グローバル教育
特別企画 APとは何か

日本の大学では年々、点数だけに偏ることなく総合的な評価をするべく総合型選抜の募集規模が拡大しています。また、大学での学びを高校在籍時から受けられる「高大連携」の動きも目立ってきました。米国では、以前から大学相当の高度な学びである「AP(アドバンスト・プレースメント)」を高校で学び、共通の履修試験を受験し大学の単位として認める仕組みがあります。Springの特集では、代表的な国際教育プログラムとして「国際バカロレア(IB)」や「国際A Level」「IGCSE」について取り上げてきましたが、今回は大学進学に役立つもう一つの学びとして「AP」についてご紹介します。

取材協力 : Crimson Global Academy(オンライン・インターナショナルスクール)     
広尾学園(東京)  
Stamford American International School(シンガポール)
 
参  考 : https://apstudents.collegeboard.org
 https://www.princetonreview.com

過去の特集はこちら
国際AS & A Level、 IGCSE
国際バカロレア (IB)

米国College Boardが履修試験を実施する「AP」

APとは?

■ 高校卒業資格そのものではなく、高校生が「関心のある科目」を選択して学び履修試験を受験する制度。
■ 米国大学の単位としても認められる、高度な学び(英語で学ぶ)。※単位認定は各大学によって異なるため、直接ご確認ください。
■ 米国・カナダの大学などでは出願時に明記したり、成績(GPA)に含めることができる場合もある。
■ 日本の高校卒業資格では出願できない英国の大学の場合、3~5科目のAPスコアを使うことで出願可能。
その他ヨーロッパ諸国でも出願要件として認められることもある。
■ APの授業を行う学校で学ぶか、個人でオンラインや独学で試験準備をすることも可能。

米国College Boardとは?

米国の大学統一試験であるSATやACTを運営する機関。1955年設立。 APに関するQ&Aなども紹介されています。 詳細はこちら

APはどこで学ぶ?

APの授業を提供している学校で学ぶか、自学し履修試験を受けることも可能です。 自学する場合には、高度な内容のため「学校での学びと重なっているか」「関心があるか」 「得意分野か」などを考慮し、モチベーションを持って計画的に学習しましょう。 APの無料講座も公開されています。
Khan Academy: https://www.khanacademy.org

APの授業を提供する学校

米国の現地校、日本・シンガポールを含む世界各国のアメリカンスクール・ 米国系インターナショナルスクール。日本では一部の一般の高校(一条校)。

APの対象科目

APには以下の文系・理系の科目だけでなく、語学や芸術科目も選択可能です。 APの授業を提供している学校でも全ての科目は網羅していないため、どの科目が受講できるか確認しましょう。 

試験は、選択回答と 記述試験で構成

APの受験をする際の注意

 「APの授業を提供する学校」で受験するか、近くの「APコーディネータ」に受験会場を確認する必要があります。日本国内では、APコーディネータがいる学校の「在校生のみ」が受験可能であることが多いため、注意しましょう。近隣諸国でAPを受験するケースもあります。

APは何科目受験すべき?

 米国の大学出願ではAPは必須ではありませんが、取得していることでアピールポイントになります。APの授業を提供する学校に在籍している場合には、APの科目数を多く履修できます。一方で、学校でAPの授業が提供されていないにもかかわらずAPを自学したこともまた、アピールポイントと言えます。米国のトップ大学への出願では、5~10科目もAPを履修しているケースもあります。  英国の大学では、日本の高校卒業資格が出願要件として認められず、ファウンデーションコースを経て大学に出願できます。高校卒業資格の代わりに3~5科目※のAPスコアを提出することで、ファウンデーションコースなしで直接大学に出願することができます。 ※出願する専攻分野により数学・科学・生物・物理など科目を規定されることがあります。志望大学の要件を確認しましょう。

APのスコア

5段階評価

大学での評価相当

5A+、A    Extremely well qualified. (難関大学などで出願資格や単位として認められる)
4A-、B+、B    Very well qualified. (上位大学で出願資格や単位として認められる。)
3B-、C+、C    Qulified.
2評価対象外。Possibly qualified.
1評価対象外。No recommendation.

