創立100年を超える伝統校
国際色豊かな教育環境で帰国生の受け入れを開始
姫路女学院中学校・高等学校
HIMEJI INTERNATIONAL SCHOOL 校長
摺河祐彦 氏
はじめに
世界文化遺産・姫路城で知られる兵庫県姫路の地にある本校は、1921(大正10)年に創立された中高一貫の女子校です。校名にINTERNATIONALSCHOOLと冠している通り、日本人だけではなく、海外にルーツを持つ生徒も多く在籍しています。現在は20ヵ国の文化的背景を有する生徒がおり、海外生活の方が長く日本語の習得が十分でない者にはレベルの高い日本語教育を、英語をさらに伸ばしたい者には、海外大学進学まで視野に入れた英語教育を提供し、高い評価をいただいています。
創立100周年を迎えるに先立ち、2020(令和2)年に校名を変更して、社会課題と向き合う探究的学習ともいえるリベラルアーツ教育を実施し、アクティブラーニングやPBL(Project Based Learning)を取り入れた21世紀型教育を展開しています。さらにこれからは、未来社会を設計し時代を創造することのできる資質・能力を育むことを目的にした、22世紀型教育の構築にも挑戦していきます。これらの教育のベースになっているのは、私の祖父が本校を創立した時に教育理念として定めた「建学の精神」を具現化した「教養」です。教養は「形から入って心を育てる」心の教育ともいえるもので、祖父から父、父から私に繋いできた本校の教育の中心に据えられているものです。
私たちが目指すものは、豊かな教養と国際的な視野を持つ新しい時代の「国際教養人」の育成です。本校は、女性の社会進出がまだ限定的であった大正時代に、活躍の場所を自ら創り出すことのできる自立した女性の育成を実践していました。その創立者の想いが今に受け継がれ、学力にとどまらず心を磨くことによって、人間力を高める女子教育に継承されています。女子校であるがゆえに、積極性や主体性を養うことができる教育環境のもと、女性の特性に応じた教育ができることも強みと考えます。伝統校でありながら革新的な取り組みを重層的に展開しており、2024年度には文部科学省の「WWL(World Wide Learning)」に採択されました。今後は、より充実したカリキュラムと、大学や企業との連携を通して、世界を舞台に活躍できる女性を育てていきます。
心を育む「教養科」と「リベラルアーツ」
人間性を高めて社会性を身につけることを目的に、1974(昭和49)年から本校独自の教科として導入されたのが「教養科」の授業です。丁寧な言葉遣いや美しい立ち居振る舞いなどを、正課の授業として全校生徒が学びます。学んだことを日常の学校生活において実践することにより自分のものとした教養は、生徒にとって将来の社会生活を行う上で大きな財産になるものと確します。周りの人や相手を意識して行うなかで、知らず知らずのうちに人を思い遣る心や、相手の立場でものを考える姿勢を養い、多様な価値観を受け容れる寛容さや人を敬う気持ちを醸成します。国際化が一段と進展する社会にあって、教養で培ったこれまで日本人が大切にしてきた協調性や柔軟性は、22世紀型教育の目的とされる未来社会を設計する上で、極めて重要なものであると考えます。
リベラルアーツ教育は、文部科学省が戦後最大の教育改革として行っている取り組みに沿い、「疑問力」「意思力」「構成力」を身につけます。具体的には、隔週土曜日のリベラルアーツ・デーを中心に、「なぜ?」「何のために?」を深く探究していきます。高校では、外部から招いた講師のもとSDGSをテーマとする社会課題と向き合い、課題解決の方法を考えるゼミを展開しています。中学校では、3年間をかけて演劇やアート鑑賞、プログラミングを学び、発想力や表現力、創造性や論理的思考力を鍛えています。
真の国際人をめざす「国際教育」
本校では、質・量ともにハイレベルな「国際教育」を展開しています。
日々の授業の充実を図ることに加え、海外姉妹校を中心とする多彩な国際プログラムや海外研修制度、さらには海外大学への進学プログラムを通して、世界を舞台に活躍できる国際教養人を育成します。
本校の英語教育は、2019年から2021年にかけて、官民人事交流により外務省から現役の外交官が出向し、学園長として就任したことで大きく変わりました。外交官が外国語を習得するためのメソッドを導入し、生きた英語、使える英語を身につけています。また、海外姉妹校(タイ・ポーランド・インドネシア・パラグアイ・韓国)とのあいだでは、相互の学校を毎年訪問し合う交流を活発に行うことで、生徒同士による研究発表や行事を通じて異文化に触れる機会も多く設けています。海外姉妹校を訪問する研修旅行のほか、ハワイやカナダ、台湾への研修旅行も企画しています。
近年、注目度が高まっている海外進学もより身近になっています。
