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バイリンガル教育

「幼児期のバイリンガル教育」を考える vol.2

2014.09.25

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 シンガポールでは幼児期から日本語、英語、中国語でのさまざまな教育の機会があります。この充実した多言語環境の中で「子どもをバイリンガルにしたい」と願う親御さんは多いことでしょう。しかし、わが子にあった教育を決めることはとても難しい選択です。
 今号より当地の幼児・初等教育の専門家の方々に「幼児期のバイリンガル教育」についてアドバイスをうかがい、シリーズでお届けします。

このはな幼稚園 園長 毛利安孝先生

◎ 真の「バイリンガル」を目指す

「バイリンガル」と言うと単に英語が話せることだと考えられがちですが、真の意味はそれだけではなく「バイカルチュラル」であること、すなわち相手や状況によって異文化の背景を理解し、言動の切り替えが無意識にできることも意味します。そのためにはしっかりとした母語(日本語)を身につけながら日本人としてのアイデンティティーを確立し、異文化理解を深めることが大切になってきます。それは、異文化に寛容な魅力ある人間を育てることにもつながるでしょう。

◎ 母語習得の鍵とは

「バイリンガル」の大前提となる母語は、親の文化、帰属意識、人格形成、知的発達と直結し、子どもの社会性や情緒面の発達とも密接に結びついています。母語の確立は考える力の基礎となるため、第二言語(英語)を習得する上でも大変重要で、第一言語で語彙能力がある子どもは第二言語でも語彙に多様性が現れる傾向があります。

親の役割として一番大切なのは、家庭において母語(日本語)でコミュニケーションをとることです。年齢相応の話題をし、子どもの日本語の使い方(単語や表現)に誤りがある場合は、その都度的確な表現や単語を補い、「正しい日本語を聞かせる」ということを意識する必要があります。母語が急激に発達するのは2 ~ 4歳頃と言われています。幼児期から小学校に上がるくらいまでに、家庭や幼稚園でたくさんの本の読み聞かせをすることは非常に効果的です。本を多く読む子は、言葉を類推したり、本の内容を理解するために予測することを学びます。これが将来の言語学習をけん引する基礎となります。

◎ 実体験の積み重ねから学ぶ第二言語

「バイリンガル」に育てることは知的発達を刺激し、言語感覚を鋭くするといわれており、シンガポールのように日常生活の中で二言語に触れる機会があることは非常に恵まれています。言語形成期(2歳~13歳)にきちんと言語の「使い分け」が出来れば、子どもは二言語でも三言語でも自然に習得できるものです。

英語は「実体験」を通して学ぶことが効果的です。特に9歳ぐらいまでの場合は「教える」という姿勢ではなく、子どもが楽しいと思える年齢相応の興味(水泳、キャンプ、ゲームなどの遊び)を中心に実際に英語を使う場面を作り、英語で何かをする「体験」の積み重ねが効果的だと感じます。

シンガポール日本語補習授業校 校長 伊藤 敏一先生

◎ 補習校と家庭での連携でバイリンガル教育を

シンガポール日本語補習授業校(以下、補習校)では、通常はインター校やローカル校に通い英語で学習している子どもたちが国語を一生懸命学んでいます。授業日数は年間40日という限られた時間です。子どもたちと接すると、二つの言語を自分のものにしていくことは決して簡単ではなく、本人とご家庭でのたゆまない努力のもとに成り立っていることを実感します。それだけに、保護者の方々には「母語は日本語である」という強い気持ちを持ってほしいと思っています。両親が日本人であっても、一日の大半を英語環境で過ごし、日々の親子の会話や国語の学習が30分や1時間では、母語の座を英語に 譲ってしまうことになりかねません。正しい日本語に触れる機会をできるだけ確保することが大切だと思います。

◎ お子さんに合った学習法で

幼児期は発語がおこり語彙が爆発的に増える時期ですので、母語である日本語を主とする環境が理想的だと思います。しかし、インターやローカルの幼稚園・学校に通わせる場合は、 お子さんの日本語力にあった形で国語学習を継続してあげることが必要です。二言語の学習に頑張っているお子さんには、とりわけ国語学習について「加点法」でその成果を評価してあげてほしいと思います。完璧を求めると「減点法」に陥りがちですが、加点法を意識すると、これもできるようになったあれも書けるようになったと、成長を認めてあげられると思います。

日本の学習指導要領では、小学1年生は80字、その後は各学年160字~200字もの漢字を学習します。普段英語で学習をしているお子さんの場合、ただ機械的に漢字の書き取り練習をするだけではなかなか定着しません。ご家庭でも、漢字の成り立ちや意味などをぜひ補ってあげてください。ちょっとした工夫をすることでやる気をぐんと高められます。

補習校では限られた授業時数の中で、運動会や書道などを実施しています。これらも日本の文化に触れたり、言語学習の幅を広げたりしてほしいという思いからです。

先日、補習校を視察された下村文部科学大臣は、子どもたちに向けて「皆さんは日本の宝です」との励ましの言葉をかけられました。多様な言語や文化を学んでいる子どもたちは、まさに今後の日本を背負っていく貴重な存在だなと私も強く思います 。

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