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海外子育て体験記

高橋 房子 さん「やり直しができるという気持ちで育てる」

2013.01.10

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長年海外でお子さんを育ててこられた方にご登場いただき、これまでのご苦労や貴重な体験談をうかがいます。
皆さんも「海外で子どもを育てるヒント」を見つけてみませんか。

お二人ともインター校に通わせたそうですが、驚いたことや戸惑ったことはありましたか。

 「せっかくなら海外でしかできない体験を味わってみよう」という気持ちで、娘が小学生になるときにインター校に入学させました。ただ、何の準備もしていなかったので初めは苦労の連続でした。例えば、みんながお絵描きをしているときに娘が「紙がほしい」と言えなくて困った時でも、日本だったら先生が一人ひとりに気を配ってくれます。インター校では、助けが必要なときに意思表示をしないと「この子は助けてほしいのではなく自分でやりたいのだ」と理解されました。文化の違いを大きく感じた最初の出来事でした。また、特定の国が校名になっている場合は、その国にまつわる歴史や地理を学び、教え方にも大きな違いがあることにも驚きました。インター校とはいえ、同じ教科でも学校によって学ぶ視点が異なり、こういった勉強を通じて視点の違いや視野を広げる訓練をしているということを実感しました。

学校選びで悩む保護者の方も多いと聞きます。アドバイスをお願いします。

 娘には、英語力がついてくるにつれて、ネイティブの人と対等に渡り合えるメンタリティや語学力を身につけて欲しいと考え、日本人の割合が低い規模の大きい学校へ転校させました。息子は同じインター校に通い、高校は日本の学校に通うつもりでしたが、途中で気持ちが変わり、そのまま卒業しました。

 お子さんの成長や希望に応じて学校を選ぶ局面が出てくると思います。しかし保護者の方の中には単に「もっとハイレベルな学校に転校させたい」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

 お子さんが今の学校に馴染めず将来に不安があるのであれば、学校を変えるということも一つの手段ですが、転校となるとカリキュラムが異なるだけでなく、これまでの先生や友だちとの関係も断つことになり、子どもには相当な負担になると思います。私も娘の転校でそれを痛感し苦労しましたので、単にレベルや評判に惑わされるのではなく、「自分の子どもにとっていい学校はどこか」というスタンスで学校を選ぶとよいでしょう。今お子さんが学校生活を楽しんでいるのなら、転校させないということも選択肢の一つでしょう。

お二人とも海外の大学に入学されたそうですが、日本の大学ではなく海外の大学へ進学された理由を教えてください。

 海外の大学へ進学させると、子どもたちが日本に戻るきっかけを失うのではないかという不安もありました。しかし、最終的には本人たちの希望を尊重し海外の大学へ進学させました。

 「もし日本の大学に通わせていたらどのような成長を遂げただろうか」と考えることはあります。それでも、無理やり日本の大学に進学させなかったのは、ある程度自分の人生に責任を持てる年齢に達しているのだから、途中で進路を変更したとしても自分でまた切り開いてやり直せると思ったからです。

お子さんを育てる過程で、気を配ったり悩んだりした点は何ですか。

 日本語力は保持したいと考えていたため、塾に通わせていました。日本人としての自覚を持たせるために、日本に帰国する際には国内各地を旅行しました。東日本大震災の被災地にも家族で足を運びました。

 私自身、決して子育てが全てうまくいったとは思っていません。ずっと海外で育ったがために日本人としてのアイデンティティーが弱いので、今後しっかりと確立してほしいという気持ちもありますし、親としてどうアプローチすればいいのか未だに悩むこともあります。子育てのアプローチも答えも一つではないということを実感しています。

 高橋さんから一言

 現代はとても多くの情報があふれていますが、それらに振り回されるのではなく、全ての情報を取り込んで一度咀嚼したうえで、お子さんに適した情報を取捨選択することをおすすめします。

 何かの壁にぶつかり悩んだときでも、あまり思い詰めず「たとえ間違ったとしてもまたやり直せる」という考え方も必要です。過ぎてみれば大変貴重な海外生活ですから、お子さんとよく話し合いながら、保護者の方ご自身の人生もしっかり楽しむことが大切だと思います。

※本文は2013年1月10日現在の情報です。

高橋 房子 さん

【家族構成】夫、長女(22)、長男(19)

【海外滞在歴】18年(シンガポール)

ご主人の赴任に伴い1994年に来星。薬剤師だった経験を生かし病院でのボランティア活動やパート勤務のほか、ナショナルミュージアムでのガイドボランティアなど精力的に活動する。

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