2020年に開始した「デュアル・ディプロマプログラム」は、高校1年生の秋から米国プロビデンス・カントリー・デイスクール(以下PCD)の授業を本校に通いながらオンラインで履修することができる、日米両方の高校卒業資格が取得可能な画期的なプログラムです。学業成績が一定の基準を満たせば、PCDとパートナーシップを結んでいる15の大学への推薦入学が許可されるため、日本にいながら海外大学進学を目指すことも可能となります。本校では国際連携推進センターを設置して、希望する生徒の海外でのキャリア設計やPCD授業の補助などについて、専任教員が生徒に寄り添って行うため、安心して海外大学進学に取り組むことができます。さらに、米国カリフォルニア州にあるマーセット・カレッジ(以下MC)
との教育提携により、夏季語学研修旅行の実施やMCへの進学後のアルバイトの紹介、提携している四年制大学編入の道も確保しています。
こうしてさまざまな角度から展開される真の「国際教育」を通して、生徒たちはグローバルな視野と力を実践的に身につけることができます。世界中のどこにいても、自分のアイデンティティに誇りを持ち、多様なバックグラウンドを有する仲間たちと切磋琢磨できる素養を育んでいるのです。
多文化共生を実現
インドネシアに「オフショアスクール(海外分校)」を開校
本校では、インドネシアのタラカニタ教育財団と提携して、2021年にジャカルタにあるタラカニタ第4中学校に日本型教育を導入したオフショアスクールを開校しました。2024年4月には、第1期生を姫路女学院高等学校に新入生として迎えました。将来、「日本社会に愛着を持ち、貢献してくれる人材の育成」にも繋がればと考えています。
今後はインドネシアだけではなく、南米のパラグアイにも展開しようと計画しています。異文化を背景に育った生徒と机を並べて学ぶことによって、多様性への理解が感覚として促進され、国際理解を図ることができると思います。
2025年より「帰国生入試」スタート
これまで述べたように、他にはない国際環境とカリキュラムを整えてきた本校では、いよいよ2025年度から「帰国生入試」がスタートします。海外にルーツのある生徒や留学生、オフショアスクールの生徒に対する教育によって培ったノウハウには、揺るぎない自信を持っています。グローバルな視野を養い、様々な文化を認め合い、お互いを高め合う場としての学校環境を創ることで、持続可能な社会を目指していきます。
卒業生の中には、すでに国際社会で活躍している者が数多くいます。
たとえば、オーストリア在住のピアニスト、韓国で日本語教師をしている者、イギリスでIELTS (International English Language Testing System:国際英語試験体系)普及のために世界中を駆け回っている者など、グローバルに活躍の場を広げてくれています。今後は帰国生や海外生を広<受け容れることで、より一層多様なバックグラウンドを持つ生徒が集い、互いに刺激し合いながら、生徒一人ひとりが将来の可能性を広げてほしいと願っています。り、専門分野の学習を通じて、実践的応用力と国際的な競争力を身につけた人材を養成します。
海外在住の方へのメッセージ
私たち教育に携わる者は、お預かりしている生徒の将来を常にイメージしながら日々の教育を行っています。日本は現在、人口減少社会を迎えたことにより社会構造が変化し、歴史的にも転換期にあるといえます。生徒たちが社会を支え創り上げる役割を担う30年後には、どのような社会になっているのか予想だにできませんが、どのような社会であろうとも常に向上心を持って主体的に物事に向き合う姿勢は大切です。これからの学力とは、知識や技能に加えて、そのような資質も含めて評価されることになります。
本校の教育では、数値で表すことのできる認知能力と併せて、非認知能力をも育み、どのような社会にも柔軟に適応し、創造性を持って次代を担うことのできる資質・能力を身につけることを目指しています。
海外で生活することはとても尊く、望んでもかなわない方がほとんどです。皆さまには現地で経験していることを大切にし、それを持ち帰ってお子さまの将来に繋げていただきたいと思います。本校には他府県から進学してくる日本人生徒や海外から留学してくる生徒も多数いるため、アカデミックな環境の寮を完備しています。姫路は城下町で地域のコミュニティがしっかりしており、近隣の大人につねに見守られて生活することができるため、保護者の皆さまにも安心していただけると思います。
Profile
摺河祐彦(するがまさひこ)氏
1960年東京生まれ。明治大学大学院政治経済学研究科経済学専攻博士前期課程修了。92年姫路女学院高等学校校長に就任し、現在に至る。日本私立中学高等学校連合会常任理事、兵庫県私学総連合会会長、京都大学学際融合教育研究推進センター特任教授、ポーランド共和国名誉総領事。
2024年11月25日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。