グローバル教育
第6回 カナダ編

最終回となる今回は、カナダの大学についてお届けします。太平洋をはさんで日本の隣国と言えるカナダは、世界有数の親日国家としても留学生を歓迎する環境と制度が整っています。

在シンガポール カナダ商工会議所 Executive Director 
ローハン ベリアッパ 氏からのメッセージ

カナダには約100の大学に学位を授与するプログラムが一万以上あり、米国および英国連邦での学位と同等に世界的に広く認知されています。大学は各州政府が管轄し地域に密着しているのが特徴で、それぞれの地域は英仏植民地時代の歴史を残す美しい街や、ロッキー山脈やオーロラが頻発する豊かな自然など、明確な個性を持ちます。カナダに留学する場合は、「どの地域で」「何を」学びたいかという2点を考えながら進学先を検討すると良いでしょう。

カナダは世界中の200以上の民族を受け入れてきた歴史があり、人々は外国人に非常に友好的です。また、治安がよく医療も優れていることから、「最も住みやすい国」に何度も選ばれています。大学においても留学生のサポート体制や学生寮が整っているので、学生生活を円滑に始めやすいでしょう。特筆すべき点は、カナダの大学が革新的な技術を生み出し、世界的な研究開発プロジェクトを数多く行っていることです。

日本やシンガポールでは年1~2回カナダ留学フェア※を行っていますので、ぜひ参考にしてください。

※※日本:www.canada-ryugaku-fair.com(日本語) シンガポール:2016年1月14日・15日を予定。Spore-td@international.gc.ca へ個別に問い合わせも可能。 
カナダ大学フェア予定一覧:http://www.tradecommissioner.gc.ca/eng/edu-canadapro/events.jsp

グローバルキャリアを構築できる環境

カナダでフルタイムで学ぶ大学やカレッジなどの学生は、卒業後にカナダ国内で最高3年間就労可能な「就労許可証」が申請でき、グローバルなビジネスキャリアの構築を可能にしています。 
■ 8ヶ月以上フルタイムで大学・カレッジなどで学ぶ学生ビザを取得している人が対象 
■ 大学・カレッジで学んだ期間に応じて就労許可の期間が決定(最高3年)  
■ 公的な奨学金などを受けている場合に対象外になることもあるので「就労許可証」の申請対象者か否かの確認が必要


カナダの主な大学

なぜカナダで学ぶのか

○ 世界的な研究開発プロジェクト(例:地球温暖化、HIVワクチン、情報ネットワークなど)が多数、革新的な発明を多く創出する技術先進国(例:フラットスクリーン技術や音声圧縮アプリケーション、IMAX などは、カナダの大学卒業生が発明) 
○ 天然資源開発、工学、金融など実社会に近い学問を追究する学部が多数 
○ カレッジから大学学部への編入が可能 
○ 多くの学部では専攻の決定を2年~3年生で行う。変更も可能で柔軟性がある 
○ 英語・仏語の充実した語学教育、アクセントや方言の少ない美しい英語 
○ 学業成績およびスポーツや社会貢献活動、国際的な経験、そしてインターンシップなど、総合的にバランスのある学生を歓迎 
○ 国際バカロレアディプロマ(IBDP)、A Levelなどが各大学で広く認知されている

カナダの大学および出願の特色

○ 通常4年で学位が授与される。 
○ 多くの大学で必要とされる出願書類・手続きは以下の通り

※詳細は実際に志望する大学へご確認ください。

■ 過去3年間の成績証明書(英訳したもの) 
■ 卒業証明書  ■ オンライン願書 
■ 英語圏での高等学校またはインター校を卒業していない場合、  
英語力のスコア(目安は TOEFLiBT:80~100、IELTS 6.5~7.0)  
■ 申請料 C$100~250  ■ 選抜試験不要 ■ エッセイ、推薦状は不要の場合が多い(専攻による) 
■ 面接も不要な場合が多い

入学までの主なルート

1. 大学に直接入学

国際バカロレアなどの国際プログラムや、日本を含む世界各国の高校の成績をもとに考慮。

2. カレッジから大学へ編入

カレッジ※で所定の成績を修め、大学の2年生または3年生に編入。(Simon Fraser UniversityやUBCに入学するためのカレッジなど、指定大学への準備コースを専門にするカレッジもある)

※カレッジには職業訓練コースと、大学準備コースの2種類があり、志望大学編入の可否を事前に確認する必要がある。

3. 語学学校から大学へ直接入学

カナダに入国してから語学学校で英語力を付け、大学進学を目指す。

学費と奨学金

大学学部: C$20,000 ~ C$27,000(各校・学部などにより異なる。一般的な目安なので医学部などは要確認) 
カレッジ: C$10,000 ~ C$16,000(各校により異なる) 
奨学金:www.scholarships.gc.ca および各大学の奨学金制度を参照。

大学のオンライン出願時に有無を確認する項目があり、申請手続きは、奨学金希望の有無を自動的に尋ねてくることが多いため、申請手続きは比較的容易。

日本の大学生対象には、高円宮記念クイーンズ大学留学奨学金(日本の大学生対象)、日加リーダーシップ基金奨学金プログラムなど。

取材協力: High Commission of Canada to Singapore 
在シンガポール カナダ商工会議所/在日カナダ大使館

参照ウェブサイト:www.educationau-incanada.ca 

三好 貴子さん 
公立小学校、立命館宇治中学校・高等学校で学ぶ。  
高校では国際バカロレア・ディプロマプログラム(IBDP)を履修。 
ブリティッシュコロンビア大学(UBC)工学部2年に在籍し、地盤や水に関わるエンジニアリングを専攻。

