グローバル教育
第4回 アメリカ編

シリーズ第4回目は世界の大学教育において中心的役割を担っている、アメリカの大学への進学について特集します。

在シンガポールアメリカ大使館 Deputy Public Affairs Officer ウィリアム・ギルバート氏からのメッセージ

 アメリカにはカレッジや大学が何千もありその数は世界最多を誇ります。質の高さは認定制度(特集内参照)で保証されており、プログラム数の多さ、専攻科目や学部を柔軟に変更できる点などに定評があります。高額な授業料という印象を受けがちですが、学費や生活費もさまざまで大きな幅があるため、毎年何十万人もの外国籍の学生がアメリカ留学を実現させています。米国内、どの地域でもあなたに合ったキャンパスがきっとあるでしょう。下記のウェブサイトからアメリカでの大学探しを是非始めてみてください。

http://www.educationusa.info/

アメリカの大学における外国籍学生の動向

 アメリカの大学では世界各国から約82万人もの外国籍の学生が学んでおり(うち約4割強が学部生)※、その数は世界一を誇ります。各種の世界大学ランキングでも多くが上位に名を連ね、毎年日本人留学生の約半数は、アメリカを選んでいます

※2012-2013年。日本人留学生数は1994-97年度まで国別で第1 位だったが、2010年度以降は第7位へ下降(参照:http://www.fulbright.jp/)。

外国籍学生の半数は中国、インド、韓国の出身となっている。
出典:Institute of International Education (2013)  Open Doors Report on International Educational Exchange http://www.iie.org/opendoorsから引用

アメリカの主な大学

なぜアメリカの大学で学ぶのか

◎世界でもトップレベルの教育

○2014年度QS世界大学ランキングのトップ10内に6大学がランクイン。トップ100にランキングされている大学数は28に上り世界最多。
○自己責任の下、主体的に学び意見を表明できる人物を育成するのが教育の基本とされ、積極的に授業のディスカッションに参加しないと卒業は厳しい。そのためグローバル社会で活躍できる素地を養える。

◎多様性と柔軟性

○世界中(2012年度は約220カ国)から異なるバックグラウンドを持った学生が集まる。グローバルなネットワークが構築できる。
○4年制大学は約3,000あり世界最多。単位互換制度を利用した大学間の転・編入学、休学後の復学も珍しくない。専攻は入学後に決定可。 

進学までの流れ

各大学独自の入学試験は無い。出願書類で総合的に審査される。

◎高校入学後~入学1年前   情報収集し大学を絞り込む

 将来のキャリアに適しているか、カリキュラムと規模、入学要件、費用・奨学金、認定を受けているか等をリサーチする。大学フェアにも参加。

・参考になるウェブサイト(一部)
EducationUSA              http://www.educationusa.info/
日米教育委員会(フルブライト・ジャパン) http://www.fulbright.jp
日本学生支援機構             http://www.jasso.go.jp

・認定の有無は大学の質を保証する重要な指標なので確認する。

◎入学1年半~10ヶ月前      各種テストの受験(複数回受験可能)

統一学力テスト:SAT または ACT  など
英語力判定テスト:TOEFL  IELTS など

※必要なテストを大学に確認。出願締切日の2ヶ月前頃までに受験。
(用語の詳細は「海外大学進学特集第1回~基礎知識編~」を参照:https://spring-js.com/global/3405/ )

・テストのスコアは実施機関から大学へ直接送ってもらう。
・高校時にAP(Advanced Placement)やIBDPのコースで取得した単位を、大学の単位として認定する大学もある。

シンガポールでSAT受験を目指すなら、専門予備校Test Takersへ 

◎1年前~   出願書類の準備・出願 (以下は9月入学の場合)

9月~2月 成績証明書、推薦状、エッセイ、テストスコア、財政能力証明 書、健康診断書などを準備して出願(締め切りなど詳細は大学に直接確認)
1月~5月 合否結果通知
6月~7月 学生ビザの申請・渡航準備

・出願に際しては、共通の願書で一度に複数の大学にオンライン出願可能な「Common Application」を利用できる大学もある
・エッセイは重要な書類なのでしっかりと自分をアピールする。
・学費負担の経済力の証明は入学許可証とビザの取得に必要。
・留学費用の目安:公立大学 US$36,000/1学年間=9ヶ月、私立大学 US$45,000/1学年間=9ヶ月

※大学・学部によって詳細は異なりますので、直接お問い合わせください。

取材協力:
在シンガポールアメリカ大使館
参照ウェブサイト:http://www.educationusa.info/
         http://www.fulbright.jp

参考文献:
アメリカ留学ガイド2015(発行:恵文社 後援:アメリカ大使館広報・文化交流部)
米国留学を目指す人のために:大学学部過程(編集・発行 アメリカンセンターJapan)
USA Education in Brief(編集・発行 米国大使館レファレンス資料室) 

