いと思います。また、自分の意見を言う機会が日常的にあるので常に自らの意見を持ち、能動的に行動する力が養われているように思います。
M.Dさん(Grade5とGrade3の保護者)
実践的な学びを楽しむ
多様性を認め互いを補いながら物ごとに取り組める人間になってほしいと願い、IB校への進学を決めました。教科書や計算ドリルがないこと主要教科の明確なくくりがないことに不安を感じることもありますが、子どもたちが実践的な学びを楽しんでいる姿を見て私たちもこんな教育を受けてみたかったなぁと羨ましく感じます。家庭で
も環境への配慮や生活上の工夫について、画期的なアイディアを提案してくれて嬉しく思います。

東京インターナショナルスクール(TIS)

Grade4と幼稚園の保護者
先入観なく多様な価値観を受容
子どもたちが先入観を持たず多様な文化を受け入れているのは、IBのおかげだと思っています。私たちの国籍はドイツとポーランドですが、学校では世界中から集まった子どもたちが通っており、国際的な環境に身を置いているおかげだと思います。
Grade2の保護者
実社会で役に立つ実践的な学び
IBは科目ごとの学習内容をそれぞれに関連させながら実用的に学んでいくので、実社会に出るための準備がで
きると思います。IBで学ぶことで自信を持ち、自立心が芽生えてきたと感じています。

Canadian International School

A.Yさん(Grade4とGrade2の保護者)
多様な進路選択も魅力
IBは世界中のどこにいても同じプログラムが受けられるので、将来進路を考える際に選択肢が広がると思います。また、IBを学ぶことで、物ごとを深く考えたりわからないことは調べたりする力が身につき自信にも繋がっているようです。
学年が上がるにつれ、学習量が多く内容も難しくなってくるそうなので今後ついていけるか不安ですが、グループワークや問題解決能力、プレゼンテーション能力などは、大学や社会に出てからも大いに役に立つと思います。
なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

(画像:Canadian International School)

EtonHouse International School

Kloppさん(Year1の保護者)
間違えても許されることが自信に
PYPは子どもたちの成長にとても有益なプログラムだと思います。UOIでは実社会で起こりうるようなことを学ぶ上、生徒同士が協力し合うため、自分の意見を述べたり他人の意見に耳を傾ける練習ができると思います。
また、問題解決には多数の方法があることが前提にあり、間違っても許される状況は子どもたちに自信を与えてくれました。苦手だった科目も別の方法で取むことで解決し、結果的にその科目が好きになりました。

One World International School

佐藤さん(Grade3の保護者)
UOIから得られた自信
日本でも文部科学省がIBの普及に努めているため、息子が将来、日本を含めた世界で活躍できる人材になるために有益だと考えています。テーマによってはレベルの高いものもありますが、家族もサポートしながら一緒に学ぶ環境を作ることが大切だと思います。
UOIに取り組むことで息子も少しずつ自信をつけ、積極的に発言したりクラスメートと助け合ったりと、楽しくプログラムに参加しています。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

EAL(英語サポートクラス)の様子。
第二言語の習得もIBの重要な要素。

なぜ「国際バカロレア」なのか 第2回 初等教育プログラム(PYP) ~実施校での取り組み~ 編

UOIの様子。学習に関連した工作を行うことで芸術科目の学びにもつながる。
(画像提供:One World International School )

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