海外子育て・体験記・生活情報
このはな幼稚園 園長 毛利 安孝 さん「海外で活躍でき、日本の役に立てる子どもを育てたい」

長年海外でお子さんを育ててこられた方にご登場いただき、これまでのご苦労や貴重な体験談をうかがいます。
皆さんも「海外で子どもを育てるヒント」を見つけてみませんか。

Q : シンガポールに住むことになった経緯を教えてください。

 初めて来星したときは、外国人の駐在員が家族との時間を大切にしていることに気付き、長時間働く日本人との違いに驚きました。

 日本に戻った頃はバブル崩壊後で日本経済も傾き始め、近い将来間違いなく海外の企業と競争する時代が来ると思いました。果たして今の日本には「海外を一人で渡り合える人材がどのくらいいるだろうか」「このままでいいのだろうか」と不安になり、よりいっそう「子どもを海外で育てて将来日本の役に立てる人材を育てたい」と思うようになりました。妻にも「日本のようなモノリンガルの国ではなく、シンガポールのように多民族、多言語の国で子どもを育てたい」という気持ちがありました。それなら一貫した教育方針のもとで子どもを育てようと、思い切って会社を辞め一家で移住しました。

Q : 海外で子育てをするにあたってこだわった教育法を教えてください。

 「海外でも『日本人』として育てる」という強い信念を持っていたので、義務教育の間は母国語やアイデンティティーをしっかりと確立させるために日本人学校に通わせました。家庭内の会話はすべて日本語にし、少しでも日本文化に触れようと3人とも剣道を習わせました。

 その一方で「子どもたちが外国人に抵抗を持たないように」と考え、日本人以外の方と交流する場を積極的に作りました。お互いの家を行き来したりして親同士が仲良くすると、子どもたちも自然と仲良くなりますから、気がつくと自然に打ち解けることができました。子どもたちは多文化を肌で感じてくれたと思います。

 海外の仕事にも就けるように育って欲しかったので、高校からはインター校、大学は海外の大学に進学することをすすめました。

 長女はUWCSEAで国際バカロレア(IB)を取得し、メルボルン大学に進学しました。その後、「日本に住んでみたい」という本人の希望もあり九州大学大学院へ進学、現在博士課程で学んでいます。長男もUWCSEAを卒業して現在ケンブリッジ大学に、次男はOverseas Family Schoolを卒業し、西南学院大学に進学しています。

Q : お子さんを育てる中で大変だったことはありますか?

 長女の場合、シンガポールでも日本でもいじめに遭った時期がありました。担任の先生に「どうやって子どもを見守るか」を相談し、子どもの性格など、先生に知っておいていただきたいことをお伝えしました。いじめについて長女に直接問いただすのではなく、自然な親子の会話から学校でのことが話題になるように心を配りました。

 インター校に編入させるにあたってはやはり「英語力の強化」が課題でした。中学入学直後からイギリス人の家庭教師をつけて早い段階から強化しました。いざインター校に通い始めると、子どもも親もわからないことばかりでしたが、先輩の保護者の方に教えてもらったり、担任の先生に直接質問したりして理解しようと必死に努めました。

Q : 海外での子育てを振り返って今思うことはどんなことでしょうか。

 正直「果たして海外で子育てすることが良かったのだろうか」と今でも自分に問いかけることがあります。しかし日本にいる長女と次男は、日本の学生と自分たちが育った環境の違いに驚き「シンガポールで育って良かった」と思っているようです。異民族、異文化、異言語に抵抗が無いため「パスポートがあれば世界中どこででも暮らせる自信がある」と言っています。思いはいろいろありますが、親として海外で子育てすることを選択したことは全く後悔していません。

毛利さんから一言

 どんな親でも「子どもには幸せな人生を送ってほしい」と願うものですが、子育てには「正解」はないと、この二十数年間の子育てで痛感しています。

 お子さんの将来の理想の姿を掲げ、そのために「親としてどのタイミングでどういった働きかけをするか」ということを考えながら子どもと接することが大切だと思います。でも、子育ては計画通りにいかないものです。理想を求めすぎるのではなく、時には軌道修正しながら子どもと向き合うことも必要だと思います。

 お子さんが小さいうちはできるだけ家族で過ごす時間を長く作ることをおすすめします。お子さんと接する時間が長くなるほど、夫婦でお互いにお子さんの様子を把握できるので、お子さんにとって最適な教育環境を選択できるようになります。海外での子育ては苦労も多いと思いますが、頑張ってください。

※本文は2012年9月25日現在の情報です。

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