編集部が聞きました

「ハーバード大学で舞台を世界に広げる」

楠正宏さん

幼少の頃からイギリスに住み15歳で単身帰国、灘高等学校で学ぶ。
現在ハーバード大学2年生で政治学やコンピュータ工学を履修。
NPO法人「留学フェローシップ」を設立し、代表を務める。

Q:日本の大学ではなく海外の大学を目指したきっかけは。
A:もともと言葉の壁はなかったのですが、進路を意識せずディベート部で国際イベントに参加するなど、自分の好きな活動を続けるうちに海外の大学を希望するようになりました。日本の大学は、先輩を見ても入学後は受験勉強の褒美として遊んでいる時間が多いように思え、人生で一度きりの大学生活をそのように過ごすことに抵抗を感じて志望しませんでした。

Q:アメリカを選んだ理由は。
A:国際プログラムで出会った外国生徒の多くがアメリカのトップ大学を目指しており、刺激を受けたからです。また、アメリカの大学は世界中から優秀な学生が集まっており、これからの世界について議論ができると思いました。夢を持った学生と寝食を共にできることは将来大きな糧になり、自分への投資だと思っています。

Q:受験準備はどのように行いましたか。
A:高3前の春休みに海外大学進学塾に入りました。そこで海外受験をした多くの先輩方から日本とは全く異なる海外大学の入試制度について幅広く教わりました。アメリカの大学進学にはSATなどテストの成績と課外活動が必要です。SAT対策は高3の4月から独学で取り組み、課外活動については「受験のために何かをする」のではなく、ディベート部の活動や世界大会の個人部門での優勝をアピールしました。

Q:ハーバード大学での生活は。
A:課題の量が膨大で、試験前でなくても予習復習のため明け方の3時まで図書館で勉強することもあります。週末でも一日10数時間課題に取り組む日もあり、常に限界に挑戦しているという意味で、とても有意義に過ごせていると感じます。

Q:これからアメリカの大学を目指す後輩たちへメッセージを。
A: アメリカ大学の受験は孤独で辛い面もありますが、徹底的に自分と向き合い自主的に取り組むことが出来れば、合否に関係なく大きく成長できるチャンスだと思います。自分の好きなことに打ち込む中、海外が見えてきたのなら、高3の1年間は全力を尽くして突き進んでください。ハーバード大学の新入生約1600人うち日本人は3人で、中国人や韓国人のそれぞれ数十人という数字と比べるとあまりにさびしいと感じました。もっと日本の高校生に挑戦してほしい、そのためには支援を惜しまない、そう思っています。 

「プリンストン大学への道」

深津ありさ さん

アメリカで生まれ、3歳の時帰国。日本の幼稚園、公立小学校、渋谷教育学園渋谷中学高等学校で学ぶ。
プリンストン大学とハーバード大学に合格。現在はプリンストン大学1年生で社会心理学、中国語、演劇などを履修。

Q:日本のカリキュラムで学びながら、英語力も向上できた学習法とは。
A:一番の決め手は何といっても読んだ本の数だと思います。両親が洋書をたくさん揃えてくれたので、いつも英語の本を持ち歩き、徐々にレベルアップしていきました。また、小3から小5までは帰国子女用の英語塾に週一回通い、リーディングやエッセイの基本的な書き方などを教わりました。中高は国際教育に力を入れている学校であったため、良い刺激をたくさんもらいました。

Q:アメリカの大学を目指した経緯と、プリンストン大学に進学した理由は。
A:合格した先輩の話を聞き、憧れるようになりました。プリンストンに決めた理由は、大学院生ではなく学部生に大変注力しており教授との距離が近い点と、卒業生のネットワークの強さなどが魅力だったからです。郊外に位置しているためじっくりと勉学に向き合え、最高の環境で教育を受けていることを実感しています。

Q:課外活動やエッセイが高く評価された理由は。
A:学力だけで合格・不合格が決まるわけではありません。さまざまな面で魅力を求められるので、学外でのディベート活動やエッセイコンテストでの最優秀賞、そして学校の委員会活動の経験があったのは大きかったと思います。出願用のエッセイのうち一つは自分の「名前の由来」をテーマにし、英語習得の努力と両親の支えを泣きながら書きました。

Q:後輩たちに伝えたいことは。
A: 受験で得たものは、単に「次の4年間の学ぶ場所」ではなく、自分の人生に意義があるいくつもの「体験」です。「私は今まで何をしてきたのか、何がしたいのか、これからどうしたいのか」をとことん考え、徹底的に自分に向き合うことができました。皆さんも最後まで真剣に自分と向き合い、その後の大きな糧にしてください。

 

編集部より

 「自分」について深く知り、得意分野を大学にアピールできることが合格への鍵になると感じました。十代半ばの多感な時期でありながら、そこまで真剣に自分と向き合える姿勢に感激するとともに、世界中の優秀な学生と共に学業を究めながら、将来への大きな一歩を踏み出した日本人学生の努力と勇気に、深い感銘を受けました。

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