Q. カナダの大学を志した動機は。

英語が好きだったことと、難しい勉強に挑戦したいという気持ちから高校ではIBDPを選択しました。徐々に「世界で働ける人材になりたい」と考え始め、授業で学んだ「世界の水問題」をきっかけに、環境分野の専門知識を英語で身につけたいと思うようになりました。日本には英語で理系を学ぶ選択肢が少なく、カナダの大学院で学んだ高校の先生からのアドバイスを参考に、工学でハイレベルな研究ができるUBCなどのカナダの大学を目指しました 。カナダでは大学2年か3年で専攻を決定でき、将来の具体的進路をじっくり考える時間が持てるのも魅力です。高校卒業後5月にカナダに赴き、洗練された美しいキャンパスや 国際色豊かなUBCが気に入り、進学を決めました。

Q. 進学への道のりは。

英検で出題される単語は知っていても、理数系の語彙や実践的な英語力を身につけることが、私にとっての課題でした。高校ではIBで物理・数学・化学などを選択し、英語でのプレゼンやチームプロジェクトを通して、理系で海外をめざす準備をしました 。UBCでの受験では面接はなく、IBスコアと高校の成績とともに、10項目の回答をオンラインで提出しました。模擬国連に参加しブロックリーダーを務めたこと、卒業研究で作成したバイオディーゼルに関するレポートでの試行錯誤に焦点を絞りアピールしました。カナダのどの大学でも、リーダーシップに関する経験が重視されているように感じました。

Q. 大学生活の様子は。

高校の少人数クラスとは対照的に、大学では200~300人規模の講義が多く、より自分自身で掘り下げる努力が必要になりました。フィールドワークや実験も豊富で、周辺地域の汚染除去のプロポーザルを立案することもあり、知識を実地に応用できる醍醐味を感じています。留年率が高いので、自分を律して放課後毎日3~5時間は勉強しています。そんな中、日系の算数教室で地元の子どもたちに算数や日本語を教えるアルバイトが良い息抜きになっています。

Q. 後輩へのメッセージを。

海外進学に向けては、綿密な進路計画を立てることが鍵だと思います。私はIBで学べたこと、先生から海外進学の良いアドバイスをいただけたことが幸運でした。皆さんにも海外への可能性を広げる学校や先生との出会いがあると良いなと思います。

高橋 拓海(ひろみ)さん 
幼稚園~G3までCanadian International School、その後UWCSEAで学ぶ。 
トロント大学3年生。 コンピュータサイエンスと数学を専攻

Q. 学習の経緯とカナダの大学を目指した理由は。

幼少期からシンガポールで過ごしていたので、英語の方が読み書きのスピードも早く得意でした。日本語は塾で小学1年から学習し、中高生ではIGCSE、IBDPでも履修したので、苦労しながらも 母語を身に付けることができたと思います。3歳年上の姉が先にカナダの大学に進学していたため、それがカナダを目指すきっかけになりました。進路を考える時期に現地を訪れ、外国人を友好的に迎える国民性に感銘を受けるとともに、治安の良さも感じました。また、アカデミックで革新性を重視する大学の雰囲気にも惹かれました。

Q. 合格までの道のりは。

IBDPでは物理やコンピュータサイエンスなどを選択しました。コンピュータサイエンスは、世界的に需要の高い分野であり、日本でも他国でも将来の仕事につながると考えたからです。そこで、教養を重視するリベラルアーツ系の大学よりも、専門を早くから学べ、大学ランキングでも高く評価されているトロント大学を志望しました。長くインター校で学んでいたためTOEFLなどは不要で、面接やPersonal Statementの提出も求められませんでした。過去3年間の成績とIB模擬試験のスコアが重要だったので、地道に学校の勉強をし、合格につながりました。受験準備一色ではなく、バンド活動をするなど楽しい高校時代でもありました。

Q. 大学生活の様子と今後の目標は。

授業は、大教室で行われる講義、TA(Teacher Assistant)がついてプロジェクトを掘り下げる個別授業、コンピュータラボで行う実践クラスで構成されています。1年生では、コンピュータサイエンスで必須のプログラミングの基礎を学び、その後はソフトウェアエンジニアリングや情報セキュリティなど、多岐にわたる関連分野を追究できます。どの学生も非常によく勉強するので、自分を鼓舞しながら週末も課題に勤しんでいます。気分転換には大学の仲間と作曲やバンド活動に励み、時には他大学にいる友人を訪ねるなど、充実した日々を過ごしています。

カナダでは、最先端の技術やアイディアがさまざまな背景を持つ人たちの中から生まれてくると実感しています。当面は専門知識を学び、いつかは日本で自分の可能性を試してみたいと思います。


編集部より

全6回にわたりお届けした海外大学進学特集はいかがでしたでしょうか。文系・理系、英語での学習経験の有無などにより、各国の大学入学にはさまざまなルートがあることがおわかりになったと思います。世界を視野に入れて進学先を検討していただく一助になれば幸いです。

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