専門家に聞きました。

Crimson Global Academyから、各国際教育プログラムの特徴について聞きました。

 AP国際バカロレア (IB)国際A Level
試験の特徴

●1年間で履修し、試験は5月に1回実施される。高校でAPの授業を提供している場合、試験結果次第でGPAが4. 0を超えることがある。

●特定の科目を深く学ぶことを重視し、その科目に関する大学レベルの知識とスキルを身につけることを目指す。

●通常2年間で履修し、最終年度に行われる一発勝負の外部試験を受ける。

●6つの科目群から科目を選び、全体的な学力を伸ばすことを目指す。

●通常2年間でAS/A2 Levelを履修。年数回、試験日があり再チャレンジ可能。

●試験は記述式が中心で、批判的思考能力や思考プロセスが問われる。

大学出願における

特徴など

●選択自由で専門分野に集中でき自分の関心分野をアピールできる。

●高いスコアを取ることで、特に米国の大学進学に有利となる他、日本の高校卒業資格からは出願できない英国の大学進学でも、APで満点を3-5科目取得することで出願可能となる場合もある。

●試験の結果次第では大学のクレジット(単位)として認定され、大学卒業単位に組み込める場合がある。

●全人教育を重視し、グローバルに評価される。

●グローバルな視点を持つ教育システムとして、ヨーロッパ、カナダ、日本など世界中の大学から評価されている。

●IBは多様な分野での総合的な知識とスキルが求められるため、文理を問わず多方面の進路に進める。

●自分の関心や進路に併せて科目選択できるため、理系や文系に特化して学ぶことができる。

●国際的に認められており、英国、米国、オーストラリア、ヨーロッパなど世界中の大学への出願が可能。

●専門性が高いため、理系や医療系など専門的な進路に進みたい生徒に特に最適。


春休みやイースター休暇に直前の試験対策が可能!

年に1度のAP試験
試験時期: 5月
結果発表:7月

世界の大学で認められる資格  

米国の大学だけではなく、世界各国の大学でも評価される資格。一例として、タイムズ・ハイヤー・エジュケーション(THE)世界大学ランキング上位大学の出願要件を見てみましょう。

例: 英国 オクスフォード大学(THE 世界大学ランキング2025 1位)     
AP 4科目でスコア5 または 3科目でスコア5 + SAT・ACT が必要。     
※APの受験結果を全て報告する義務があるため、受験科目の選択では注意が必要。 
詳細はこちら 

例: 英国 エジンバラ大学の場合(同29位)      
AP 3科目でスコア4以上 + SAT・ACTが必要。 
詳細はこちら 

導入している学校に聞きました。 ~選択可能な科目は?どんな学びですか?~

日本の学校

広尾学園  / 東京・共学

2016年にAPを導入、米英のトップ大学に合格

■    同校ならではの理数系の高度な学びを土台に、教員が研究を重ねた上でAPを指導。     
        今ではAP13コースから選択可能。 
■    海外大学と国内大学を併願する生徒も多い。 
■    APを学ぶことで、専門分野の知識が深まり、大学での専攻を視野に入れ、進路を決める手掛かりになる。 

■    APの試験は、授業でも学べるが、独学して受験することも可能であり、必要に応じてアドバイスを行う。

同校で学べるAP科目

AP Calculus AB
AP Physics C: Mechanics
AP Chemistry
AP Microeconomics
AP Comparative Government & Politics
AP World History: Modern
AP Calculus BC
AP United States History
AP Physics C: Electricity and Magnetism
AP Biology
AP Macroeconomics
AP Statistics

 ※最新の開講科目は、直接ご確認ください。

Crimson Global Academy(CGA)/ オンライン・インターナショナルスクール

■    オンライン学習のため住んでいる地域に制限されず、世界中の実績のある経験豊富な教師から学ぶことが可能。 
■    少人数制クラス、個別指導、オンデマンド録画授業など、受講形式を選択可能。 
■    2024年5月の試験結果では、最高得点である「スコア5」を取得した生徒の割合は、世界の受験者全体の12%に対して、CGAでは38%。 
■    競争が激化する海外大学の出願では、APの好成績が生徒自らの知的好奇心や専門性の高さ、主体性を証明することになる。

