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世界で活躍する日本人

弦楽器製作者 西村 翔太郎 氏 ~本場イタリアで弦楽器製作に挑む~

2014.11.25

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楽器製作を志す

 ヴァイオリンとの出会いは15歳の時でした。幼いときからもの作りが大好きで、 複雑な折り紙製作に夢中になったり、立体を見るとその構造が知りたくなったりしました。当時トランペットを習っていましたが、演奏することよりも製作に興味がわき、自分で製作してみようという熱い思いが抑えきれなくなっていました。自身で調べた末に、トランペットには手作業の工程がないことがわかり、製作への想いはヴァイオリンへと移りました。

 どうしたらヴァイオリンを作ることができるのか、中学3年生だった当時、週末や学校の夏休みを利用して日本全国にあるヴァイオリン工房を一人で訪ね歩きました。「本気で目指すなら本場のイタリアに行くべきだ」というある職人さんの言葉で、私の進むべき方向性を決心しました。

 高校に通いながら、夜は寝る間を惜しんで見よう見まねでヴァイオリン製作に励みました。当時作ったヴァイオリンは、私の原点として今でも大切に残っています。

 高校に通いながら、夜は寝る間を惜しんで見よう見まねでヴァイオリン製作に励みました。当時作ったヴァイオリンは、私の原点として今でも大切に残っています。

 数年間の素地作りの期間を経て、卒業後はミラノへ渡り、ミラノのヴァイオリン製作学校に入学しました。当時は私が学年で唯一の日本人でした。いよいよ自分の夢へ向かって、本格的に歩き出したのです。

日本人としての挑戦

 現在は、約400年前にヴァイオリンが生まれた地、イタリアのクレモナで生活をしています。工房は偉大な製作家ストラディバリが住んでいた家の向かいにあります 。

 ヴァイオリンが生まれた時代と変わらぬ芸術にあふれるたたずまいの町で、そこで育った人々と肩を並べて生活していると、自分が生きてきた環境とはあまりに異なることを感じます。外国人の自分に太刀打ちできるものではない、と自信をなくすこともしばしばです。そんな時に言い聞かせることは、「ストラディバリウス」は、製作家ストラディバリの手だけによって生み出されたわけではないということです。後世の何千人にも及ぶ精鋭の演奏家と、世界中の職人の手によって少しずつ進化をとげ、今日の 名器として確固たる地位を築きました。それぞれの時代のイノベーションなしにこの伝統は確立しえなかったのです。そう考えれば、日本人である私にも新たな挑戦ができないはずがありません。

 イタリアと比べれば、現代の日本人は格段にモダンな生活で最先端のデザインに囲まれています。楽器製作にも、日本人が持つ機能美「ミニマリズム」の感覚を活かしてみることが、日本人としての私の挑戦でした。イタリア式を模倣する楽器製作から、他の国の人には真似ができない日本人としての味にとことんこだわった製作への転換を決意したのです。このことが、後に弦楽器製作コンクールで評価された一番の理由であることは間違いありません。

 日本人の息吹は、私の楽器のそこかしこに込められています。もの作り日本ならではの一流の職人さんが作った彫刻鑿(のみ)を愛用し、接着材には本場イタリアの製作者たちの間でも高く評価される日本製の膠(にかわ)を使用します。その上、2~3 ヶ月の製作期間は、「落語」を聞くことで小気味よい粋な笑いで自分の士気を高めています。

読者の皆さまへ

 自分の気持ちに素直になって「人生を楽しもう」、そして「うまくいかなければやり直せば良い」とお伝えしたいです。外国にいる時は、積極的に 地元の人たちと交流し、語り笑い合いましょう。難しい教科書よりも、ずっと大切なコミュニケーション法が体得できるはずです。国際舞台では「日本人」として堂々と ふるまうことで、相手と対等であることを印象づけ尊敬されるようになるのではないでしょうか。日本人は、世界中で高い評価を得ていると実感します。皆さんにも、「日本人」であることに大きな誇りを持って、世界の舞台で色々な挑戦をしていただきたいと思います。

西村さんのこれからの挑戦

長い時の流れの中で、自分が存在しない未来においても世界のどこかで演奏され引き継がれていく、そんな最高の楽器を作っていくことです。そのために、音のクオリティを更に極めていきたいです。

弦楽器製作者  西村 翔太郎 氏

京都生まれ。2002年高校卒業後、 単身イタリアに渡りミラノ市立 ヴァイオリン製作学校に入学。 イタリア国内弦楽器製作コンクー ル学生部門においてヴィオラ部門 第3位と第4位を受賞(2008年)。  イタリア国内弦楽器製作コンクー ル一般部門においてヴァイオリン 部門2 位(2009年)および優勝 (2010年)。同ヴィオラ部門で第3位 (2010年)、同チェロ部門で2位受 賞(2011年)など。

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