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世界で活躍する日本人

P&G 研究開発本部 中村優子氏 〜世界の暮らしをよくする、研究開発の仕事〜

2015.09.25

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私が働くP&Gは、アメリカ合衆国オハイオ州に本社のある、洗剤や化粧品、紙おむつ製品などを製造販売する世界最大の一般消費財メーカーです。
大学では理学部で化学を専攻し、研究開発の仕事をしたいと考えていました。しかし、理系の女性が活躍できる企業は限られており、生まれ育った大阪を離れたくなかったこともあり、当時神戸に極東地域本部が置かれていたP&Gに就職しました。社会人になってから世界に出る機会をたくさんいただき、さまざまなカルチャーショックや刺激を受け、仕事面でも人としても育てていただいたと感謝しています。

製品開発の醍醐味

私の仕事は、世界の消費者の暮らしを向上するべく、世界中から集まる研究者たちと協働する、とてもやりがいのあるものです。「消費者がボス」を合言葉に、消費者のニーズを探り、科学的仮説に落とし込み、新しい製品や技術の開発に取り組んでいます

思い出に残るプロジェクトはいくつもあります。例えば、布の消臭剤「ファブリーズ」は、アメリカで先行発売されていたものを日本向けに大きく改良したものです。当初、社内では「日本人は清潔好きだからニーズがない」といわれていましたが、私は、「きれい好きだからこそ、普段洗濯しにくい布のにおいやばい菌が気になるはず」と考えました。開発段階では、製品の乾きのスピードや匂い、パッケージにいたるまで、問題だらけで大変苦労しました。しかし、それらを乗り越えたファブリーズは、日本国内でまったく新しい市場を創出することができました。また、新しい処方やパッケージは多くの国で採用されることになり、「日本初、世界行き」の醍醐味を味わうことができました。

活躍の場は世界に

その後、西ヨーロッパ全域の液体洗剤の開発責任者としてベルギーに赴任しました。粉末洗剤が中心で、高温、長時間で洗濯する消費者が多い中、低温、短時間で洗浄効果の高い液体洗剤を開発し、市場が一気に液体へと移行しました。

日本に帰国後は、パンテーンやh&sなどのヘアケア製品の開発を指揮しながら、同時に、シンガポールの新しい研究所の設立に向けて組織づくりに奔走しました。

現在、私が所属するP&Gのシンガポール・イノヴェーション・センターは私企業の研究所としては、シンガポール最大規模です。 アジア、ヨーロッパ、アメリカから異動してきた人や、現地で新しく採用された人など、現在27ヵ国から集まった研究員が働いています。多様性の力を実感するとともに、日本を離れて、改めて日本人が持つ「責任感」や「おもてなしの精神」の素晴らしさを日々、感じています。

キャリアはマラソン

私は、キャリアは「短距離走ではなくマラソン」だと考えています。女性管理職の積極的な登用が叫ばれていますが、キャリアを重ねていくうえで、出産や子育てなどが壁になることもあるでしょう。しかし、大変だからとすぐに会社を辞めるのではなく、長期的な視点で、「両立が難しい時期は、一時に過ぎない」と考えてみてください。ダッシュをしてすぐ息切れする働き方ではなく、状況に応じてペースを調節して、最後まで楽しく走り抜きたいものです。ベルギーにいた頃、同僚たちが1ヵ月のバケーションに加え、時にはもっと長いサバティカル休暇を活用して、メリハリのある人生を生きる姿に、大いに刺激を受けました。「Live to work(仕事をするために生きる)」と「Work to live(いきいきと生きるために仕事をする)」とでは、一度きりの人生が大きく違ったものになるはずです。

これからの夢

シンガポールという、多様な文化が受け入れられやすく「違うが当たり前」という素晴らしい環境の中で、これからも歴史に残るような新しい技術やヒット商品を生み続けること、そしてそれを可能にする人や組織を育成することが、私の「夢」です。

昨年他界した私の母が、「外国の経験ができて、うらやましい。私の時代には考えられなかった」とよく話していました。現在海外生活をしている方には、さまざまな国の人と交流できるこの機会を大切にし、英語力やコミュニケーション能力を磨いていただきたいです。そして、シンガポールでの経験を生かして、日本と世界の架け橋になっていただきたいと思います。

P&G 研究開発本部 中村優子氏

大阪大学理学部高分子化学科を卒業後、Procter & Gamble(P&G)入社。
2012 年にシンガポールに異動。
現在は、スキンケア製品部門の研究開発本部ディ レクターとして、SK-IIなどの開発を担当。
シンガポール、神戸、北京にいる、 約100名のR&D組織を統括。

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