同校で学べるAP科目

※下記にない科目も、個別指導で履修が可能です。

AP 2D Art
AP Human Geography
AP Biology
AP Macroeconomics
AP Calculus AB
AP Microeconomics
AP Calculus BC
AP Physics 1
AP Chemistry
AP Physics C (Mechanics)
AP Comparative Government and Politics
AP Pre-Calculus
AP Computer Science A
AP Psychology
AP Computer Science Principles
AP Statistics
AP English Language
AP US History
AP English Literature
AP World History (Modern)
AP Environmental Science

シンガポールの学校

日本人が通う主なインターナショナルスクール38校のうち、以下の学校がAPの授業を提供しています。

International Community School
Singapore American School
Stamford American International School

2024年3月Spring調べ。詳細は各校に直接ご確認ください。 

Stamford American International School

■    シンガポール初であり唯一のAP、国際バカロレア・ディプロマ・プログラム(IBDP)、商業技術教育委員会(BTEC)ディプロマのカリキュラムを同時に提供する学校。 
■    大学レベルのAP20コースを高校生に提供。 
■    APコースを受講することで、高校での学習を続けながら大学での学びに備えることが可能。AP履修試験で好成績を収めると大学の単位を取得でき、大学の上級コースに進むこともできる。結果的に大学での履修時間が減り、授業料を抑えることもできる。 

 

Spring編集部が実際にAPを学ぶ生徒に聞きました。

Crimson Global Academy (CGA)

G11 芯さん  

 中学3年間を香港のインターナショナルスクールに、高校で1年間アメリカのボーディングスクールに通い、その後帰国しました。帰国後は近くにAPかIBDPを学べる学校がなかなか見つからず苦労しましたが、オンラインで学べるCGAに編入しました。 最初はオンライン学習に不安を持ちましたが、アメリカの名門大学に向けて手厚くサポートしてくださり安心して学ぶことができています。APでは、ミクロ経済と世界史を履修し、楽しく手応えを感じながら勉強できました。APを始めたのがG10の10月後半と遅いスタートでしたが、今年5月の試験では2教科ともに「スコア5」を取ることができました。マンツーマンの指導で時間を有効的に使うことができた点も、好成績の要因だと思います。将来の夢は医師になることです。前回のAPと同様に、今回も4科目のAPで好成績を残せるよう頑張っています。 

 

広尾学園卒

ニューヨーク大学 2年 (音楽・データサイエンスのダブル専攻を予定)   H.N.さん 

 小学1~4年を南アフリカと米国で過ごし、帰国後も英語を維持向上させたいと思い広尾学園の国際コースに入学しました。大学では、音楽と同時に他の分野も広く学べる環境を探していたため、高校1年の時点で海外大学受験を決意しました。APの勉強も同時に始めました。学校では微分積分、マクロ経済、ミクロ経済、統計学を学び、自学では心理学と環境学に取り組みました。学校でAPの授業が提供されていたおかげで、高校1年から計画的に学習を始められたことは非常に良かったと思います。    APは独学で勉強して受験することも可能なので、学校で授業が提供されていない場合でも、諦めずに挑戦してほしいです。海外大学の受験は情報収集も大変ですが、志望大学の募集要項を綿密に調べて準備すると良いと思います。 

 

Stamford American International School 

G12 たいらさん 

日本人である私にとって、APを学ぶメリットは大きいと感じています。APは高度な内容を学ぶため大学への準備になり、履修試験に合格すれば大学の単位に交換することもできるからです。また、APは高い学力へのコミットメントを示すため、大学出願でも強いアピールになると思います。さらに批判的思考、問題解決、タイムマネージメントなど、大学での学びに必要不可欠なスキルを伸ばすことにつながりました。APは大学進学を準備する上でより高みを目指せるようになると思います。 

 

G12 ミンセオさん  

APの利点は、大学進学前に勉強したい分野を自由に選択して学べる点です。自分の興味に沿って柔軟に探究することができ、その結果大学で何を専攻したいかが明白になると思います。APの履修試験で良い成績を取れば米国の大学で単位として認められるため、挑戦しました。私はすでにAPで理系3科目を終えているため、自分が不得意な理系科目をこれ以上履修する必要がありません。現在は、統計学やミクロ経済といった科目を中心に学ぶことができています。 

 

2024年11月25日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。

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