グローバル教育
三菱電機株式会社アジア代表 兼 三菱電機アジア社長 関 邦彦 氏

企業からの声 Focus On The Future

グローバル時代を迎えた今、 企業が求める人材、教育とは何でしょうか。 企業の方からお話をうかがいました。

三菱電機株式会社アジア代表 兼 三菱電機アジア社長 関 邦彦 氏

御社のご紹介   

三菱電機は1921年、三菱造船株式会社電機製作所を母体として設立されました。日本を代表する総合電機メーカーとして、重電システムや産業メカトロニクス、情報通信システムや電子デバイス、家庭電器など、まさに「家庭から宇宙まで」さまざまな電機製品やサービスを提供しています 。100年を超える歴史の中で、常に「社会課題の解決にどうすれば貢献できるか」「そのために何が必要か」を考えてまいりました。   

コミットメントである「Changes for the Better」は、「常により良いものを目指し変革していく」という三菱電機グループの姿勢を表しているものです。この「Better」には設定されたゴールではなく、常に変革し続けていくという意味が込められています。   

グループ全体で約15万人の従業員を擁し、約 40の国と地域に200社以上の関係会社を展開。2022年度の海外売上比率は50%を超え、まさにグローバルに事業を行っています。     

どんな人材を求めていますか。   

世界各国・地域で優秀な人財を適所に配置すべく、国籍や人種を問わない人財戦略・人財マネジメントへの展開を加速しています。24年度は三菱電機単独で新卒者1,100名、経験者1,000名の採用を計画。新卒採用では「ジョブマッチング」を強化しながら、多様な経験を生かして即戦力として活躍することを期待しています。また近年は「リファラル採用(従業員紹介)」・「カムバック採用(離職者の再雇用」も積極的に推進しています。   

求める人材像は「つながりを大切にできる人」「自ら考え行動できる人」「最後まで諦めない人」。社会が求める資質は年々変化していますので、ダイバーシティを推進し、国籍にこだわらず幅広く採用活動を行い、海外大学出身者にも年間を通して広く門戸を開いています。また、希望する社員を世界各国に1年間派遣する「海外研修制度(OJT派遣)」も設けています。英語を話せるに越したことはないですが英語力だけが絶対条件ということはありません。派遣先によっては必ずしも英語が第一言語とは限らないため、グローバルで公用語となる場合の多い英語を駆使するのみならず、働く国や地域に根付いた言語でコミュニケーションするのが理想だと考えています。        

グローバル企業として、地域性と独自性のバランスはどのように取っていますか。   

一昔前「グローカル」という言葉がはやりました。地球規模であるグローバルと地域のローカルを合わせた、非常によくできた言葉です。この「グローカル」こそが、世界でビジネスを展開する上では大切だと感じています。グローバルな情報は瞬時に検索できるようになりましたので、自分で積極的に学習していくことがより一層求められる一方、 ローカルの方々との現場でのコミュニケーションもとても大切です。人とコミュニケーションをしっかり取ることによって、国際社会で働くためのバランス感覚が培われていくのだと信じています。   

日々のコミュニケーションにおいては、日本人特有の「阿吽の呼吸」を海外スタッフに期待するのは難しいため、言語化して伝えることを心がけています。 単に言語化しても、相手の母国語でなければ伝わりにくいこともあるでしょう。ですから、一言二言でも現地の方が話す言語を話すよう努めています。そうしたちょっとした心遣いで、心の距離が縮まる瞬間を私自身何度も体験してきました。また、文化・慣習を深く知ることで、 言葉だけではない相互理解に役立つこともあります。例えば、インドの方は“Yes”という時に首を横に振るため、日本人からするとイエスかノーかがわかりにくいと感じるかもしれません。日本人が商談で「検討します(“I'll consider”)」と言う場合、実はポジティブではないケースもあり、言われた方からすると後々期待外れの結果となってしまうことも。これは日本人特有の言い方で外国の方には理解が難しいかもしれません。このように同じ表現でも意図することが異なる可能性を知っておくと、スムーズな意思疎通につながるのではないでしょうか。   

私が新たな赴任地に着任して現地スタッフとお話しする際、必ず最初に伝えることがあります。それは「私は三菱電機に長年勤めており、この会社については知っています。しかし、この国での経験に関してはまだ生まれたばかりの赤ちゃんなので、ぜひ皆さん教えてください」ということです。そうすると、ナショナルスタッフの皆さんは「面白い人が来たな」と心の距離を一気に縮めてくれ、会話も広がっていく手応えを感じます。       

御社が制作した日本初の宇宙探査機SLIMが月面着陸に成功しました。日本を代表する高い技術力はどのように育つのですか。   

技術系の場合、入社時から自分の専門分野を選択し配属されます。研究所に配属されて、自分のテーマに沿った研究開発を行う人や、製作所の中で技術開発に従事する人など、さまざまなキャリアパスがあります。当社では、研究開発の知見と、幅広い事業の製造拠点の技術が融合することで、新たな製品やシステムソリューションが生まれていくのです。   

宇宙探査機SLIMの成功は、当社にとってまさにそうした「たゆまぬ技術革新と限りない創造力」によってなし得た功績です。これからも家庭から宇宙まで、多岐にわたるサービスを提供し、多様化する社会課題の解決に貢献していきたいという思いを新たにしています。      

御社の「働き方改革」について教えてください。   

従業員との会話を大切にしながら、ダイバーシティの推進や職場環境の改善など、働き方改革に継続的に取り組んでいます。特に、日本での品質不適切行為を受けて、双方向かつ風通しの良いコミュニケーションの確立に向けて全力で取り組んでいます。   

シンガポールでは日本より進んでいることが多いと感じます。三菱電機アジアにも女性管理職の方がたくさんおられますし、従業員が働きやすいように職場環境も整えられています。シンガポールでの採用には、新卒一括採用、新卒入社という概念はあまりありません。このポジションが空いたから募集という、ジョブ型の採用が一般的です。自分が専攻した分野を会社で生かす、それに対して会社が賃金ベースを想定する、成果に対してボーナスが支給される、という雇用関係になると考えています。日本の新卒一括採用は全く違う仕組みで、必ずしも自分が望んだ部署に配属されないこともあります。その時点で会社と社員のボタンの掛け違えになり、3年ぐらいで辞める人が増えている現状なので、いかにそうしたボタンの掛け違いを減らしマッチングを強化していくかは今後取り組むべき課題だと思います。     

海外在住のご家庭へのメッセージ   

ご家庭でのコミュニケーションをできるだけ多くとっていただき、お子さんのやりたいことを聞き出してあげることが大切だと思います。海外でも日本でも、まずは「お子さんがやりたいことをサポートしてあげてください」とお伝えしています。   

少子化に歯止めがかからない中、教育熱は高まる一方です。海外にいると日本の同年代のお子さんに遅れまいと勉強を強化させる傾向があります。しかしお子さんにとっては「勉強しなさい」とばかり言われても、「何のために勉強するのか」が見えなければやる気のスイッチが入るはずがありません。勉強はもちろん大切です。お子さんには「なぜ 勉強しないといけないのか」ということをお子さんと向き合い、しっかり会話していただくことをおすすめします。子どもだからと何ごとも上から言い聞かせるのではなく、まずはお子さんの意向を聞き入れて、その上で理由を説明することが大切ではないでしょうか。「サッカーが大好きでやりたい」というお子さんに「サッカーではなく勉強をしなさい」と強いてもうまくいくはずがありません。まずはやりたいサッカーを思い切りさせてあげてください。海外に引っ越す時点で、中にはいやいや来たお子さんもいるでしょう。だからこそ、お子さんが「これがやりたい」と意欲を見せた際には、ぜひ親御さんがその背中をどんどん押してあげてください。   

我々の世代の教育は、まだまだ先生が板書し、ひたすらノートに写すという一方通行の授業が主流だったと思います。一方で、私がはじめて海外に行った際には、双方向で会話をしながら議論する「ディベート力」の大切さを痛感したものです。海外の教育ではこの力を養いやすいと思います。お子さんには海外生活でぜひ国際社会で通用する「ディベート力」を身につけるよう導いてあげてください。

「グローカル」こそが、 世界でビジネスを展開する上では 大切だと感じています。

グローバルな情報は瞬時に検索できるようになりましたので、自分で積極的に学習していくことがより一層求められる一方で、 ローカルの方々との現場でのコミュニケーションもとても大事です。人とコミュニケーションをしっかり取ることによって、国際社会で働くためのバランス感覚が培われていくのだと信じています。 

関 邦彦(せき くにひこ)氏 
兵庫県神戸市出身、1986年関西学院大学卒業、三菱電機株式会社入社 
98年Mitsubishi Display Devices America, Inc. 営業部長、2011年 Mitsubishi Electric Vietnam Company Limited社長、15年本社宣伝部長、22年より現職 

会社概要

三菱電機株式会社

日本を代表する総合電機メーカー。重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器など「家庭から宇宙まで」さまざまな電機製品やサービスを提供。

2024年6月25日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。

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